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月が太陽を絆すまで  作者: ウパ戌


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月と太陽の出会い

新作です。よろしくお願いします。


 朝、太陽は東から上る。そして太陽から逃げるように月は西へ沈む。その二つの天体には常に距離があり、交わることはない。だが、それはあくまでも天体の話だ。もしその二つの天体に意思があったのなら、未来は一体どうなるのだろう。


 桜咲く入学式が終わり、クラス内ではそれぞれグループが出来た。今年高校に入学した俺――(あずま) 朝日(あさひ)が所属しているグループはその中でも所謂一軍だと呼ばれるグループだった。


「よう! 朝日、おはよう」

「おう健吾(けんご)。おはよう! 今日も朝練だったのか?」

「おう! 今日も大変だったわ。いやー、やっぱり高校はレベルが違うな。てか、やっぱり朝日もサッカー部入ろうぜ。絶対楽しいって」

「いやー、サッカーは中学までって決めてたからなー」

「そこをなんとか!」


 健吾こと赤堀(あかほり)健吾は、俺の机の前で祈るように手を合わせる。彼の髪は短く、さらに身長が高い。体は筋肉質で引き締まってるという。なんともかにもスポーツマンな背格好である。その誰にでも分け隔てない性格ですぐに仲良くなった。


「なんでそこまで誘ってくれるんだよ」

「だって中学の時、朝日めっちゃ強かったじゃん。こっちの学校まで噂が流れてたし。それに、朝日と一緒の部活ってめっちゃ楽しそうじゃん」

「ははっ、確かに健吾と一緒だったら楽しいだろうね」

「じゃあ」

「でも、ごめん。別にやることがあるんだ」

「前に言っていたバイトか?」

「そうだ」

「朝日も大変だな」

「そうでもないよ。俺より大変な人は腐るほどいる」

「そうかもしれねぇけどよぉ」

「まぁそう思うのなら、是非うちの店に来て売り上げに貢献してくれ」

「おう! 任せろ! んで、店ってどこだ?」

「駅前の裏にあるいかにもすぐに潰れそうなカフェだ」

「どんなところで働いてるんだよ」


 健吾は笑いながらそう言った。


「ホームルーム始めるぞー。みんな席につけー」


 チャイムの音と同時に、なんとも間延びした声で中里(なかざと)先生が入ってきた。


「今日は月末に予定されている校外学習について説明したいと思います」


 先生がそう告げたのを口火に、クラスは沸き上がった。数週間しかたってないのに仲の良いことだ。かくいう俺も楽しみなので一緒に声を上げた。


「静かにー。楽しみなのは分かるけどねー。正式には今日のロングホームルームに決定するんですけど、班分けがあるのでざっくりと決めといてくださーい。五人班でー」

「はーい」

「じゃあ、今日の連絡事項は……」


 校外学習では今回、近くの森林公園で一泊二日らしい。そこで生態系を学んだり、飯を作ったりするらしい。まぁ、内容なんてどうでもよくて、純粋に友達と遊びに行けるのはとても楽しみだ。


「なぁ朝日、一緒に組もうぜ」

「おう。あと三人はどうしようか」

「放っておいてもあいつらが来るだろ」

「なにー? 私たちの話してるの?」

「よう。(すい)(すず)

「ようよう」


 鈴が健吾の肩に腕を回し、彗が不良みたいな文言をローテンションで言っている。なんでそんなに柄が悪いんだよ。鈴は長髪をポニーテールに括った女の子で、このクラスで一番快活な子だ。一方、彗はショートボブで、言葉のイントネーションは平坦だがとてもノリが良くて面白い子だ。身長は鈴に比べたらちょっと低い。本人も気にしているらしいので下手にツッコむと痛い目を見る。


「これで四人か」

「ね、一人誘いたい人いるんだけどいい?」


 鈴が突然そう言いだした。別に全然かまわないが、いったい誰だろうか。まぁ誰であろうと仲良くなれば良いだけか。


「いいよ」

「俺もいいぜ」

「いーよー」

「分かった! じゃあ、月夜野(つきよの)さん! おいでー」


 月夜野さんか……。よりにもよって月夜野さんかぁ……。月夜野 (つき)――入学当初からかぐや姫じゃないかなんて言われている女の子。実際、そのあだ名にたがわぬ外見をしていて、黒い長髪にすらっとした体型。それに伴った整った容姿。俺、正直あの人好きじゃないんだよな。

 入学式の時、あの人が道に迷っていた所に出くわした。俺は場所が分かっていたから案内した。しかし、彼女は声をかけても何も答えてくれず、別で道中何度か話しかけたけどそれにも答えてくれず、着いた時には「ここだよ」と言う俺に対して「ん」だけだった。別に見返りとかを期待したわけでもないし、下心があったわけでもない。けれど、彼女のそんな義のない行動が気に入らなかった。しかし、俺の感情だけでこの空気を壊すことはしたくはない。


「……よろしくおねがいします」

「おう! よろしく!」

「つきさんだっけ。よろー」


 最初の月夜野さんの小さい声での挨拶に、二人が同意するように挨拶をする。


「よろしく」


 俺もそれに合わせて挨拶をする。


「月夜野さんは初めましてだけど、どうしてうちのグループに?」


 健吾が悪気なく、純粋な疑問としてそう尋ねた。こういう時の健吾は頼りになる。俺も気になっていた。月夜野さんは俺たちのグループに限らず、まず人と関わっていないイメージがあったから、積極的にグループに参加しようとしないと思っていた。


「えっと……」

「あたしから誘ったんだー」


 鈴が言う。


「鈴、強引だっただろ? 嫌じゃなかったか?」

「いえ、そんなことは……」

「ちょっとけんごー。失礼だぞー!」

「すずはごーいんだからなー。でもそういう所、いいと思うよー」

「彗、それ褒めてるのか?」

「ねー、朝日も何か言ってよー」

「ん? 鈴って元気でいいな!」

「もー、朝日まで!」


 まぁでもこいつらがいるから楽しくなるか。月夜野さんとはあんまり話さなければ良いだけだし。


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