第20話(最終回):【配信終了】カメラを止めるな! 伝説の「最終回詐欺」で2ndシーズン即始動!?
「……えー、皆さん。今日はお集まりいただき、ありがとうございます。そして画面の向こうの3000万人のリスナー諸君。……大切なお知らせがあります」
王都の中央広場。かつて魔王と死闘を繰り広げ、運営と法廷闘争(?)を演じたその場所に、ツヨシは立っていた。
しかし、かつての殺伐とした雰囲気は微塵もない。
空を見上げれば、ドローン型のリッチ(不死者)がウーバーイーツならぬ「魔ーバーイーツ」のバッグを背負って飛び交い、街角の掲示板はすべてデジタルサイネージ化。
ゴブリンはスマホで「効率的な村焼き」をライブ配信し、聖女はインスタ映えする「聖水タピオカ」の投稿に余念がない。
そう、ツヨシが持ち込んだ現代文明とWi-Fi環境は、異世界を完全に「コンテンツ化」してしまったのだ。
「……今日をもって、俺、ツヨシは……『異世界配信』を引退します」
その瞬間、世界が静まり返った。
広場のオーロラビジョンに映し出されるコメント欄が、一瞬で凍りつく。
《リスナーA:え……?》
《リスナーB:嘘だろ? ツヨシ、お前がいないと俺たちの毎日の娯楽が……》
《リスナーC:おい、待てよ! 法人化したばっかりだろ!? 社長!!》
魔王が駆け寄り、ツヨシの肩を掴んだ。
「ツヨシ殿! 何を血迷ったか! 貴殿が引退したら、我々の会社の株価はどうなる!? 我が魔王軍の福利厚生はどうなるのだ!」
聖女も涙を浮かべて詰め寄る。
「ツヨシさん……! あなたがいなくなったら、誰が私の『過激すぎる聖女修行』にツッコミを入れてくれるんですか!?」
ツヨシは静かに目を閉じ、深く頭を下げた。
「……理由は一つ。この世界が『普通』になりすぎたからです。もう、ドラゴンが火を吹いても誰も驚かない。魔王がスーツを着てても『あ、魔王部長お疲れっす』で終わりだ。……配信者として、これ以上の『驚き(サプライズ)』を提供できない。だから、俺は消えます。……今まで、本当にありがとう」
BGMとして、リスナーが作曲したエモーショナルな合唱曲が流れ出す。
画面には「Thank you Tsuyoshi」「伝説の配信者、完結」のハッシュタグが溢れ、全リスナーが号泣の絵文字を連打する。
王都の広場には、種族を超えたすすり泣きが満ち、太陽(グッドボタン型)がゆっくりと西の空へ沈んでいく……。
「…………なーんてね!!!」
ツヨシが突然、変顔でカメラに飛び込んできた。
「はい、皆さん! 釣られましたねー! 『最終回詐欺』大成功ーー!! 2ndシーズン『異世界配信者ツヨシ:宇宙編(仮)』、今この瞬間からスタートだあああああ!!」
一瞬の静寂。そして。
《リスナー全員:ふざけんなあああああああああああ!!!!!》
怒涛の勢いで流れる赤スパ(抗議の10万円)。しかし、そのコメントの内容はどれも「安心した」「やっぱりこれだよ」「最悪の男だ(褒め言葉)」という歓喜に満ちていた。
「引退? するわけねーだろ! こんなに稼げる天職、手放すかよ! 今の嘘で同接5000万人突破! はい、広告収益チャリーン! 運営さん見てるー!? これがエンタメだよ!!」
魔王は脱力して地面に座り込み、聖女は「もう、本当に嫌い!」と言いながら笑顔でスマホの録画ボタンを押した。
「さあ、仕切り直しだ! 最終回なんてのは、次の1話への壮大な前フリに過ぎねえ! カメラを止めるな! ネットがある限り、俺の冒険は終わらねえんだよ!!」
数日後。
異世界の辺境、はじまりの村。
そこには、光の柱と共に新たに転生してきた「本物の勇者」がいた。
「……ここが、異世界か。俺は、この世界を救う伝説の勇者に……」
期待に胸を膨らませる少年勇者の背後に、セグウェイに乗った男が音もなく忍び寄る。
男の手には、禍々しい自撮り棒が握られていた。
「はい、皆さんこんにちはー! ツヨシです! 今日の企画はこれ! 『異世界に転生してきたばかりの初々しい新入り勇者を、レベル999の俺がフル装備で初狩りしてみた!』というわけで、まずはこの勇者の初期装備、メルカリに出品しちゃいまーす!」
「……え? あの、誰ですか、あなた?」
「はい、カメラこっち向いてー! 笑顔作って! これからお前は『コンテンツ』になるんだよ!!」
空には巨大なグッドボタン。
王都では魔王が会議に追われ、聖女はエゴサに励む。
そしてツヨシは、今日もまた新しいカオスを探して、自撮り棒を振り回す。
異世界の日常は、今日も異常なほどに正常だ。
(第1シーズン:完……? いいえ、配信は継続中!)
最後まで読んでいただきありがとうございました。明日からは「ツヨシ」シリーズ第4弾が始まります。




