表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
1/20

第1話:【初配信】死んだと思ったら異世界だったので、とりあえずスライム煽ってみたwww

「ツヨシ」シリーズ第3弾が始まります。

「……はい、どうも皆さんこんばんは。本日の緊急生放送ですが、えー、ガチで死んでみました。笑えねぇよ」


ツヨシ、24歳。彼の人生は、常に「レンズの向こう側」にあった。

自撮り棒を片手に、激辛ラーメンに挑み、心霊スポットで震え、時には深夜の国道で「1人逃走中」を企画する。しかし、現実は非情だ。チャンネル登録者数は300人で停滞し、動画の再生数よりも、機材のローン催促状の数の方が多い始末。


その夜も、彼は配送アルバイトの軽トラックを運転しながら、信号待ちの合間にスマホをチェックしていた。

「……クソ、またアンチコメントか。『お前の動画、画質以前に存在がノイズ』ってか。ハハ、座布団一枚やっとけよ」


自嘲気味に笑った瞬間、視界を真っ白な閃光が焼き尽くした。

対向車線からセンターラインを大きく越えて突っ込んできたのは、過労運転の大型トラック。避ける暇もなかった。激しい衝撃、金属がひしゃげる嫌な音。ツヨシの意識は、愛用のスマホの画面がスパイダー状に割れるのを見たのを最後に、深い闇へと吸い込まれていった。


「……あー、終わった。これ、アーカイブ残ってねぇだろうな……」


それが、ツヨシが「現代」で最後に抱いた感想だった。


次に目が覚めた時、そこは重力も空気も感じられない、どこまでも続く純白の空間だった。

「あら、ようやく意識が戻ったかしら? 現代の迷える子羊さん」

鈴を転がすような声に顔を上げると、そこには透き通るような銀髪をなびかせ、豪華なドレスに身を包んだ「いかにも」な美少女が浮いていた。


「……女神、さま?」

「ええ、そうよ。あなたの人生、あまりにも『発信』に偏りすぎていて、死後処理のデータが動画ファイルみたいになっていて驚いたわ」


女神は手元の空中に浮かぶ光のパネルを、スマホを操作するようにフリックしながら呆れたように笑った。

「あなたのその『誰かに見られたい』『認められたい』という異様なほどの承認欲求。このまま成仏させるのは勿体ないわね。どう? その情熱を、魔力に変換できる世界で試してみない?」


「……配信、できるのか? そっちの世界でも」

ツヨシの瞳に、死人とは思えない生気が宿った。

「ええ、特別なスキルを授けるわ。あなたの視界を、全大陸の『魔導水晶』へリアルタイムで中継する能力。名付けて【魔導配信者ストリーマー】よ。さあ、異世界をあなたのチャンネルで染め上げてきなさい!」


「やってやる……! 登録者1億人、狙ってやるよ!」


女神の無責任な後押しと共に、ツヨシの体は光の粒子へと分解され、純白の空間から猛スピードで排出された。


「ひょええええええ! 待って、画角が安定しない! 手ブレ補正、手ブレ補正はどこだぁぁぁ!」


絶叫しながら雲を突き抜け、ツヨシが叩きつけられたのは、巨大な樹木が天を覆う「はじまりの森」のど真ん中だった。

湿った土の匂い、遠くで響く怪鳥の鳴き声。ツヨシはフラフラと立ち上がり、すぐさま自分の網膜に映る「ステータス画面」を起動した。

【ステータス詳細】


名前: ツヨシ


職業: 魔導配信者


称号: 異世界唯一のVtuber(中身は生身)


固有スキル:


【魔導ライブ・カメラ(浮遊視点)】: 自分の周囲を360度浮遊する不可視のカメラ。手ブレ補正完備、4K相当。


【リアルタイム・コメント翻訳】: 視聴者(異世界住人)の念波をチャット形式で視界に表示。


【スパチャ還元マナ・チップ】: 視聴者の「感動」や「驚き」が魔力として還元され、身体能力が強化される。


保有装備:


【自撮り棒型魔導杖】: 打撃武器としても優秀な伸縮自在の杖。


【キラキラ・フィルター】: どんなに泥まみれでも、画面越しにはイケメンに見える魔法。


ツヨシは虚空に向かって、慣れた手つきで「配信開始」のアイコンをスワイプした。「よし、テスト、テスト……。異世界の皆さん、聞こえてますかー! 伝説の勇者(候補)、ツヨシの初配信スタートです! 今日はね、この森で一番ヤバい魔物を『素手』で倒したいと思います!」瞬時に視界の右端にログが流れ始めた。異世界各地にある「魔導水晶」の前にいる人々が、この未知の映像に反応し始めたのだ。


《王都の門番A:なんだこの光る板は? 変な格好の男が喋っているぞ。》

《魔法学園の女子生徒:髪型が変。でも、ちょっと顔はいいかも?》

《辺境のドワーフ:武器も持たずに魔物に挑むだと? 景気のいい馬鹿だ、ガハハ!》


「おっ、コメントありがとー! さて、ターゲット発見です。見てください、あそこにいる凶悪な……『スライム』を!」ツヨシが指差した先には、ポヨンポヨンと跳ねる、体長20センチほどの愛くるしい青い塊がいた。


《隠居した賢者:スライムじゃねーか。家畜でも倒せるわ。》

《辛口騎士団員:はい、解散。時間の無駄。》


「おっと、皆さん『スライムかよ』って思いましたね? ですが! このスライム、実は『魔王の隠し子』っていう噂があるんですよ!(大嘘)」ツヨシは【自撮り棒型魔導杖】を構え、華麗なアクションでスライムに接近した。実際にはただの追いかけっこだが、カメラワークを駆使して「死闘」に見せかける。「ああーっと危ない! スライムの『粘液放射ただのヨダレ』を間一髪で回避! これは、一歩間違えれば俺の命は無かった!」ツヨシはわざと泥の中に転がり、【キラキラ・フィルター】の出力を最大にして「傷だらけのヒーロー」を演出した。すると、画面上のログが激しく動き出した。


《世間知らずの聖女:なんて勇敢な……! あの小さな魔物にこれほど命を懸けるなんて!》

《聖女が【癒やしのマナ(スパチャ1000G相当)】を投げました!》


「キキキキタアアアア! 聖女様、初見で赤スパ(赤色の魔力)ありがとうございます! 元気出たー!!」投げられたマナ・チップがツヨシの体に吸い込まれた瞬間、全身に凄まじい力が漲った。二の腕の筋肉が盛り上がり、瞳が黄金色に発光する。これが【スパチャ・ブースト】。ファンの応援が物理的な破壊力に変換される、配信者専用のチート能力だ。「よし、応援に応えて必殺技いくよ! ……『チャンネル登録者・一斉検挙サブスクライブ・バースト』!!」ツヨシが自撮り棒を全力で振り下ろすと、ただのスライム相手に、地形を抉り取るほどの巨大な光の柱が立ち昇った。ドゴォォォォン!! という爆音と共に、スライムは蒸発し、背後の森が数キロにわたって更地になった。


《王都の門番A:……は?》

《魔法学園の女子生徒:凄まじい魔力……! あの男、何者!?》

《視聴者数が10000人を突破しました!》


「はい、余裕でしたね! チャンネル登録と高評価、忘れないでくださいね! 登録者が1万人超えたら、魔王城の庭でバーベキューする企画やりますから!」配信を終えたツヨシが、満足げに鼻をすする。「ふう、やっぱりライブはいいな。この調子でファンを増やせば、魔王なんて指先一つでひねり潰せるようになるぞ」一方、異世界全土は大騒ぎになっていた。「正体不明の男が、空中に向かって喋りながら森を消滅させた」「あれこそ、古の予言にある『空を操る狂乱の神子』に違いない」ツヨシの「演出」と「メタ発言」は、異世界の人々には「深淵なる叡智」や「神託」として解釈され、彼は一夜にして世界で最も注目される(そして最も意味不明な)英雄へと祭り上げられてしまったのだ。「さて、次の動画はどうするかな。……よし、『ドラゴンの巣に生卵を置いてみた』で行こう」ツヨシは自撮り棒を肩に担ぎ、鼻歌まじりに次の「撮影現場」へと向かった。異世界転生しちゃったので、ネット配信者になってみた。ツヨシの承認欲求が、世界の常識をデリートする物語が、今始まった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ