side勇者【20】
「それは……」
確かに被害を受けたように見せかけるって言うような犯罪もあった気がするし、権力者なんてものはそれを手放さずに済ますためならなんだってやるイメージはある。
だけど、自然災害みたいなものを王家が起こすことなんて可能なんだろうか?
そんな技術力があるなら、わざと「災厄」を起こすみたいなせこいことしなくてもやりようがあるだろって思う。
俺たちを別世界から呼び出すのだって、王家以外にできないってことはやっぱり特別な技術を持ってるってことなんだろうし。
チラリと護衛に目をやると、俺が悩み終わるまで口を挟む気はないようだった。
それならしっかり考えをまとめよう。
仮に、王家が「災厄」を起こせるんだとしよう。
そして、どういう仕組みかは置いといて異世界から人を呼べばなんとかなる設定にしたんだとしよう。
そういう状態なんだとしたら、王家の箔付のためにうまく利用することは不可能じゃないだろう。
でも、いろいろ無理があるような気がしてならない。
それよりは最高神とやらが実は邪神で、そいつが巻き起こす「災厄」を王家がなんとかしようとしてるって考える方が理に適ってる気がする。
うーん、王家の役割ってのがはっきりするまでは無闇に反乱は引き起こさないほうがいい気がするなぁ。
「お前たちには、王家が『災厄』を起こしてるっていう確証があるのか?」
「それはまだ掴んでおりません。原因の解明の部分から、勇者殿のお力をお借りしたいというお話ですので」
まあ確かにそう言ってたな。
「原因が分かったとしてだ。もしそれが排除するべきじゃないようなものだとしたら、お前たちは手を引くのか?」
「それは、私にはなんとも申せませんね。判断を下されるのは陛下や殿下ですので」
こいつが言ってる「陛下」と「殿下」がこの城の主ではないことを感じて、俺はゾッとした。
おそらく「災厄」の原因がなんであれ、こいつや王妃たちは王家を潰しにかかるんだろう。
それがどんな被害をもたらすとしても、気にせずやってしまうんだろう。
「その『陛下』の願いは、何が何でも独立するってことなのか?」
「先程申し上げた通りです。その原因を解明し、排除する。『災厄』という憂いさえなくなればジェンティセラム家は再び王家となり、かつての栄華を取り戻されることでしょう」
「…………」
「そのために勇者殿のお力添えを頂きたいと、我が主はお望みです」
「…………」
どうしたものか……。
俺は間違いなく「災厄」の核心に迫るだろうから、原因はわかるだろう。だからそれを報告するってところまでは受けてもいいような気がする。
それを排除するってのはこいつらが勝手にやればいい話だし、それで世の中が平和になるのかならないのかは俺の責任じゃない。
もしこいつらが失敗して処罰されることになったら、俺は脅されて無理やり従わされてたってことにしよう。護衛騎士を取り込まれてるわけだから、あながち嘘でもないしな。
よし、そうしよう。
あと、協力した場合の報酬も聞いた上で決めよう。
「協力ってのは、俺ができる範囲でいいんだよな? まさか俺に全部やらせるつもりじゃあないよな?」
「それはもちろんです。王女殿下は王妃に身を窶してまで情報を得ようとされましたが、どうしても肝心なところは直系以外には秘されているのです。王子殿下が成長されて神事に携わるようになられれば分かってくるでしょうが、それよりも早く勇者殿が召喚されましたので」
「分かった。「災厄」の原因を解明するってところまでは全面的に協力しよう。ただし、その原因を報告した後にどうするかはその『原因』次第だ。俺に全く手が負えないものなら、そこで手を引かせてもらう」
「勇者殿でも対応できるようなものであれば、引き続きご協力いただけると?」
「そうだな。だけどあくまで『協力』だ。俺に全部押し付けようとするなら、俺にだって考えがある」
つまりバラすぞってことだ。
俺のわかりやすい脅しに、護衛は楽しそうに笑った。
「わかりました。そのように主にお伝えいたします」
「それから、俺がそれに協力したらどんなメリットがあるんだ? まさかタダ働きじゃないよな?」
「もちろんです。ことがなされた後には、なんの不自由もなく望むままに暮らしていけるように手配されるおつもりですし、具体的なお望みがございましたら叶えていただけるでしょう」
「ほう」
「この城に滞在されている間も、可能な限りのもてなしを行うとのことです。そうですね、例えば……どのような女性がお好みでしょうか?」
「……なるほどな。それなら、小柄だけど出るとこは出てるのがいいな」
「承知いたしました」
そうして俺たちは顔を見合わせてほくそ笑んだのだった。




