side勇者【19】
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「気は進まないけど聞くが、王妃はなんでそんなことしてるんだ?」
「……そうですね。これは単なる歴史であり事実ですので、お話ししても構わないでしょう」
「聞いたら消されるようなことは聞かせないでくれ……」
俺は別に王妃に深く関わりたいわけじゃないんだ。知識として知っておきたいなってだけなんだ。それ以上は求めてないんだ……。
「王妃殿下の生家であるジェンティセラム公爵家について、勇者殿はどこまでご存知ですか?」
「なんだっけ、南の方にあってめちゃくちゃ豊かなんだっけ?」
俺の回答はお気に召したらしく、護衛はニッコリと笑った。
「その通りです。オーレンシア王国の南部にあり、領地の面積は王国内最大。温暖な気候で農作物は豊富に取れ、海に面しているため交易も盛んです。王国内で最も豊かな領地と言えるでしょう」
「そういや、そんな話を聞いたな」
多分サツキさんのところでだ。適当に聞いてたけど、それでも一応覚えておいて正解だったな。
「それだけ有力な貴族だから、そりゃあ王妃になるのも当然だよな」
と、俺にとっては褒め言葉寄りの事実を言った瞬間、空気が氷点下にまで下がった気がした。
殺気と言えるぐらいの凍った怒りが笑顔のままの護衛騎士から飛んできて、俺の全身に一瞬で冷や汗が吹き出した。
「な、なんか変なこと言ったか? 王妃になれるのって格の高い貴族だけなんじゃないのか?」
「……失礼いたしました。そうでしたね、勇者殿はまだお知りになっていない。なぜならそれをこれからお話しするところでしたからね。私としたことが、つい感情に流されてしまいました」
「お、おう」
本当によくわからないが、俺は結構な地雷を踏んでしまったらしい。
「勇者殿、王妃殿下は本来であれば今のような立場に収まっておられるような方ではございません。……ジェンティセラム公爵家は本来は独立した王国の王家なのですから」
「そうなのか? じゃあこの国に戦争か何かで負けたとかか?」
やばい、また地雷だった。
一瞬、陽炎のように怒りの炎が揺らめいてすぐに消えた。
なにが地雷なんだよ!?
「……勇者殿、機を見てお伝えするよう命を受けております王妃殿下からのお言葉がございます」
「お、おう」
また話が飛んでストレスなんだが、もう地雷は踏みたくないので聞き役に徹することにした。
悔しいが、こいつといいヴォルフガングといい、殺気を放たれるとちびりそうなぐらい怖いんだよ……。認めるのは本当に癪だが。
「勇者殿、是非とも『災厄』をただ鎮めるだけではなく、なぜ起こるかという原因の解明とその排除にお力添え願いたい」
「ん? それはまあ、無くなるに越したことはないだろうからいいと思うけど。できるかは別として」
「そして、ジェンティセラム家が再度王家として立つことへもお力添え願いたい。そう、王妃殿下はお望みであらせられます」
「は?」
ほらやっぱり謀反じゃないかよ!
争いに負けた王族の謀反とか、戦争に負けた元王家の謀反とか、よくある話だと思ってたんだよ!
「いや、それはちょっと……」
「なぜでしょうか?」
「なぜって、うまくいかなかった時が怖いだ、ひっ!」
最後まで言わないうちに、今までで最大の殺気を浴びせかけられた。椅子に座っているから見た目にはわからないだろうが、俺は腰を抜かしていたと思う。
「勇者殿、そういえばお話が途中でしたね。なぜジェンティセラム家が一臣下に収まっているのか……。その原因がまさしく『災厄』なのです」
「あー、勇者とか聖女の力を借りるために仕方なく、ってことか?」
「その通りです。そして『災厄』には謎が多過ぎる。まずは勇者殿や聖女殿、別の世界から召喚された方にしか鎮められないというのはどうしてか」
「まあ、それはそうかもな」
俺はそういう系のラノベやマンガをたくさん読んでたから「そういうもの」と思ってたけど、確かに自分たちで解決できないってのは不満だろうな。
「また、『災厄』は何度も起こっているはずなのに、その記録が存在しないというのもおかしな話です」
「……それは、記録なんかも根こそぎ失われるほどの被害だったってことじゃないのか?」
「そのような回もあったとしても、一切残っていないのは違和感を覚えませんか? さらに言うならば、王家にだけは記録があるのです。なのにそれを王家は公開することはないのです」
「…………」
「勇者殿、こうは思いませんか? 『災厄』は、王家が起こしている……と」




