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告白

 目が覚めたモニカは見知らぬベッドで横になっていた。


「目ぇ覚めたか」


 となりのベッドから聞き覚えのある声がかけられた。


「ここは……?」


 モニカが重そうに体を起こしながら聞くと、ヴラドは視線を窓の外にやったまま答えた。


「ギルドの医務室だ」


 医務室……。あっ。


 次第に意識がはっきりしてきたモニカ。


「そ、そうだヴラドくん、傷は大丈夫なの?」


 ヴラドの姿をよく見ると、彼もモニカと同じ白い患者衣を着ている。


「……」


 なにか言いたげなヴラドだが、その言葉は飲み込み、質問に答えることにしたらしい。


「ああ。あのクソババアが自分の寿命を使って俺を回復させやがった」


 モニカはヴラドの言ったことが理解できなかった。まだ頭が冴えていないのかと自分を疑った。


「えっ……ごめん、なにを使ったって?」

「寿命。命を削って使う呪詛ってやつらしい。あのババアしか使えない特別な魔法なんだとよ」


 この言葉で、モニカの頭にかかっていた靄が一気に晴れた。


「そ、そんな……私のせいで……」

「お前のせいなんかじゃねぇよ」

 そう言ってうつむき、歯を食いしばったヴラドは悔しさを噛み殺しているようだった。


「モニカ!」

 ルティが病室に入ってきた。


「ルティちゃん……。ごめんね、心配かけて」

「ううん、無事でよかったよ」


 ルティの後ろに立っているエマに気が付いたモニカ。


「エマ……ごめんなさい。私が……」


 モニカの言葉に、呆れたような表情を見せるエマ。


「ヴラドさん……モニカさんには黙っていてと言ったでしょう」

「了承した覚えはねぇ」

「まったく……」


 モニカは謝罪の言葉と共に、自分がなぜああいう状態になってしまったのかを説明した。

 過去に受けたトラウマのこと、これ以上は黒の迷宮の攻略を続けることが難しいことも全て伝えた。


「これ以上、迷惑はかけられないから」

「迷惑だなんて、とんでもないです。いつかは戦わなければいけなかった相手ですし、モニカさんがいたからこそ、これほど早く最深部に到達することが出来たんですよ」


 エマの気遣いはモニカにとって嬉しくもあり、辛くもあった。


 うつむくモニカ。


「あのモンスター、きっとダンジョンから出てきちゃうよね」

「ええ、恐らく。王国に帰ってきてすぐそのことは上部にも報告し、最低限ではありますが王国付近の警備も設置しました。ただ、今のところ襲ってくる気配はないようです」

「だがチンタラしてるワケにもいかねぇ。あれだけの知性を持ったモンスター……そもそも、モンスターと呼んでいいのかすら分からねぇがよ、あんな奴の存在を知っちまった以上、放っておくことはできねぇよ」

「逆じゃないかな」

「あ?」

「彼が僕たちを放っておかないよ、きっと」

「なんでだよ」

「僕たちが逃げるすこし前、生贄はモニカだけで勘弁してやるって言ってたでしょ。多分だけど、彼に挑戦するには何かしらの代償が必要だったんだ」

「相手がモンスターということを鑑みると突拍子もない推論に聞こえますが、あの男なら有り得ないこともない気がしますね」

「彼にとってはゲームかなにかのつもりなんじゃないかな」

「とことん胸糞悪いヤツだぜ。顔を思い出しただけで腹が立ってきやがる」

「きっと今も僕たちが戻ってくるのを待ってるよ。あの王座に座ってゆったりと」

「ハッ、上等だぜ」

 ヴラドは手のひらに拳を打ち付けた。

「とはいえ、いつまでも悠長に待っていてはくれないでしょう。誰も挑戦しに来ないと分かれば、退屈しのぎに街を破壊しかねません」

「もう王国ギルドには報告は入れてある。あとは準備が整い次第、全員で奴を討ちに行くだけだ」


 王国ギルドの医務室で行われる、世界を揺るがすかもしれない危機の話。


 ただ平穏な日常を取り戻したかっただけのモニカは、それを複雑な気持ちで聞くことしか出来なかった。

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