第36話
愛護
野鳥の中には我が子を殺す「間引き」を行う種属がある。
強い子供を育てんとする親鳥としての本能で、多くの卵を産んだ場合は殊更間引きが見受けられる。
身体が小さく、活発ではない子供が間引きに指されやすい。元気な子供を残すための生物的な行動で、間引きに遭った雛鳥たちは殺され、没することになる。
雛が自分の兄弟である雛を殺す場合もある。
いずれにしても動物界では間々ある生存競争で、彼らは自然の掟と捉え、種属を維持しているのである。
「やい、お前のご飯のほうがちょっぴり多くないか?」
「え……」
「なあ、俺のと交換しようぜ。お前はこっちを食べろ!」
「うん……」
一日につき一回きりの食事は粗末なものだった。
食うや食わずの貧困生活。家族はいつも飢えていた。
「げほ、げほ……」
「お前、また? 身体の調子が悪いのか?」
「……」
「おいおい、大丈夫か。先が思いやられるぜ」
元々、我が家は一人の子供を育てる方針だったらしい。
しかし蓋を開けてみれば産まれた子供は双子であり、経済的に困窮する中、俺たち二人は生育した。
愚弟は身体が弱く、病弱。家には薬代もなく、正味なところその存在は足手纏いになっていた。
弟のことは兄に任せて親は仕事に出かけていき、二人分の食事だけが毎日用意されていた。
「やっぱり、お前のご飯のほうがちょっぴり多い感じがする。お前は身体が貧弱だしな。親も心配してるんだろ」
「……」
「だが、双子とはいえ俺のほうが兄ちゃんだ。俺がそっちを食べておくから、お前はこっちを食べろ」
「……」
ここのところ、一週間ほど親の顔を見ていない。
二人分の食事の傍には二本の匙が置いてあり、俺の分と、愚弟の分がはっきり分別されていた。
「なあ、愚弟よ。話がある。大事な話だ。聞いてくれ」
やっとのことで匙を握り、愚弟は虚ろにこちらを見る。
……俺もそろそろ限界だった。
吐き気を我慢し、そちらを見た。
「俺がいなくなった後は家計に余裕ができるだろう。あんな親でも、たった一人の子供は大事にするさ」
「……?」
「いっぱい食べて、薬も飲んで、早く……元気になるんだぞ。それと、長生きするんだぞ。俺の分まで、長く――」
「……?」
机の椅子から倒れ、俺は泡を吹いて――死亡した。
愚弟が俺の名前を呼ぶが、返事はできなかった。
「……」
両目を開くと、その視界には俺と愚弟の姿があり、そしてどこから現れたのか、小さな少女が立っていた。
「お父さんとお母さんが間引きの話をしてたんだ。それを……こっそり聞いたんだよ。あいつを守りたかった」
「……」
「毒とか、そんな高価なものは俺の家では買えないから……多分、農薬だと思う。あはは。変な味だったよ」
稀に、雛は我が身を挺して間引きの兄弟を庇うらしい。
基本的に親鳥たちは間引きを中断しないのだが、更に稀に、間引きの雛が助かることもあるそうだ。
カランコエ




