山の学習です
さぁ、いよいよ夏山登山です!
あの、夢で見た男子生徒が誰なのかは全くわからなかった。
というか、光希の時とは違い、一度しか夢を見れなかったのも、分からない原因ですね。
だって、名前すら知らない子が怪我をしたって言われても、前の時の私は全然気にしてなかったし、心配すら、しなかったのだから。
「南川さん、神代さん、こっちー!」
「はーいっ」
班長の子に呼ばれて集まる。ハイキングコースだとは解ってるけど、いざ山を見上げると……やる気が萎むわぁ~。
これを登っていくのか、大変だよ?
夏山っていっても、七月に入ったばっかりだから朝晩は冷える。皆長袖ジャージで、手を擦りむかないように軍手着用です。
ちなみに今は午前八時。日が射してきて、ちょっと暖かいです。
一組から出発していくので、班に別れてもほとんどクラスで纏まっている。
けど、やっぱり歩くペースが違うので、段々とバラバラになってきます。
「はぁ~…結構キツいね」
「本当。男子けっこうなハイペースで歩いてったけど…」
「きっとバテてるわね」
整備されたハイキングコースでも、階段状になってるところもあれば、石がごろごろしてるところもあって、なかなか疲れてきました。
休憩は班ごとにとっても良いので、私達の班はちょくちょく休みを挟んで、水分補給しました。
「七月入ったけど、まだ涼しいよね」
「登る度に汗かくけどさ、休むと暑くはないなって感じるね」
やっぱり山の中だからかな、風が涼しいです。時折強く吹くと寒く感じるくらいです。
お喋りしつつ、休憩を挟みつつ、最後尾にならないようにだけ気を付けて登っていけば、午前中の目標ポイントになっている開けた場所に着きました。
学校のグラウンドの、半分よりちょっと狭いかな? くらいの場所で、班ごとに固まって昼食です。
仕出し弁当です。夜に班で料理することになってるからね。毎食は、中学生には無理だよ、主に忍耐とか…色々ね。
「あっちの方空いてるよ」
「日陰はやめておきましょう、風が結構冷たいわ」
「じゃあレジャーシートひくね。一個で座れるかな」
「荷物置く用にもう一つひこうよ。私の出すね」
四人班なので一個のシートでゆったりと座れるけど、皆リュックサックなのでもう一つひいて、そっちに荷物を纏めて置く。
砂とか付くと嫌だしね。
班員は私と由紀乃ちゃん、堀さんと高木さんの四人です。
早速ご飯を食べ始める。仕出し弁当だから、冷めててご飯が固いのがちょっと悲しいです。
その代わり、お茶は温かいのが配られました。
「はぁ~、陽射しが暖かい…」
「晶子、縁側のお婆さんみたいよ…」
「え~、ならネコ欲しいなぁ」
食休みとして少し時間があるから、まったりとしながらお喋りです。
男子は一部遊んでます。体力無くなるよ?
ふと周囲を見渡してみれば、亮くんが見えました。
長谷部君と一緒の班なのかな? 喋ってますね……長谷部君がほぼ一方的っぽいけども。長谷部君の他にも三人固まってる、あの子達も一緒の班かな?
「ん? 晶子、なに見て……あぁ」
「何々? ……あ~…あ!」
「あっ! ちょっ、神代さん、大変だよ!?」
由紀乃ちゃんの声に、堀さんたちが、反応した。
うちの班全員で見てます。
亮くんと、亮くんを囲うように近づいてきた女子の群を。
「あ~あ、桑崎君囲まれた」
「晶子ちゃん大丈夫?」
「大丈夫と聞かれる意味が解らないよ?」
皆さんの誤解を解くのはもう諦めたよ。
乾いた笑いを返したら、亮くんがこっち見た。そして流れるように、女の子達を長谷部君に押し付けてこっちに来ました。
ってちょっと、何でこっちに来るの? 女の子達の目が怖いよ~。
「晶子」
「亮くん、長谷部君と一緒の班なんだね」
仲良いね。と言えば、眉間に一瞬皺が寄った。
嫌なの!?
そしてナチュラルに私の隣に座るのね。
堀さんと高木さんがにやにやしながら後退りしちゃったよ。
由紀乃ちゃんは慣れちゃったからか、普通の表情でお茶飲んでる。……慣れないで欲しいなぁ。
「いつの間にか長谷部が隣にいて、班を作られてたんだ。アイツといると女子が寄ってくるから嫌なんだ」
「あ~、長谷部君は気さくだから、話し掛け易いのかな?」
亮くん一人だとだいたい女の子は遠巻きだしね。
ため息吐いてお茶を飲む亮くんに、苦笑しかでないです。頑張れって言うのも、何か違うよね。
「…神代さ~ん、そのお茶あなたの…」
「間接キスぅ、とか…既に当たり前な感じ?」
「いちいち気にしてたら、疲れるだけよ、放っておきなさい」
何か由紀乃ちゃんが酷いこと言ってる。




