ねぇねぇ
「ねぇねぇ、恵実ウケる話あるんだけど聞くよね?」
けいちゃんはいつも朝ギリギリで登校してくるのに、今日は20分前に学校についたらしく席に座るや否やすぐさま振り向き悪そうな笑みを浮かべてくる。
(悪役みたいな顔してる...かわい)
「うん、聞きたいな」
「昨日話した田口いるじゃん?あいつさ振られたんだってwwwwまじウケるだけどwww自分の顔見てたら普通わかるくない?なのにさめっっちゃ泣いてんのwww」
「ふぅん、そうなんだ。なんか可哀想だね」
「いやいや、ざまみろでしょ。自分の身分を分かってないのが笑える」
「まぁ叶わない恋って分かってても伝えたかったんだね、勇気はすごいよね」
田口さんの事はよく知らない、でもけいちゃんが悪く言うんなら相当醜い顔をしているのかも?
まぁどうでもいいけど。
けいちゃんが嫌いな顔はきっと私も嫌いな顔。
だってけいちゃんの顔が好きな私だかこそ分かる。
「ね、勇気はすごいよねwwわたしなら無理!!
わたしより顔面偏差値高いやつにアピールする勇気ないもん。普通はそうだよね?」
困り眉になりながら、小馬鹿な表情を向けてくるけいちゃん。
小悪魔的で可愛い。
「そうだね、私も無理かも。凄くモテてる人だったら私なんかを好きになってくれる訳ないって思うよ」
「いやいや、恵実は可愛いから!!自信持って、恵実の告白を断る奴は身分相応な奴かB専のどっちかだって」
「私って可愛いの?けいちゃんは可愛いと思ってくれてたの?」
「っん、当たり前じゃん。恵実のビジュアル見て可愛いって思わない奴いないよ」
普段は人の容姿を褒めないけいちゃんが私の顔を可愛いと褒めてくれる。
こんなにも幸せな気持ちは今までにない。
「そっか、けいちゃんが言うんなら自信持てるね」
けいちゃんに褒められて、頬がじんわり熱くなる。慌てて両手でほっぺを押さえ、見られないように視線をそらす。
(ちょっとやりすぎかな)
「はっっっ~~~、可愛すぎ!!うーんもうラブ!メロい!このモテ女!」
昨日と同じく、また机越しに抱きついてくる。
今日はほっぺが触れなかったけど、その代わり私の顔を抱き抱えるようにぎゅっと抱きしめられる。
こんなにも私にだけ見せてくれる表情があるのに今は友情でしかないなんて残酷だよね。
これがそれ以上の感情だったらいいのになんて欲張りな思いなのは知ってる。
でも願わくば、けいちゃんとの距離が友情以上になってくれたらいいな。
「けいちゃん、ふわふわだね。それにいい匂いする、なんか落ち着く」
抱きしめてる腕を抑え、無意識に鼻に近づけて匂いを嗅ぐ。
花の香り?石鹸?
なんだろう、いい匂い。
何秒かが過ぎた頃、ばっと手を引かれてしまう。
無意識のまま、本能に従ってその匂いを嗅いでしまった。
(……やらかした)
思わず下から、顔色をうかがうようにちらりと様子を見る。
「あっーーー、もう!ほんと天然モテ女はっ、もう!!これ私以外にしちゃダメだからね?わかった?」
どこか照れた様子のけいちゃんが猫みたいにムッとした表情で睨んでくる。
「けいちゃん以外にこんな事しないよ。恥ずかしいもん」
好きな顔じゃなかったら、タイプにも入らないしそんな人にベッタリなんてする訳ない。
そんな私の考えが分かってないであろうけいちゃんは不満そうな表情になってしまう。
「ふぅん、恥ずかしくなかったらするんだ?別にわたし以外にも仲良い子沢山いるもんね。ふぅーん」
テンションが少しずつ落ちていく。
まるで氷点下まで沈み込んでいくように、彼女の表情は暗くなっていった。
……メンヘラ? かわいい。
って新しい表情が見られたなんて喜んでいる場合じゃない。
猫は好きなものを釣ると機嫌が良くなるって聞いたけど、
けいちゃんの好きなもの...なんだろ?
顔がいい事、性格が悪い事、以外何も知らないかも...
「恵実聞いてる??わたし以外にも仲良い子沢山いるよね...その顔も他の子の前でするの?」
さらに不愉快そうに眉間に皺を寄せる。
その顔ってどの顔?真顔のこと?
けいちゃんが何を指しているのかわからないけど、機嫌がどんどん悪くなっているのを肌で感じる。
「けいちゃん、嫉妬してるの?」
「....は?.....な、わけないでしょ...意味不明なんですけど」
笑って流してくれると思ったのに、けいちゃんは気まずそうに視線を逸らす。
この空気をそのままにしておいたら、後に引きずる。
とりあえず褒めとけば何とかなるかな。
「けいちゃん可愛い、嫉妬してるけいちゃん凄く可愛い。むってしてる顔も猫みたいで揶揄いたくなっちゃう、可愛すぎてこんな顔けいちゃんにしか見せれないよ」
早口で語り終えると不貞腐れていた顔から、口角が少しずつ上がりピクピクと動いて照れ隠ししているけいちゃんと目が合った。
「ん...まぁわたしが可愛いのは本当だし...わたしレベルの可愛さこのクラスにはいないのも当然だよね。なら恵実の照れ顔も実質わたしだけって事でしょ。ふぅーーーん」
「そうだよ、それに私はけいちゃんとの仲が1番仲がいいって思ってるよ。けいちゃんは違うの?」
けいちゃん、違う訳ないよね。
だってけいちゃん私以外友達いないでしょ。
けいちゃんのペースについて来れない子達はすぐに離れて行ったよね、私だけが残って隣にいるんだよ。もう特別だよね。
「うん、恵実は特別。こんなに話せる子今までいなかったし...はぁなんかモヤモヤしてるのも馬鹿らしいし帰りパフェでも食べに行こ」
「美味しいお店知ってるから、そこに行く?割引券持ってるよ」
「え!?いくいく!安くて美味しいの食べれるんなら行くしかないってww」
やっといつもの調子の笑顔が可愛いけいちゃんに戻ってきた。
うん、不愉快な顔してるけいちゃんも可愛いけどやっぱり笑顔が1番可愛い。
割引券なんて本当は持ってないけど、少しでも興味を引きたくて嘘をついちゃった。
今日も学校が終わったらけいちゃんと一緒に美味しいパフェを食べよう。




