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余命十五年のチート転生 〜クズから始まる異世界成長物語〜  作者: 三太華雄
 

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四十九回目の転生


「ここは……」


 気が付くとカイルは、見覚えのない空間にいた。

 どこを見回しても何もない、真っ白な空間。何故ここにいるのかわからない、カイルは意識を失う前の記憶が途切れていた。


「あなたは死んだのですよ。」


 茫然とたたずんでいると、どこからともなく聞こえた、懐かしく感じる、少女の声と言葉。

 そして目の前が光輝くと、光の中から見覚えのある、金髪の白い羽をはやした天使が現れた。


「……まーた、駄目でしたか。」


 いきなり現れるといなや、天使が呆れたように大きくため息を吐く。


 そしてカイルはこのやり取りを見て、ここがどういう場所かを思い出した。


――そうか、ここは……


 ここはカイルが転生する前に訪れた場所、そして目の前にいるのは、自分を異世界へと転生させた天使だ。

 そしてここにいるという事は、自分はまた、不幸死したという事だろう。


「まさか……また俺は、死んだのか?」

「だから、そう言ったじゃないですか?覚えていませんか?」


 天使の言葉に少しずつ以前の記憶が蘇ってくる。

 確か、十五歳の誕生日、毎回訪れるという不幸から生き延びるために、万全の備えをして臨んだ。しかし、結局最後は不意に落雷を食らい、そこで意識が途切れていた。


 死んだことを実感しはじめると、カイルの顔が徐々に青ざめていく。

 あれだけの力を持っていながら死んだという事の、重大さに気づいてしまったのだ。


「しっかし、なかなかやりたい放題な人生を送ってきたんですねぇ、予想外というか期待通りというか……」


 天使が資料のようなものを見ながら呟く。恐らくそこには自分の人生のヒストリーが書いてあるのだろう。


「それにしても、最強の剣士が自分の剣でトドメを刺されるなんて……、ププっ、滑稽ですよねー」


 天使は資料を見ながら小馬鹿にするような笑った。

 しかし、カイルに反応はない。


「おや?反応がないですね?どうかしましたか?」


 反応のないカイルに天使がつまらなそうに尋ねる。


「……たんだ」

「はい?」

「剣士になんかになったのが駄目だったんだぁぁぁぁぁぁ!」


 沈黙を破ると今度は唐突に大声で騒ぎ始めた。


「そうだ、剣士なんかになったのが駄目だったんだ!何が最強の剣士だ!剣士に最強もクソもあるか!剣士なんて剣さえなければただの人間じゃないか!こんなものチートでも何でもない!こんなので死を回避できるわけなかったんだ!!」


 まるで自分に言い聞かせるように早口で怒りをぶちまけるカイルに、天使は圧倒された。そしてしばらく呆然とした後、またクスクスと笑いだした。


「何がおかしい⁉」

「すみません、ただ余りに見苦しい必死の言い訳でつい……でもそりゃそうですよねー、もし言い訳をしなかったら、それはつまり。『どう足掻いてもこの死からは逃れられない』って事を認めてしまうようなものですからねー、そりゃ言い訳しますよねー」


 天使に考えたくなかったことをはっきりと口に出され、荒げていた言葉を詰まらせる。


 カイルは生き延びるために万全の準備をしてきた。チート級の才能とスキルを手に入れ、最強と呼べるレベルまで強くなり、不幸が起こると言われた日には、どんな状況にも対応できるように常に警戒を張っていた。


 しかし、それでも生きることはできなかった。

 

 もしこの行いに何の間違いもなかった、これが最善の策だったと認めてしまうと、もはやこの先どんな事をやっても抗う術がないと言う事になる。


 それはつまり、自分は絶対(・・)十五歳で死んでしまうということだ。

 それだけは認めたくなかった。だからカイルはこじつけでも、死んだ原因を作りたかったのだ。


「しかし流石ですね!え〜と、今はカイルさんでしたっけ?相変わらずの逆ギレっぷり!、いいですねえ~思わず惚れちゃいそうでしたよ〜」


 かつてと同じように小馬鹿にする天使に更にいら立ちを募らせた。

 本来なら斬りつけたいが、今のカイルにそんな事はできない。剣もなければ、相手を殴る力もない、今のカイルは、なんの力も持たない人形、そのものなのだから。


 カイルは怒りを堪え、急かすように話を進めた。


「……次の転生はどうすんだ?まだ不幸ポイントは残ってんだろ?」

「ええ、まだそれなりに……ただ先に言っておきますが、今回も不幸死ですが、前回の分の不幸ポイントは加算されません。一応記憶は残ったままだったので、実質は三十年生きたと認定されているんです、今回の転生で記憶を持たずに転生するなら、次回にまたポイントがついていきます。なのでかなり消費していますが残りのポイントも使いますか?」


 天使の説明に少し不満を持ちつつも、カイルは納得した。いや、納得せざるをえなかった。


「……わかった、じゃあ、今回も使ってくれ。」

「わかりました、じゃあ、今回も、めいいっぱい使わせてもらいますね。前と一緒で貴族とかイケメン的なので良いですか?」


天使の問いに頷こうとするが、そこでふと思いとどまる。


「……いや、今回は貴族ならなんでもいい、その代わりその分をスキルの方に回してくれ、剣士なんか軟弱ものじゃなく、武器なんてなくても強い人間に」

「わかりました、では、それで転生を開始しますね、今度死んだら今度こそ、言い訳できないのでせいぜい生き残れるよう頑張ってくださいね」


 天使が少しプレッシャーのかかる激励をすると、前の時のように手続きを始めた。


――前回は油断していただけだ、大丈夫、次は絶対に乗り越えられるはずだ。


 手続きが済むと前回と同様、カイルの体を光が包み込む、カイルは今度こそ生き残ることを決意しながら、そのまま次なる転生へと消えて行った。






――

 転生し終わると、天使は一息をつく。


「さてと……」


 そして先ほどとは打って変わって、真面目な表情をするとカイルの資料に目をやる。


「小さき暴君ね……やっぱり性格にも影響しているのかしら?」


 天使はカイルの経歴、ステータスを見直していく。


 剣術、スキル、ステータス、……

 どれも超人級の数値であった。


 そしてその中でも、一つ頭抜き出ている数値を叩き出してる項目に目が止まった。


「剣士としての才能を与えたのに、どうして一番高いステータスが魔力なんですかねぇ……」


 剣士の才を与えたのに、魔法の才の方が高い、それがどういう意味を示しているのか理解していた天使は、少し眉を顰める。


「まあ、、いいわ、死のうが生き延びようが私にはどちらでもいい事、楽しませてくれればね。」


 そう呟くと資料をその場に捨てて、不気味に微笑んだ。


「これで転生は四十九回目、今回を含めて、チャンスは残り二回。せいぜい悔いのない人生を送ってくださいね?」

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