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余命十五年のチート転生 〜クズから始まる異世界成長物語〜  作者: 三太華雄
第一章 カイル・モールズ編

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1度目のエピローグ

「おい、知ってるか?この前の大地震であのカイル・モールズが死んだんだって」

「ああ、聞いた聞いた、なんでも落雷が落ちて死んだとか?化け物と呼ばれたやつも死ぬ時は、あっさり死ぬんだな。」

「いや、そうでもないらしいぞ?落雷を浴びるたあとも、まだ息はあったんだけど、丁度倒れたところに剣が刺さってあって、それが心臓を突き刺したんだってよ」

「うわぁ、そんなことってあり得るのかよ、なんて運が悪いやつだ」

「ホント、運が悪いよなぁ、まあ、それはともかく……」




「「これで平民達は救われたな。」」




 ルイン王国は今、一人の少年の死で賑わせていた。

 小さき暴君と呼ばれた少年、カイル・モールズ。平民を震え上がらせた貴族カイルの死は、平民たちからは歓喜の声が満ち溢れ、彼に心酔していた者たちからは嘆きの声が漏れていた。



――モールズ邸別荘


 この屋敷では、三人の家族が団らんに過ごしていた。地震の影響で家が倒壊した事もあり、慰安に行っていたモールズ一家は、家の立て直しが住むまでこの別荘で過ごすことにした。


 本来なら一番カイルの死を嘆くであろうはずの実父レインが今、カイルの死を肴に上機嫌にワインを飲んでいた。


「どんなに、有能でも死んでしまえば無能と同じよ。あいつは主としてふさわしくなかったっという事だな」


 蓄えた髭を触りながらグラスを揺らして小さく笑い呟く。そのワインを飲み干すと少し顔を赤くした。


「大体私は元からあいつが気に食わなかったんだ。ほとんどがエミリアに似て、私に似ているところが一つもない。もしかしたらあいつは、エミリアが逢引きして作ったどこかの馬の骨との子供じゃないかと今でも私は考えているよ。」


 元々政略結婚で結ばれた二人だったのでありえない事ではない。今、レインの妻であるカイルの義母、ベイルの実母のメアリーは元はレインの愛人であった。


 しかしレインとは違い、カイルの母エミリアは、使用人たちにも優しく接するほど穏やかな人で、愛人を持つことなどはなかった。


 エミリアの悪口を聞いていた、そばに控えている使用人が、性格があんたそのものだよっと心の中で皮肉った。


「……まあいい、これで私の後継者はお前で決まりだな、ベイル」

「ホホホ、そうよベイル。あなたこそ領主にふさわしいのよ、あんな小僧よりもよっぽど優れているわ」


 メアリーが義手で眼帯をした右目をさする。

 元はレインの愛人であったメアリーは今から十年前、レインと結婚するためにエミリアを殺害していた。


 そして今度は二年前、カイルが王に一目置かれ、面白くなかったメアリーはカイルを殺害するために刺客を送り込んだ。

 だが、刺客全員が返り討ちにあい、更にそれを企てたことがバレて逆上したカイルにより右目を抉られ、右腕を一本持っていかれたのだ。メアリーはそのことを思い出し少し身震いをする。


「ふふふ、でももうあの化け物はもういない。これからはあなたの時代よ、ベイル」


 メアリーはそう言って優しくベイルの肩に手をそえる。


「任せてよ、カイルなんかより立派な領主になってみせるよ」


 カイルの五つ年下の腹違いの弟ベイル。徹底的に甘やかされ、醜く太った容姿はカイルと血が繋がっているのかさえ疑わしい程だった。


 誰からも間違いを正されず、好き放題に生きてきたベイルは自分がどれだけ無能なのかを知らず、カイルよりも自分の方が実力も人としても、上だと思い込んでいた。

 両親はカイルの強さ、恐ろしさをベイルに教えるのではなく、カイルと遠ざけることによりその事実をベイルに隠していた。


「そうだわ!王女との縁談の話、あれをベイルに回しましょう。」

「それはいい!カイルの実弟のベイルなら国王も納得するだろう、これで我が家は安泰だな、カイルに感謝しないと」


 今後の事を楽しそうに話す二人、この楽観的な二人の思考は徐々にモールズ家を没落させていく事となる。




――レジスタンス本部


 ここは貴族の名を捨て、レジスタンスとして活動しているロイドが作った組織だった。ルイス家の別荘を隠れ家として活動するこの組織は、メンバーのほとんどが、かつての戦いで共にした学校の生徒で構成されており、ロイドが対カイルのために作った組織でもある。


 カイルが学校を卒業し、外に出た時、カイルと対峙するため戦う準備をしていた。

 ……それだけに、今回のカイルの死はここにも大きな衝撃を与えていた。


「やりましたね!あのモールズが死ぬなんて」

「安心するのはまだ早いぞ!まだ奴の意思を継ぐ者達がいる。」

「それでもあいつを相手にするよかは大分マシでしょう。」


 皆それぞれの反応を示す中、ロイドは一人座りながら、思いふけっていた。カイルと戦うために作られた組織、皆がカイルの死を喜ぶのは普通なのだが、ロイドは素直に喜べないでいた。


「おい、お前ら、ロイドさんの事も考えろよ、ロイドさんとモールズは元々親交があったんだぞ!」


 レオンの言葉にメンバーが失言に気づくと、ロイドに謝罪をする。

 それとは別にレオンも不機嫌になっていた。


 最強の剣士だと思っていたカイルが死んだ。それがまだ戦いに敗れて死んだのなら納得していただろう、しかし災害と不幸が重なって死んだとなると、レオンは何とも拭えない気持ちになっていた。


「いや、気にすることはない、それに皆の言う通りさ。ただ、相手はもうカイル達だけではなくなったがな。」


 ロイドは外に出て、改めて気づかされた、貴族と平民の格差関係。

 カイルばかりに気を取られていたが、他の貴族にはカイル以上に平民を酷く扱う貴族たちがたくさんいた。

 重税はもちろんの事、平民同士を余興で殺し合わせたり、盗賊と手を組み村を襲わせたりする者たち。 

 平民は汚れるからそばに置きたくないと言っていたカイルの方がまだマシに見えるほどだ。

 ロイドはカイルとは別に悪徳貴族達とも対峙しようとしていた。


「さあ、この話は終わりにしよう、俺は少し庭に出てくる。」


 そう言うと、ロイドは立ち上がり、家の庭の方へと出ていった。

 

 庭へ出るとロイドは空を見上げる。

 ゆったりと雲が流れていき、まるで何事もなかったんじゃないかと思わせるほどの青い空だ。


「ロイド様、あまり我慢なさらなくてもいいのですよ」


 庭でハーブを育てていた、オゼットが空を見上げているロイドに優しく話しかける。


「私たちは対立した記憶しかありませんが、ロイド様はモールズ様と共に過ごした時間があります。今は敵対しているからと言って、その時間が無くなるわけではありません。共に過ごした人の死を悲しむことは決して恥ずべき事ではありませんよ。」


 オゼットの言葉にカイルと過ごした記憶が蘇る。

 会う度に無邪気な笑顔で駆けよってくるカイル、パーティーを抜け出して、弓を教えたり、楽しく遊んだ時間は紛れもない事実だった。


「いや、大丈夫、大丈夫さ……」


 そう言うとロイドは、そのまましばらく空を見上げていた。



「……今日はおかしな空だな……雲が、滲んで見える……」





――


「いつまでそこにいるつもり?」


 カイルの墓標の前で立ち尽くすオズワルトにベルベットが呼びかける。


「そんなとこにいたって、カイルは戻ってこないわ」

「わかっているさ、ただ、ここにいたらカイルの考えてたことがわかると思ってね」


 二人の会話から、カイルに『様』が付くことはなくなっていた、それがカイルに出された最後の命令・・だからだ。


「で?わかったの?」

「いや、全く。」

「でしょうね、ならば私たちが、わかっていることをすればいいのよ」


 カイルが成し遂げようとしていた事、それはいつもそばにいた自分達が一番よく知っている。


「そうだな、カイルの意思は俺達が受け継がないとな」

「ならば、それに、私も加わらせてはくれませんかな?」


 後ろから聞こえた年老いた声に二人が視線を向けた。


「クラウスさん……」


 そこにはカイルの家に仕えていた執事のクラウスがいた。クラウスは二人がこちらを見ると、相変わらずの優雅なお辞儀をする。


「モールズ家の方は……」

「ぼっち……いえ、カイル様のいないあの家に仕える意味はもうありません。カイル様がいなくなった事の重大さに気づいていない愚かなあの家は、いずれ没落の道をたどるでしょう。」


 二人はクラウスもカイルに魅了されていた一人だと知ると、顔を見合わせ、頷き、クラウスに頭を下げた。


「我々に力を貸していただきたい。」


 互いに手を取り合うと、オズワルト達は今一度、墓標に向かい膝を付け、首を垂れた。


「偉大な貴族にして最強の剣士、カイル・モールズよ、あなたの意思は我々が引き継ぎます。」

「目指すは平民が貴族に逆らうことのない、絶対的服従な世界を!」


……こうして、一人の異世界転生物語が幕を閉じた。

そしてこの物語は、次なる転生へと続いていく。



これで一章が終りました。

ここまで読んでくださった方々。ありがとうございました。


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