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余命十五年のチート転生 〜クズから始まる異世界成長物語〜  作者: 三太華雄
第二章 ネロエルドラゴ編

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英雄物語 ヴァルハラの戦い。

「ヴァル……バラン?」


 レオパルドが告げたパーティーの仲間の名前の一人にネロが食いつくと、レオパルドもその反応を予想していたように頷く。


「それって魔王ヴァルバランの事か?」

「ああ、そうだ。ヴァルバランは俺達のかけがえのない仲間だったんだ。」


 そう言うとレオパルドはかつての事を思い出しながら当時の事を語り始めた……


――英雄物語 ヴァルバラの大戦


 今からおよそ八百年前、魔法大国テスが起こしたバルオルグスの召喚の影響により、アムタリアと別世界にある魔界との間に小さな(ひずみ)が生じ、アムタリアには魔界の住人であるアンデットが蔓延るようになっていた。

 

 アンデットは陽の光のない世界である魔界と環境が近くなる闇夜や光の届かない場所に出現し、餌となる人間たちを本能的に襲っていった。

 人間たちはその姿が腐敗した自分達と酷似している事からアンデット達を死者が生者を妬みモンスターと化したと考え、その説は八百年経った今でも健在である。


 そして時は流れ、五百年後、そんなアンデット達の存在が当たり前となり、一般的なモンスターとして扱われていた頃、事件は起こった。

 とある一人の男が旧魔法大国テスの研究施設跡地で古代文書で書かれた研究日誌を見つけた、そこには当時の魔法に関する研究内容が記されており、男はその本から魔界の存在を知った。

 男は特殊スキル『精霊召喚』を持っていた、が、歪んだ思考の持ち主であったため精霊に嫌われ召喚が成功した試しがなかった。

 そこで男は自分の持つそのスキル応用して魔界からの精霊召喚を試みた。


 それは見事に成功した、だがその相手は精霊ではなく、魔界の住人でありアンデットを統べる魔界の王の一人、ネクロロードだった。


 ネクロロードはアムタリアの存在を知った時から興味を持ち、征服しようと考えていた。

 しかし強大な力を持つネクロロードには歪は小さすぎで通る事は出来ず、意図的にアンデットを送って征服を試みていた。


 だが、やはり知能を持たないアンデットでは難しく、どうにかして自らがアムタリアに行けないものかと考えていた矢先にアムタリアから呼びかけが聞こえて来た。

 ネクロロードは破壊の欲求に飢えている男の思想を気に入ると、精霊と同じ性質の霊体となることで、精霊召喚者であり依り代としての器にも適していた男に憑依してアムタリアへと現れた。

 そしてその日を境にネクロロードによるアムタリア侵攻が始まった。

 

 ネクロロードはアンデットを使い、世界中にある町や村を襲わせていた。

 その脅威はエレメンタルランドにも押し寄せ、当時火の国の王子だったレオパルドも、他の属性の属性民族たちと共に迫りくるアンデットを迎撃した。


 元々戦闘能力は高い属性民族(エレメンタラー)達は迫りくるアンデット達をことごとく撃退していったが、一向に衰えないアンデットの侵攻に徐々に追い詰められていった。


 そしてそんな時だった、このエレメンタルランドに五人の人間が訪れてきたのは。

 やってきたのは人族とエルフが二人、そして竜人族と言う何とも不思議な組み合わせの集団で五人はこの世界を蝕むアンデット達から世界を救うため、元凶を探す旅をしていた。


 見慣れぬ種族のパーティーに初めこそ怪しんだレオパルドだったが、このアンデットが襲い来る現状打破のためと、世界を救わんと種族の壁を越え立ち集った五人に興味を惹かれたレオパルドは周囲の反対を押し切り、この五人と旅に出た。


 それからレオパルドは世界を回った、リーダーである剣士エドワードと変人学者セナス、エルフの夫婦テオとミトラに竜人族王国騎士団長トルク、このバラエティー豊富な面子に旅先で新しく出会った妖精の王女リリアナとひねくれたオーマ族の天才魔術師ヴァルバランを加わり、八人で世界を蝕むアンデット達の真実を探った。


 そして旅からが一年が経過したころ、レオパルドたちはとうとうこのアンデットの元凶であるネクロロードの存在を知り、対峙することとなった。

 ネクロロードは強大であったが八人は死闘の末、ついに打ち勝つことが出来た。


 これによりアンデットの脅威は去り、世界は平和に戻りつつあった。

 こうして世界を救った七人の英雄達はその後それぞれ道を歩み、レオパルドも火の国に戻っていった。


 ……しかし、その平和も長くは続かなかった。


 戦いはまだ終わっていなかった、それからおよそ一年後、再びネクロロードが姿を現した。

 その事を一早く知った仲間の一人、学者セナスの呼びかけにより、八人は再び集まり旅に出た。

 だが、なんの打開策のないままネクロロードに挑んでも再び繰り返しと考えて八人は確実にネクロロードを倒す方法を見つけるため、セナスの提案により全知全能と呼ばれていた伝説の神鳥、レアードを探して旅をした。


 全知全能、不老不死、神の使者などなど様々な異名を持ち、存在自体が創作である可能性のほうが高いレアードを探すなど無謀にも思えたが、八人はそのわずかな希望を求め、レアードの伝承を辿りながら旅をし、そしてレアードを出会うことに成功した。

 自らを世界の調停者と名乗ったレアードは、世界を救いたいと願う八人の思いに応じ、伝承通りの知識で魔界の事やアンデット、ネクロロードの真実を教えた。


 八人は知った、以前倒したのは霊体だったネクロロードと依り代だった人間のみで、ネクロロードの本体である身体自体はは魔界で傷一つついていなかった事を。


 リーダーであったエドワードはレアードに打開策を聞いたが、その方法を聞いた七人は硬直した。

 その方法は依り代に適した人間が自分の中にネクロロードを封じ込めその人間事葬るという方法でその方法が出来たのは、このパーティーの最年少で若干十四歳のオーマ族のヴァルバランだった。


 他に方法のない事を知ったヴァルバランはその方法を承諾したが、納得がいかない七人は、他に方法がないのか考えようとしたが考えるには時間が少なく、ネクロロードの脅威は再び世界に迫りつつあった。


 意を決した七人は再びネクロロードと相まみえた。

 七人が強くなったのか、選んだ依り代が悪かったのか、前回よりも苦戦することなくネクロロードを打ち破ると、ヴァルバランは予定通り自らの中にネクロロードを取り込んだ。


 しかしその瞬間、突如ヴァルバランの中の見えない何かがあふれ出した。

 それはネクロクロードなんかよりも遥かに危険なもので、それを感じたレアードはすぐに六人をレミナス山へと避難させた。


 遥か雲の上、地上が見えないまさに神が住む場所にふさわしい場所に移動させられた七人はそこでレアードからヴァルバランが魔王と化した事を感じ取り、すぐにでも倒さなければ世界が滅ぶことを知らされた。


 幸いまだ変化が起きてから浅かったことで力が制御できなかった事と、ヴァルバランの意識があった事でエドワード達はレアードの力も借りて最小限の被害で魔王と化したヴァルバランを倒した。


 こうして世界の危機を救った七人は真の英雄となって世界に讃えられた。

 そして今回の一件を後世に残そうとした、セナスはネクロロードからヴァルバランの魔王化まで旅で知った全てのものを伝記として書き残した。

 しかし、魔界とアンデットの存在、異種族のパーティーそして、英雄の魔王化など物語とするには余りにも世界に不都合が多かったこの話は、時が経つにつれ世界に都合のいい物語へと書き換えられていった。


 英雄物語『ヴァルハラの大決戦』……それは、一人の英雄が自らの命を犠牲にし、世界を救おうとしたことから生まれた悲劇だった。



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