始幕 増える謎の原理
時は静かに過ぎてゆく、それは記憶も同様に水のように頭の中から消えてゆく。だが唯一方法がある、それは堰を造り記憶を留めることだ。
これは行方を晦ました作者が秘密裏に作りあげ、日本の闇そして闇で犠牲になった人間の核心に踏み込み表現を変えながら完成した。貴方はこの異様さをどう捉える?
アナウンサー「では続いてのニュースです。家族にサークル活動で遠出すると言い残し、5人が失踪した事件が今年で2年が経ちます。5人の情報提供を京都府警は現在も求めています。改めまして現段階で判明している特徴は、大栃大学の当時2回生が活動していた”都市伝説”サークルの人たちです。女藤翔真さん(20歳)、蓮川冬真さん(20歳)、赤舘千賀さん(20歳)、産葉川芽維さん(20歳)、夫婦川翠蓮さん(20歳)の5人が行方不明となっています。5人はいつものように情報収集し、気になった場所へ足を運び簡単な調査や現地の人に質問し活動報告をサークルのホームページに掲載していたということです。そこには京都府のある村に行くという投稿を最後に更新は途絶えています。果たして5人はどこへ消えたのか、はたまた事件に巻き込まれたのか、京都府警察の捜査が現在も続いています」
ブチン(テレビを切る音)
?「この事件妙だと思わねぇかぁ?いくら行方不明したとしても大学生だぞぉ?そんな簡単に行方くらますかぁ?そう思うよな、威嚇」
威嚇「まあな。俺もあれは妙だと思うがなにか近付いてはいけない匂いがするのも事実だ。それは伊福も気付いてるだろ?」
伊福「あぁ、だがそうも言ってられん。あの5人はそれを知らず間近で体験したんだからな。俺らがそれだけで怖気づくのはちげぇよなぁ」
威嚇「まさにだ。俺たちもそのある村を早いとこ見つけねぇとな」
そう会話しているのは、現代のシャーロック・ホームズとワトソンの関係だと評されている探偵鬼瓦厳嚇とその相棒刑部伊福である。2人とも小学校の頃から幼馴染であり数々の難事件や失踪事件等を解決に導いた、生ける伝説とも呼ぶ者もいるが本人たちはそう呼ばれるのを毛嫌いしている。そして今、この2人は行方不明事件史上謎と云われている2年前の失踪事件、通称”神隠しの5人”とSNSで動画にして投稿している者もいるほど有名な事件に挑もうとしているのだ。そしてあるSNSで活動しているインフルエンサーの2人は、これは伝承をまとめた本にヒントがあるのでは?と考察しているのだが真相は闇の中だ。
鬼瓦「刑部、このグループが動画内で言っている伝承の本をどう思う?」
刑部「あ〜あれか。お前も知っといて損はねぇぞぉ」
鬼瓦「どんな内容なんだ?」
刑部「全国の伝承という本のことだ。これを書いた作者悪珠奴人はこの本に書かれている他の伝承と比較しても珍しいと作中で何回も言及していて、それに対して今話題沸騰している行方不知先生は確かに珍しいが興味本位であまり踏み込むのはよくないと警鐘を鳴らすコメントをしてるからなぁ」
鬼瓦「俺も知ってるぞ!あのミステリーホラー小説と恋愛小説を手掛けて映画も放映された有名な小説家じゃないかあ!さすが行方不知先生だ!俺も右に同じだな笑」
刑部「おいおい、行方不知先生の興味に走ってねぇか〜?それは後に置いておこうぜぇ」
鬼瓦「すまんすまん笑娘が恋愛小説の映画版が大好きでなぁ笑再三観させられたから俺まで好きになっちまってよぉ笑」
刑部「けっ!なんでこうなるのっ!ってか笑惚気話は居酒屋で聞くぜぇ。そんなことより、全国の伝承って本に書かれている内容言っていいかぁ?」
鬼瓦「おう笑頼む笑欽ちゃんが出てきたなぁ笑」
そして刑部が本に記載されている内容を読み上げた。
刑部「とまぁ、こんな内容だぁ。いつ読んでも奇妙としか言いようがねぇ」
鬼瓦「確かにな。なぁこの会話の方言どこか知ってっか?」
刑部「んやぁ俺も分かんねぇなぁ、5人のホームページには京都に行くって書いてあるから京都にあるのかもなあ」
鬼瓦「京都かぁ、古都約1100年の歴史があるからなぁ〜なにがあっても変じゃないな」
刑部「まぁな。京都つっても広いぜぇ〜?舞鶴とかだったら俺はやだね笑途方もねぇよぉ笑」
鬼瓦「おいおい、そんなんでへこたれるのか?全くワトソンの名が泣くぜ笑」
刑部「おい!それは言わねぇ約束だろぉ」
鬼瓦「だったら文句言わねぇでやるしかねぇじゃねぇかぁ」
すると事務所の戸を叩く音がした。
コンコン(戸を叩く音)
鬼瓦「お客らしい。はぁい!お入り下さい!」
?「あのぉ、ここが探偵事務所でしょうかぁ?依頼というかまず話だけでも聞いてくれませんか?」
刑部「はいその通りでございます。あ、左様でございますか!さっ、どうぞ!お掛け下さい!」
?「単刀直入に言います。わたくし、夫婦川翠蓮の母夜咲と言います」
なんと訪ね人は行方不明者の1人夫婦川翠蓮の母親夜咲だったのだ。夜咲の口からなにを語られるのか。
〜また犠牲者が増えることは控えてもらいたいが、私は口を噤む(つぐむ)としよう〜
ブフッ(コーヒーを飲んでいる最中に吹き出した)
鬼瓦「ほ、ホンマですか…?!あの翠蓮さんのお母様なのでしたかぁ」
夜咲「はい、そうです」
鬼瓦「では詳しくお話して頂いてもよろしいですか?」
夜咲「はい。まず都市伝説サークルのことを話しますが、都市伝説サークルのどこか行くときの旅費等はわたくしたちが負担していました。と言いますのも、ものすごく良い子たちで幼稚園からの幼馴染だしわたくしや旦那も大好きで笑それで好意で出してたんです。今回の京都に行くときも翠蓮の御付きが運転する車で行ったんです」
刑部「そうでしたかぁ。前日でも当日でも構いませんが、なにか疑問に思うことやいつもと違うということはありませんでしたか?」
夜咲「はいありました。まず京都に行く理由は本に書かれていて、そしてそこに出てくる方言が千賀くんのお婆様の所だったらしく、すごく喜びながら久しぶりに会うから楽しみって言ってたんですけど……」
鬼瓦「そうでしたか…辛いのに話して頂いて有難う御座います。失礼ですが京都のどこか聞いてませんか?」
夜咲「…えっと〜確か、くがたち村?だったようなぁ。私もあまり詳しくないし、珍しいなぁって覚えてただけなんです」
刑部「貴重なお話有難う御座います。失礼ですがそのとき使われた車は残ってたりしないんですか?」
夜咲「はいありません。その行方不明当日のときも御付きが運転する車で行ったんですが、その御付きも遺体で発見されたので車も現地にあるのかないのか分かりません。あでも、京都に行ったとき何時間か経った後に帰ってきました。もしかしたらその車だったらなにか証拠が残ってるかもしれません。あのぉ、捜して頂けませんか?お金はいくらでも出します……なのでどうか…娘とお友達を見つけてあげてほしいんです…」
鬼瓦「お任せ下さい。それと、依頼料は通常承っている額で結構です。私どもはぼったくったり致しませんので。では後日、その車がある所へ行っても宜しいでしょうか?」
夜咲「有難う御座います…はい、後日私たちの家に来て頂ければ…では今日はこの辺で失礼致します…またお話しさせて頂きます…」
トボトボと歩いている夜咲の後ろ姿は、おそらくここへ来る前にも泣いていたのだろう。哀しい背がそれを物語っている。
刑部「こりゃあ豊作だなぁ!こんなに穫れていいのかぁ?笑罰が当たらねぇよなぁ」
鬼瓦「確かになぁ。まさか夫婦川さんの母親が来るとは思ってもみなかった。それになんという村かも判明し、しかも赤舘さんの実家だということも分かった。こんなにいっぱい分かるとは」
刑部「被害者の人たちが見つけてほしくてそうさせたのかもなぁ。尚の事早く見つけねぇとな、いつ詳しく聞きに現地へ行くんだぁ?」
鬼瓦「う〜む、そのことに関してだが五分五分だな。俺たち2人だけでは心もとない。連れて行くならもう1人欲しいなぁ」
何故今になって夫婦川翠蓮の母親は告白しようとしたのか。事態がゆっくり動き始め、止まっていた軸が少しずつ動き始める。それは救いの軸か破滅の軸か……
刑部「もう1人ぃ?おいまさか、アイツを呼ぶんじゃねぇだろうなぁ〜!」
鬼瓦「あぁ、そのまさかだ!」
刑部「冗談はよしこさんだぜぇ!意味文子ってかぁ?いい加減にしてくれよ〜、俺はアイツ苦手なんだ」
鬼瓦「そんなこと言ったってなぁ、アイツの実力は確かだ。それに同じ幼馴染だろ笑もう慣れろ笑
じゃあ今から呼ぶぞ」
刑部の反対を押し切りもう1人を呼んだ。そして30分ほど経った後、ドアをノックする音が聞こえた。
?「来たぞぉ!!威嚇!伊福!久しいなぁあ!」
刑部「相変わらずうるせぇ…全く、なにが悲しくてこいつをと…」
鬼瓦「よく来てくれたな、祓櫛」
祓櫛「なぁに!威嚇に呼ばれちゃあ来なきゃだろぉ!」
刑部「断れよぉ、ったくよ〜」
祓櫛「おめぇはいつまでもうっせえな!慣れろ!」
刑部「まだ慣れねぇんだよ!」
鬼瓦と刑部の幼馴染で、今は由緒正しき大麻鉾奉神宮第57代目宮司の祓櫛神楽である。大勢の人たちを祓いそして誰も近寄らず、良い氣が失われ近寄った者は呪い殺すほどに変貌してしまった元神社を完全に祓い復興した、謂わば正真正銘の祓い師なのだ。そしてその祓櫛が2人と共に2年前に起きた未解決事件を”祓う”ため馳せ参じた。
祓櫛「で?一体俺と一緒に何しようってんだ」
刑部「おめぇも知ってるだろうが、2年前に行方不明になった5人の大学生を見つけるため俺たちは情報収集し現場に行こうって感じだ」
祓櫛「あぁ、あの事件か。2人の目的は分かった。で、今どの段階にまできてるんだ?」
鬼瓦「その事だが、実は神楽を呼ぶ数十分前にある訪問客が来た」
祓櫛「ある訪問客?」
刑部「夫婦川翠蓮さんの母親が来たんだ」
祓櫛「…!?それは本当なのか!まさか…」
鬼瓦「ん?なんだその反応は。驚かないのか?」
祓櫛「実はな、俺の所には産葉川芽依さんの父親
産葉川深緑さんが来てなぁ、娘を捜すのが困難でも祓うことは出来ないのか?と相談にきたんだ」
刑部「なんて偶然なんだよ、鳥肌が立っちまった。みんな一斉に動いたってのか?それだとなんで今まで沈黙し行動に移さなかったんだ…?」
鬼瓦「まぁ待て、まだ一斉に動いたり沈黙で行動に移さなかったと断定するにはまだ早い。そして早とちりだぞ伊福。勝手な妄想は捜査に支障が出るぞ?気を付けろ」
刑部「あぁそうだな」
祓櫛「そして、俺は出来ないことはないと言ったんだがそれを聞いてなのかよく分からんが少しの沈黙の後また後日来るとだけ言い帰って行ったんだ。普通なら今すぐに頼むと願い出ると思ってたが、誰かに口封じされてるのかもしくはなにか別の理由があるのか」
鬼瓦「それは妙だなぁ、夫婦川さんの母親もまた後日来ると言って帰って行ったんだ。なにか関係してるのか?」
刑部「2人だけだが、訪問客は決まって後日に来ると言う。何故今じゃダメなんだ…?これは何か原因があるんじゃねぇのか?威嚇」
鬼瓦「う〜む…その可能性は無きにしもあらずだ。他の親御さんも動いてるのかどうか」
そう話していると、ドアをノックする音が聞こえた。3人はビクンとし心を落ち着かせ客を招き入れた。
?「失礼致します。まだ開いているでしょうか?」
刑部「えぇまだ終了の時間ではないのでどうぞ」
?「有難う御座います…」
40後半の見える男性は、少し暗く落ち込みそして目にくまが出来ている。おそらく睡眠不足なのだろう。
鬼瓦「今回はどういったことで参られたのでしょうか?ゆっくりで構いません、ご自身のタイミングでよいのでお聞かせ下さい」
?「はい…まず僕は蓮川冬真の父親蓮川文月と申します」
3人「…!?」
刑部小声「おいおい」
祓櫛〃「まさか…」
鬼瓦「そうでしたか、ここに良く来て下さいました」
文月「今回ここへ来たのは理由があります。僕の息子冬真の行方を知りたいことなんです…そりゃあ、手がかりになるものや有力な証言を持って来たとかそんなんではないんです…誠に勝手なことを依頼するのは心苦しいんですが…冬真を捜してほしいんです…お願いします…」
刑部「まず当時の話を聞いてもよろしいですか?」
文月「はい。あの日冬真はなにか調べものをしていたと思います。調べものをしているときは必ずどこかへ行く前の日なんですよ。その日はより調べていたと思います。一緒に夜ご飯を食べるとき降りてきて、今回の所は他とは違うんだ。俺の好きな作者が書いた本の題材が友達のおじいちゃんが住んでいる村がモデルみたいらしいんだよ!と嬉しそうに話していました。あの子なりに喜んで話をしているときは心配もありますがもう大学生です。自分の身は自分で守れる子に育っているからそれほど心配はしなかったんです。ですが…」
詳しく述べていた文月の口が止まる。聞いている3人は沈黙をジッと待った。
文月「ですが…帰ってきたときは違ったんです…
僕たちの顔を見るなり、あそこは気味の悪い所だあんなに命が危ないと思ったことはないとゆっくりそして少し震えながら話していました。僕たちは大丈夫か?無事に帰って来れたんだ。それだけでも僕たちは嬉しいし冬真も安心しろと言ったんです。そしたら、いやまた俺たちはそこへ行くんだと言ったんです。理由は分かりませんでした。ただ、なにか胸騒ぎがすると思い僕は冬真に」
そう言いかけたとき、文月は黙り込んだ。
鬼瓦「…?文月さん?大丈夫ですか?」
文月「…………」
刑部「文月さん!どうしたんですかぁ!」
文月「…………」
刑部小声「おい神楽。おめぇから見てなにも違和感ねぇか?」
祓櫛「ねぇな。ただ、なにか言いたげだぞ」
文月「…後日来ていいでしょうか?」
鬼瓦「無理に引き留めたりしません。文月さんが後日であれば話せると思ったのでしたら後日で構いません」
文月「…ではまた後日」
急に話し出さなくなり沈黙が続いたと思うと、やはり後日話させてもらうと言い、ゆっくりの足取りで事務所を後にし帰って行った。
祓櫛「一体なにから話せばいいんだ。頭が混乱して訳が分からねぇ」
刑部「あぁ確かにな。だがなんで話している途中で黙りこむんだ…?それに続きの言葉が気になるなぁ、『僕は冬真に』の後なにを言おうとしてたんだぁ…?どうした威嚇」
鬼瓦「それも重要なことだが、それよりも俺が気になったのは何故ここが探偵事務所だと夫婦川さんと蓮川さんの親は分かってたんだ?あとやはり後日ってのが気になる。黙り込んでそれを言う前なにか言いたげな感じだった。一体文月さんは何を俺たちに伝えようとしていたんだ…」
3人は今目の前で起きた出来事をお互い質問するように言い合いながら情報整理していく。そしてようやく情報の整理が完了した。
鬼瓦「まず、夫婦川さんと蓮川さんの親はここが探偵事務所だと分かって訪問しお互い子どもを見つけてほしいと依頼するが話をした後は必ず後日と言い帰る。そして文月さんは、何か俺たちに伝えようとしていた。当日に全て言わないのは何者から話すなと釘を刺されているのかはたまたただ単に、全て話すにはまだ抵抗があるからなのか。他に冬真さんは帰ってきたとき、くがたち村のことをあそこは気味が悪く命の危険を感じる村だと言った。でもまた行かなくてはいけない、何故行かないといけない理由があったのか。5人全員が帰らなくてはという同じ気持ちであったのかどうか。整理しても情報が多いなぁ」
刑部「やっぱり妙だしなんか引っかかるよなぁ。
なんで戻らないといけなかったんだぁ?それに運転手はなんで止めなかった?そしてなにより、夫婦川さんの両親はこの事実を最初から知っていたのか…?」
祓櫛「ん?なんでだ?そりゃあ知ってただろ」
刑部「おめぇは夫婦川さんのときいなかったから知らねぇだろうが、夫婦川さんはこのことを俺たちに言ってないんだ」
祓櫛「もしかしたら気持ちがいっぱいになって言えなかったかもだろ?」
刑部「それもあるかもしんねぇが俺にはそうは見えなかった。もしかすると今でも知らねぇんじゃ
ねぇのか?突然行方不明になったと思ったらニュースを観たら実はあの後他の4人も行方不明になってたと知ったんじゃねぇのかなぁ。威嚇はどう思う?」
3人が疑問に思うのも無理はない。何故ならこれから待ち受ける事全てが点と点が繋がり、そして驚愕な内容を識ることになるのだから…無事に5人を見つけることは出来るのか…その答えを知っているのは神だけなのかもしれない、、、
〜始幕『増える謎の原理』〜終読




