↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
66/66

第66話:極秘の婚礼予行演習!? 元暗殺者たちが織りなす恐怖のウェディング・リハーサル

勘違い過保護ラブコメ、第66話をお届けします!

前回の「ご近所挨拶における恐怖の朝貢の儀式(おばちゃん気絶事件)」の余波が冷めやらぬ中、ライルが平穏な睡眠を求めて床についた夜――街と自宅の庭を舞台に、さらなる恐怖の狂想曲が幕を開ける!

命を救われた(?)元暗殺者たちが、忠誠心と恐怖のあまり暴走の果てに辿り着いた「極秘の婚礼リハーサル」の正体とは――!?

笑いと絶叫、そして胃痛が限界突破する第66話のスタートです!

それでは、第66話のスタートです!

辺境の街、夜更け。静寂に包まれたライルの自宅。

「……ふぅ。今日も今日とて、胃が痛い一日だったな」

ライル・フォン・ヴェルナーは、自分の部屋のベッドの上で天井を見上げながら、深い、あまりにも深い溜息を吐き出していた。

昼間はご近所への挨拶回りで平和なクッキー手渡しを試みたものの、背後の最強兄妹と物騒な一団のせいで、お隣のおばちゃんを腰抜けさせてしまった。その精神的疲労と恐怖の余韻で、いまだに心臓の鼓動が正常に戻っていない。

「もう何も考えない。寝よう。明日になれば、少しはマシな日常が待っているはずだ……」

自らにそう言い聞かせ、ライルは目を閉じて眠りの世界へと落ちていこうとした――その時だった。

ザッ、ザッ、ザッ……。

「……ん?」

窓の外、静まり返ったはずの自宅の庭から、何やら規則正しい足音と、不気味に低い男の声が聞こえてきた。

気のせいかと思ったライルだったが、足音は次第にはっきりと大きくなり、さらには厳粛な儀式でも行っているかのような神妙なセリフが聞こえてくる。

『――これより、暗黒帝国皇帝陛下と、我が最高司令官殿の聖戦(ご成婚)に向けた、第三十七回・極秘披露宴リハーサルを執り行う! 各員、持ち場を死守せよ!』

『はっ! 新郎役の特製マネキン、配置についております!』

『神父役の私語は一切禁止だ。誓いの言葉のトーンをもう少し厳かにしろ!』

(……は……? なんだ今の声……?)

背筋に冷たいものが走った。ライルは嫌な予感を全身に覚えながらベッドから起き上がり、そっと忍び足で窓辺に近づき、カーテンを数ミリだけめくって外の様子を覗き見た。

月明かりに照らされた自宅の庭――そこには、目を疑うような地獄絵図が広がっていた。

昼間は普通の家庭菜園や草むしりが行われているはずの庭に、黒装束をまとった元暗殺者たちが十数人、一糸乱れぬ整列をしていた。

その中央には、なぜかシルヴィアの顔写真(凛々しいフルアーマー姿)が雑コラのように貼り付けられた等身大マネキンと、ライルの顔写真を貼り付けられた別のマネキンが並んで立っている。

そして、その前では元暗殺者のボスが神父のような神妙な面持ちで分厚い台本をめくり、周囲の部下たちが来賓客のつもりとして直立不動で厳戒態勢を敷いていたのだ。

(な、なんだあれは……!? なんで俺とシルヴィアのマネキンが庭に並べられて結婚式のリハーサルみたいなことをやってんだ……!? ホラーかよ!!)

ライルはあまりの光景に、喉から心臓が飛び出しそうになった。

『――では、これより新郎新婦の入場とする! 拍手!』

ボスが低い声でそう号令をかけると、周囲の元暗殺者たちが「パチパチパチ……」と、死神の葬式のような恐ろしい真顔で無表情のまま拍手をした。

『おい、もっと祝福の笑みを浮かべろ! 我が君の門出だぞ!』

『しかしリーダー、笑みの作り方を誤ると全盛期の殺意の顔になって子供が泣くと言われたトラウマが……』

『なら心の中で泣け! 次、指輪の交換!』

庭の隅で繰り広げられる、元暗殺者たちによるガチすぎる結婚式のリハーサル。

彼らは数日前、シルヴィアから「我が君との結婚式の邪魔をする者は、たとえ夢の中であっても一族皆殺しにする」と冗談半分(本人たちは本気)で脅されて以来、「いついかなる時、王国全土を巻き込むご成婚の儀が急遽開催されても完璧に対応できるように、夜な夜な極秘の予行演習を重ねなければならない!」という壮大な使命感に囚われていたのである。

(お前らなァァァァッ!! 勝手に俺の知らないところで俺の結婚式のリハーサルを何十回もやるな!! 気色悪すぎるだろ!!)

ライルは窓ガラスを突き破って飛び出しそうになる衝動を必死に抑え込みながら、頭を抱えてガタガタと震えた。

しかし、彼らの暴走はそれだけでは終わらなかった。

『――最後に、新郎より、最愛の花嫁へ永遠の愛を誓う誓いのキスを――!』

ボスがそう叫んだ瞬間、新郎役のライルマネキンが、新婦役のシルヴィアマネキンに向けてガクガクと機械的に押し倒されるように傾けられた。

『よし、完璧だ。この角度ならば、我が君の尊い唇が完璧に――』

「――って、何を勝手に俺の人形にセクハラさせてんだぁぁぁぁっ!!!」

ついに理性のタンスの角に足の小指を強打したような激痛を感じたライルは、我慢の限界を迎えて窓を全開に開け放ち、夜空に向かって絶叫した。

その声に、庭の元暗殺者たちが一瞬で硬直した。

全員が訓練された動きで一斉に窓際のライルを振り返り、サッと完璧な直立不動の敬礼(忠誠のポーズ)を決めた。

『な……っ!? 我が君ご本人であられる……!? しかも、この深夜の密会をあえて私たちのリハーサル会場の特等席からご観覧になられていたとは……! なんという御慈悲、なんという完璧な抜き打ち監査官プレイ……っ!!』

『さすが我が君……! 私たちのリハーサルに微塵の隙や甘えがないか、自らの目で直接お確かめになられていたのだ……!』

(違うわ!! 泥棒かと思って覗いたらお前らが俺のマネキンで結婚式ごっこしてたからキレたんだよ!!)

ライルが顔を真っ青にしながら否定しようとした、その時だった。

ガシャアァァァンッ!!! と、家の中の廊下側から凄まじい重金属の音が響き渡った。

「――我が君の婚礼の儀が執り行われていると聞きつけて、馳せ参じましたわ!!」

轟音とともに廊下の窓をブチ破って現れたのは、夜中にもかかわらずピカピカに磨き上げられた神銀ミスリルのフルプレートアーマーを完全装着し、両手に国家予算級の大剣を構えたシルヴィアだった。

彼女は興奮のあまり紫紺の瞳をハートマークに煌めかせ、荒い息を吐きながら庭へと飛び出してきたのだ。

「なんと……! 庭に私と我が君のマネキンが並べられ、美しき誓いのキスが交わされようとしていたなんて……! これは、我が君が私に贈ってくださったサプライズの『予行演習』に違いありませんわ……っ!」

「違う! 違うぞシルヴィア! 俺は何も知らん! あの不審者たちが勝手に庭で気味の悪い人形遊びをしてただけだ!」

ライルが必死に窓から身を乗り出して叫ぶが、シルヴィアの脳内フィルターには一切届かない。彼女は胸に手を当て、頬を真っ赤に染めながらうっとりと呟いた。

「ご謙遜なさらないでくださいませ……! あらかじめこのような完璧なリハーサルを部下たちに極秘裏に命じ、私を驚かせようとなさるなんて……我が君のあまりのロマンチックさと深い愛に、私の心臓が持ちませんわ……!」

『おお……! さすが我が君、最高のサプライズ演出に花嫁殿も完璧にメロメロでございます! 作戦は大成功だ!』と、なぜか元暗殺者たちが勝手に感動して「うおぉぉん!」と男泣きし始める。

(――もうだめだ……この街の人間は全員脳の配線がショートしちまってる……!)

ライルはガクガクと膝を震わせ、夜空を仰いで人生最大の絶叫を絞り出した。

「誰か助けてくれぇぇぇーーっ!! 俺はまだ結婚したくないんだぁぁぁぁっ!!!」

夜の静寂を切り裂くライルの悲痛な絶叫と、それを温かい目(殺意ゼロの愛の目)で見守る最強騎士団長、そして感動の涙を流す元暗殺者たちの合唱が、暗黒帝国(※辺境の街)の夜空にいつまでも木霊し続けたのだった。

もちろん、ライルの平穏な独身生活を守る戦いは、明日も絶望的に続いていく――。

最後までお読みいただき、本当にありがとうございます!

第66話、「極秘の婚礼予行演習!? 元暗殺者たちが織りなす恐怖のウェディング・リハーサル」いかがでしたでしょうか!

平穏な睡眠を求めていたライルが目撃したのは、命を救われた元暗殺者たちが深夜の庭で繰り広げる「自分とシルヴィアのマネキンを使ったガチすぎる結婚式のリハーサル」という最恐のホラー空間でした!

さらにそれをシルヴィアが「我が君からの最高のサプライズ・プロポーズの予行演習」と大誤解して暴走し、ライルの絶叫が夜空に響き渡るというドタバタのラブコメ&ホラー回をお届けしました。

次なる第67話では、ライルにどんなさらなる胃痛の試練が待ち受けているのか……!?

次回の第67話でお会いしましょう!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。