第7章 森の魔獣退治で実践
3日後の夕方。
村に鐘が鳴り響いた。
緊急の合図。
リオンは家の窓から外を見た。
村人が走っている。
悲鳴が聞こえる。
父が家に飛び込んできた。
「黒狼の群れだ! エレナ、リオンを連れて家の奥に隠れろ!」
父が剣を手に取る。
母がリオンの手を引く。
「来て、リオン!」
だがリオンは動かなかった。
窓の外を見る。
黒狼が3匹、村の入口に現れている。
大きい。普通の狼の倍はある。
牙が月光を反射している。
村人が槍を構えるが、怯えている。
父が外に出ようとする。
「リオン、家に隠れろ!」
リオンは首を横に振った。
「俺が行く」
父が振り返る。「何を言ってる! 危険だ!」
リオンは父を見た。
真剣な目。
「俺なら……倒せる」
父が戸惑う。
「リオン……」
母が叫ぶ。「ダメよ! あなたはまだ子供なのよ!」
リオンは走り出した。
家を飛び出す。
「リオン!」
父と母の声が後ろで響く。
だが止まらない。
村の入口に向かう。
黒狼が村人に襲いかかろうとしている。
リオンは立ち止まった。
深呼吸。
『できる。俺にはできる』
心の中で確認する。
戦士アレク。
今、お前の力が必要だ。
リオンは叫んだ。
「戦え!」
視界が変わる。
世界が鮮明になる。
筋肉が緊張する。
戦士アレクが降臨した。
リオンの目が鋭くなる。
黒狼を見る。
「敵だな」
低い声。
アレクが地面から木の枝を拾う。
太い枝。剣の代わりになる。
構える。
黒狼の1匹がリオンに気づいた。
唸る。
襲いかかる。
アレクが枝を振るう。
黒狼の鼻先を打つ。
狼が怯む。
アレクが踏み込む。
枝を突き出す。
狼の目を狙う。
当たる。
狼が悲鳴を上げて後退する。
2匹目が横から襲う。
アレクが回避する。
3歳児の体とは思えない動き。
枝を振り上げる。
狼の首を狙う。
打ち下ろす。
鈍い音。
狼が倒れる。
3匹目が飛びかかる。
アレクが枝を横に薙ぐ。
狼の腹を打つ。
狼が吹き飛ぶ。
地面に叩きつけられる。
動かない。
1匹目の狼が立ち上がる。
目を負傷しているが、まだ戦える。
唸りながら襲いかかる。
アレクが枝を構える。
狼が飛びかかる。
アレクが枝を突き出す。
狼の喉を貫く。
狼が倒れる。
痙攣して、動かなくなる。
3匹全て倒した。
村人が唖然としている。
「あの子が……」
「3匹も……」
「化け物だ……」
リオンの内側で、自我が叫ぶ。
『やった! アレク、ありがとう!』
だがアレクは止まらない。
枝を握ったまま、村人に向かって歩き出す。
「まだ敵がいる……」
『違う! 待て! 村人は敵じゃない!』
リオンは必死で叫ぶ。
だがアレクは聞かない。
「戦場に敵がいる……倒す……」
村人が後退する。
「来るな!」
「助けて!」
父が前に出る。
「リオン! やめろ!」
アレクが父を見る。
「敵か……」
枝を構える。
『やめろ! 父さんだ! 攻撃するな!』
リオンは全力で抵抗する。
アレクと綱引き。
体が震える。
一歩、踏み出す。
『戻れ! 今すぐ戻れ!』
アレクが止まった。
「何だ……」
『お前の出番は終わった! 戻れ!』
リオンは限界を超えて叫ぶ。
「戻れえええ!」
声が村に響く。
アレクが引いていく。
「くそ……まだ戦えるのに……」
リオンの目が元に戻る。
視界がぼやける。
体から力が抜ける。
枝を落とす。
膝が折れる。
倒れる。
地面に頬をつける。
「はあ……はあ……」
息が切れる。
意識が遠のく。
父が駆け寄る声が聞こえる。
「リオン!」
母の声も。
「リオン! しっかりして!」
村人の囁き。
「あの子、やっぱり……」
「人間じゃない……」
「怖い……」
リオンは目を閉じた。
暗闇が迫る。
『すまない……また……暴走した……』
心の中で謝る。
そして、意識を失った。
目を覚ました時、ベッドにいた。
天井が見える。
自分の部屋。
体が重い。
頭がぼんやりする。
横を向くと、母が椅子に座っている。
目が合う。
母が微笑む。
でも、その笑顔は少し強張っている。
「起きたのね」
リオンは口を開いた。
「母さん……村の人は……」
母が首を横に振る。
「怪我人はいないわ。黒狼も倒した。あなたのおかげよ」
リオンは安堵した。
「よかった……」
でも、母の表情は晴れない。
「リオン……村の人たちが……」
言葉が続かない。
リオンはわかった。
「怖がってるんだね」
母が頷く。
「少しだけ……でも、時間が経てば……」
嘘だ。
リオンにはわかる。
村人は俺を化け物だと思っている。
3歳児が黒狼を倒す。
普通じゃない。
異常だ。
リオンは天井を見た。
「仕方ないよ」
母が手を握る。
「大丈夫。お母さんとお父さんは、あなたの味方よ」
リオンは母の手を握り返した。
「ありがとう」
でも、心の中では思う。
『俺は……このままでいいのか……』
制御法は見つけた。
でも、完璧じゃない。
暴走する。
人を傷つけそうになる。
『もっと……もっと制御しないと……』
リオンは決意を新たにした。
次は暴走しない。
絶対に。
そのために、訓練を続ける。
窓の外、月が昇っている。
静かな夜。
でも、リオンの心は静かじゃなかった。




