第6章 キーワード召喚の発見
翌朝。
リオンは村を出て、森に向かった。
誰もいない場所。
実験をするなら、ここがいい。
木々に囲まれた空き地。
リオンは立ち止まった。
深呼吸。
「試してみよう」
ノートに書いた仮説。
キーワードで人格を呼び出せるかもしれない。
リオンは目を閉じた。
心の中で念じる。
『戦士よ、出てこい』
何も起きない。
目を開ける。
体に変化はない。
「ダメか……」
次の方法。
声に出してみる。
「戦士よ、出てこい!」
森に声が響く。
鳥が飛び立つ。
でも、人格は出てこない。
「やっぱりダメか……」
リオンは考えた。
もっと具体的な言葉が必要かもしれない。
戦士の本質は何だ?
戦うこと。
「戦え!」
叫んだ瞬間、視界が変わった。
世界が鮮明になる。
筋肉が緊張する。
呼吸が荒くなる。
リオンの目が鋭くなる。
戦士アレクの目だ。
「これは……」
リオンの意識はまだある。
でも、体はアレクが動かしている。
アレクが周囲を見渡す。
「敵はいないか」
低い声。
リオンの口から出る。
『成功した! キーワードで呼べた!』
リオンは内心で叫ぶ。
アレクが木の枝を拾う。
剣のように構える。
素振りを始める。
速い。正確。
3歳児の体とは思えない動き。
10回素振りをして、アレクが止まった。
「敵がいないなら、俺の出番はない」
『待て! まだ実験中だ!』
だがアレクは聞かない。
勝手に引いていく。
リオンの体が元に戻る。
「あ……」
膝から力が抜ける。
倒れ込む。
草の上。
「疲れた……」
全身が重い。
召喚だけで、こんなに消耗するのか。
でも、成功した。
キーワードで呼べる。
リオンは笑った。
「できた……本当にできた……」
少し休んでから、次を試す。
商人を呼んでみよう。
商人の本質は?
取引。商売。
「商え!」
視界が変わる。
今度は計算高い目つき。
商人グレイだ。
グレイが周囲を見る。
「この森、木材が豊富だな。売れば金になる」
『出た……』
リオンは内心でため息をつく。
グレイが木に近づく。
幹を叩く。
「質もいい。伐採業者に売り込めば……」
『もういい! 戻れ!』
リオンは心の中で叫ぶ。
だがグレイは無視する。
「市場価格を計算すると……」
『戻れ! 消えろ!』
グレイが止まった。
「何だ? まだ計算が……」
『お前の出番は終わりだ! 戻れ!』
リオンは全力で念じる。
グレイがゆっくり引いていく。
「ちっ……また呼んでくれよ」
視界が元に戻る。
リオンは草の上に倒れた。
「はあ……はあ……」
息が切れる。
疲労が倍増している。
「解除法が……わからない……」
グレイを押し戻すのに、召喚以上の力を使った。
これじゃ実用的じゃない。
リオンは空を見上げた。
青空。
白い雲。
「でも……進歩だ」
少なくとも、キーワードで呼べることがわかった。
次は他の人格も試してみよう。
休憩してから。
30分後。
リオンは立ち上がった。
「次は……治療師を」
治療の本質は?
癒し。
「癒せ!」
視界が変わる。
今度は優しい目つき。
治療師アンナだ。
アンナが自分の体を診る。
「疲労が溜まっている。休息が必要ね」
『わかってる』
アンナが周囲を見る。
「薬草はないかしら」
草むらを探し始める。
リオン『もういい。戻れ』
アンナ「まだよ。治療が先」
『戻れって言ってるだろ!』
アンナが止まった。
「……わかったわ。でも無理しないでね」
引いていく。
リオンの体が元に戻る。
また疲労。
膝をつく。
「くそ……解除が難しい……」
それでも、試し続ける。
「隠れよ!」
忍者カゲロウが出る。
影に溶け込むような感覚。
「戻れ!」
押し戻す。
「燃やせ!」
魔法使いリズが出る。
手に魔力が集まる。
「戻れ!」
また押し戻す。
1時間後。
リオンは木に寄りかかっていた。
全身が鉛のように重い。
「限界……」
でも、収穫はあった。
キーワードで召喚できる。
「戦え」で戦士。
「商え」で商人。
「癒せ」で治療師。
「隠れよ」で忍者。
「燃やせ」で魔法使い。
パターンがある。
でも、解除法が安定しない。
「戻れ」で押し戻せるけど、消耗が激しい。
もっといい方法が必要だ。
リオンはノートを取り出した。
震える手で書く。
『キーワード召喚:成功』
『解除法:不安定。要改良』
『体力消耗:大。1日1回が限界』
記録する。
これが、制御への第一歩。
リオンは立ち上がった。
ふらつく。
木につかまる。
「家に……帰ろう……」
ゆっくり歩き出す。
森を抜ける。
村が見える。
リオンは微笑んだ。
「進んでる……少しずつ……」
希望が見えてきた。
制御できる日が来るかもしれない。
そう信じて。
リオンは家に向かった。




