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全員が俺だ ~6666回転生した記憶過積載者~  作者: 雨音トキ


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第39章 奴隷商人の記憶

翌日。

リオンは街を歩いていた。

仕事を探している。

金がない。

宿代も払えない。

食事もできない。

店に入る。

「仕事はないか?」

店主が見る。

リオンを。

髭は剃った。

髪は整えた。

でも服はまだ汚れている。

3週間の放浪の跡。

店主が首を横に振る。

「ない」

リオンが頭を下げる。

「お願いします」

店主が答える。

「ない。出ていけ」

リオンは出る。

次の店。

「仕事を探しています」

また断られる。

「うちは間に合ってる」

また次の店。

「何かできることを」

また断られる。

「君じゃ無理だ」

10軒。

20軒。

全て断られる。

リオンは路地に座り込んだ。

「どうすれば……」

つぶやく。

「金がない……」

その時。

心の中で声がした。

低い声。

冷たい声。

「金が欲しいなら、人を売ればいい」

リオンが驚く。

『誰だ?』

声が答える。

「奴隷商人ザックだ」

リオンが震える。

『お前は……』

記憶が蘇る。

過去生の一つ。

奴隷商人。

人を売って生きていた。

最悪の人生。

リオンが叫ぶ。

『やめろ! 出てくるな!』

ザックが笑う。

「遅い」

主導権を奪う。

目が変わる。

奴隷商人ザックの目。

冷酷な目。

打算的な目。

ザックが立ち上がる。

「さて……」

周りを見る。

「獲物を探すか」

街を歩く。

貧民街に向かう。

汚い路地。

ボロ屋。

貧しい人々。

ザックが笑う。

「ここだ」

子供を探す。

親がいない子。

一人で歩いている子。

見つけた。

少年。

10歳くらい。

痩せている。

服がボロボロ。

ザックが近づく。

「少年」

優しい声で。

少年が振り向く。

「何?」

警戒している。

ザックが微笑む。

「仕事を紹介してやる」

少年が驚く。

「仕事?」

ザックが頷く。

「ああ。食事付きだ」

少年が目を輝かせる。

「本当!?」

ザックが頷く。

「本当だ」

少年が喜ぶ。

「やります!」

ザックが手を差し出す。

「じゃあ、こっちへ」

少年が手を取る。

ザックが歩き出す。

裏路地に向かって。

リオンが心の中で叫ぶ。

『やめろ! ザック!』

ザックが答える。

「黙れ。金が必要だろ」

リオンが叫ぶ。

『こんな方法で稼ぐくらいなら、死んだ方がマシだ!』

ザックが笑う。

「そうか? お前は生きたいだろ」

リオンが黙る。

ザックが続ける。

「俺はお前の一部だ。お前の欲望の一部」

裏路地に着く。

暗い。

人がいない。

いや。

一人いる。

大柄な男。

傷のある顔。

人買い。

ザックが近づく。

「久しぶりだな」

男が笑う。

「おや、また商売か」

ザックが頷く。

「ああ」

少年を前に出す。

「この子だ」

少年が混乱する。

「え……?」

男が少年を見る。

「痩せてるな」

ザックが答える。

「でも若い。使える」

男が頷く。

「まあ、いいだろう」

懐から金貨を出す。

「10枚だ」

ザックが受け取る。

「ありがとう」

少年が叫ぶ。

「待って! 話が違う!」

男が少年を掴む。

「うるさい」

口を塞ぐ。

少年が暴れる。

でも。

男は強い。

持ち上げる。

連れて行く。

少年が泣いている。

リオンが叫ぶ。

『やめろ! 返せ!』

でも。

ザックは動かない。

ただ金貨を数えている。

「10枚。まあまあだ」

男が消える。

少年と共に。

路地の奥に。

ザックが振り返る。

「さて、次を探すか」

リオンが叫ぶ。

『ふざけるな!』

必死に主導権を奪おうとする。

『戻れ! 戻れ!』

ザックが抵抗する。

「まだだ」

でもリオンの意志が強い。

怒りが強い。

ザックが押される。

「くそ……」

主導権が移る。

目が変わる。

リオンの目に戻る。

「俺は……」

震える声。

「何をした……」

金貨を見る。

手の中。

10枚。

血の金。

「俺は……」

涙が溢れる。

「子供を……売った……」

路地の奥を見る。

少年が連れて行かれた方向。

リオンが走る。

「待て!」

路地を走る。

曲がる。

また曲がる。

でも誰もいない。

もう遅い。

リオンが立ち止まる。

「くそ!」

叫ぶ。

「くそ! くそ!」

壁を殴る。

拳が痛む。

血が出る。

でも止まらない。

また殴る。

何度も。

何度も。

拳が血まみれになる。

骨が見える。

それでも殴る。

「俺は……」

涙が止まらない。

「最低だ……」

壁に寄りかかる。

滑り落ちる。

座り込む。

「俺は……最低だ……」

繰り返す。

時間が過ぎる。

夜が来る。

リオンは動かない。

ただ座っている。

やがて立ち上がる。

宿に戻る。

部屋に入る。

ベッドに座る。

金貨を見る。

テーブルに並べる。

10枚。

光っている。

綺麗な金。

でも。

リオンには汚く見える。

「この金で……」

つぶやく。

「子供を買い戻せるか……?」

立ち上がる。

窓を開ける。

外を見る。

街は静か。

夜。

人買いはもう街を出ている。

どこに行ったのか。

わからない。

リオンは窓を閉める。

テーブルに戻る。

金貨を見る。

そして。

荷物を漁る。

ナイフを取り出す。

小さなナイフ。

鋭い刃。

リオンが握る。

「俺なんか……」

つぶやく。

「生きてる価値がない……」

刃を見る。

自分の腕を見る。

左腕。

刃を当てる。

皮膚に。

冷たい。

押す。

少し血が滲む。

「このまま……」

つぶやく。

「死ねば……」

でも止まる。

手が震える。

「でも……」

涙が溢れる。

「死んでも……償えない……」

ナイフを落とす。

床に。

カランと音がする。

リオンは泣き崩れた。

床に。

「ごめんなさい……」

小さく言う。

「ごめんなさい……」

繰り返す。

何度も。

少年に。

自分に。

全てに。

泣き続ける。

時間が過ぎる。

夜が更ける。

リオンは泣き続けた。

朝まで。

窓から朝日が差し込む。

リオンは床に倒れている。

目が赤く腫れている。

涙の跡。

立ち上がる。

鏡を見る。

最低の顔。

「俺は……」

つぶやく。

「どうすればいい……」

答えは出ない。

ただ後悔だけがある。

罪悪感だけがある。

リオンは思った。

『償う方法は……』

『あるのか……』

でも。

わからない。

少年を探すべきか。

でもどこにいるのかわからない。

リオンは窓を見た。

外。

街。

人々が歩いている。

普通の日。

でもリオンにとっては、地獄の日。

「俺は……」

つぶやく。

「生きていていいのか……」

問いかける。

自分に。

でも答えは出ない。

ただ虚しさだけが残る。

リオンは座り込んだ。

床に。

動かない。

ただ存在している。

それだけ。

長い朝が始まった。

絶望の朝が。


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