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全員が俺だ ~6666回転生した記憶過積載者~  作者: 雨音トキ


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第38章 放浪者人格の日々

修行3日目。

朝。

リオンは目を覚ました。

森の中。

木の下で寝ていた。

体が痛い。

昨日の修行の疲れ。

リオンは立ち上がろうとした。

その時。

違和感。

体が動かない。

いや。

動くけど。

意思と違う動き。

そして。

気づく。

目が変わっている。

放浪者ヴァンの目。

だるそうな目。

無気力な目。

「あー……」

ヴァンがあくびをする。

「修行?」

周りを見る。

剣が落ちている。

本が散らばっている。

「面倒だ」

立ち上がる。

「酒を飲もう」

森を出る。

街に向かう。

リオンが心の中で叫ぶ。

『やめろ! 修行を続けろ!』

ヴァンが答える。

「うるさいな」

だるそうに。

「たまには休めよ」

リオンが叫ぶ。

『休んでる暇はない! カインに勝たないと!』

ヴァンが笑う。

「カイン? ああ、あの強い奴」

歩き続ける。

「どうせ勝てないだろ」

リオンが怒る。

『諦めるな!』

ヴァンが答える。

「諦めてないよ。現実を見てるだけ」

街に着く。

門をくぐる。

酒場を探す。

「あった」

看板が見える。

「赤い竜亭」

中に入る。

昼間。

でも客が数人いる。

ヴァンがカウンターに座る。

「酒」

店主が聞く。

「何がいい?」

ヴァンが答える。

「安いやつ」

店主がエールを出す。

ヴァンが飲む。

「うまい」

また飲む。

リオンが叫ぶ。

『やめろ! 時間の無駄だ!』

ヴァンが答える。

「人生は無駄の積み重ねだ」

また飲む。

「楽しまないと」

時間が過ぎる。

昼。

午後。

夕方。

ヴァンは飲み続ける。

エール。

ワイン。

ウイスキー。

何でも飲む。

店主が聞く。

「払えるのか?」

ヴァンが答える。

「ああ」

懐を探る。

でも金がない。

「あれ?」

店主が怒る。

「おい!」

ヴァンが立ち上がる。

「悪い、また来る」

逃げ出す。

店主が追いかける。

「待て!」

ヴァンが走る。

街を。

路地を。

曲がる。

隠れる。

店主が通り過ぎる。

ヴァンが笑う。

「セーフ」

リオンが呆れる。

『最低だ……』

ヴァンが答える。

「生きてるだけマシ」

夜。

ヴァンは野宿する。

路地裏で。

段ボールを敷く。

横になる。

「これでいい」

リオンが叫ぶ。

『宿に泊まれ!』

ヴァンが答える。

「金がない」

目を閉じる。

「おやすみ」

眠りに落ちる。

翌日。

また酒場。

別の店。

「緑の狼」

入る。

酒を飲む。

金を払わず逃げる。

また野宿。

その繰り返し。

1週間。

2週間。

3週間。

ヴァンの支配が続く。

街を転々とする。

図書館都市。

隣の街。

また隣の街。

ただ酒を飲み野宿し、生きている。

リオンは叫び続ける。

『やめろ!』

『時間の無駄だ!』

『カインに勝たないと!』

でも。

ヴァンは聞かない。

「面倒だ」

それだけ。

ある日。

3週間目。

ヴァンは酒場にいた。

「銀の月」

という店。

カウンターで飲んでいる。

その時、扉が開く。

誰かが入ってくる。

ヴァンが何気なく見る。

そして。

驚く。

ミラだ。

一人で入ってくる。

テーブルに座る。

店主に何か注文する。

ヴァンが見つめる。

「お……」

つぶやく。

「知り合いか?」

記憶を探る。

リオンの記憶。

「ああ、ミラか」

ミラは気づいていない。

ヴァンを。

いや。

リオンを。

食事を待っている。

ヴァンが立ち上がる。

「久しぶりだな」

近づこうとする。

その時。

ミラが顔を上げる。

リオンを見る。

いや。

ヴァンを。

目が合う。

ミラの顔が曇る。

立ち上がる。

金を置く。

店を出る。

急いで。

ヴァンが呼ぶ。

「おい、待てよ」

でもミラは振り返らない。

扉が閉まる。

ヴァンが肩をすくめる。

「ま、いいか」

カウンターに戻る。

また酒を飲む。

「女は面倒だ」

つぶやく。

リオンが心の中で叫ぶ。

『追いかけろ!』

ヴァンが答える。

「面倒だ」

また飲む。

リオンが怒る。

『お前のせいで……!』

ヴァンが答える。

「俺のせい? お前のせいだろ」

リオンが黙る。

ヴァンが続ける。

「お前が彼女を傷つけた」

リオンが反論する。

『でも……』

ヴァンが遮る。

「でも、じゃない。事実だ」

また飲む。

「認めろよ」

リオンが沈黙する。

その夜。

ヴァンは野宿していた。

路地裏。

段ボールの上。

星を見ている。

「綺麗だな」

つぶやく。

その時。

突然。

体が震える。

目が変わる。

リオンの目に戻る。

主導権を取り戻す。

「戻った……」

つぶやく。

立ち上がる。

周りを見る。

路地裏。

汚い。

臭い。

「ここは……」

記憶を探る。

ヴァンの記憶。

3週間。

酒。

野宿。

逃げ。

そして。

ミラ。

「3週間も……」

愕然とする。

「無駄にした……!」

叫ぶ。

路地を走る。

街を。

宿を探す。

見つける。

「旅人の休息」

入る。

部屋を取る。

金を払う。

わずかに残っていた。

部屋に入る。

鏡を見る。

自分の顔。

髭が伸びている。

髪がボサボサ。

服が汚れている。

「最低だ……」

つぶやく。

鏡を殴る。

「くそ!」

拳が痛む。

でも気にしない。

また殴る。

「くそ! くそ!」

何度も。

拳から血が出る。

それでも殴る。

やがて力が抜ける。

座り込む。

頭を抱える。

「俺は……何をしてるんだ……」

自己嫌悪。

涙が出そうになる。

でも出ない。

ただ虚しさだけ。

時間が過ぎる。

リオンは動かない。

ただ座っている。

床に。

窓の外。

夜が明け始める。

朝が来る。

でもリオンの心は暗い。

3週間、無駄にした。

ミラを見た。

でも話せなかった。

全てが失敗。

リオンは立ち上がった。

「変わらないと……」

つぶやく。

「このままじゃ……」

拳を握る。

「ダメだ……」

決意する。

「もう……ヴァンに支配されない……」

「誰にも……」

「俺が……制御する……」

窓を開ける。

外を見る。

太陽が昇っている。

新しい日。

リオンは思った。

『ここから……』

『やり直す……』

『必ず……』

深呼吸する。

「まず……身なりを整える……」

髭を剃る。

髪を整える。

服を洗う。

全てを整える。

そして。

また修行を始める。

今度は制御を完璧にする。

ヴァンにも他の誰にも支配されないように。

リオンの戦いが続く。

自分自身との。


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