第29章 魔王の影
その日の午後。
リオンとミラは宿の部屋にいた。
本を読んでいる。
転生者の記録。
突然、窓の外から叫び声が聞こえた。
「何だ!?」
「黒い霧が……!」
リオンが窓に駆け寄る。
外を見る。
街の一角。
東側から黒い霧が湧き出ている。
不気味な霧。
蠢いている。
生きているかのように。
ミラも窓に来る。
「あれは……」
リオンが立ち上がる。
「行くぞ!」
二人は部屋を飛び出した。
階段を駆け下りる。
宿を出る。
街を走る。
霧の方へ。
人々が逃げている。
「逃げろ!」
「触るな!」
リオンは霧に近づいた。
10メートルほど離れた場所で止まる。
霧は広がっている。
地面から湧き出ている。
そして、霧の中に人影。
男が一人。
霧に触れている。
次の瞬間。
男の目が赤く光る。
「グルルル……」
唸り声。
男が暴れ始める。
近くの露店を壊す。
「うわああ!」
商人が逃げる。
ミラが驚く。
「人が……凶暴化してる……」
リオンは震えていた。
目が見開いている。
「これは……」
フラッシュバック。
記憶が蘇る。
原始人ゴルの記憶。
黒い霧。
部族が襲われる。
仲間が凶暴化する。
戦士アレクの記憶。
城が霧に包まれる。
兵士たちが狂う。
学者ルシアンの記憶。
古文書に書かれた記述。
「魔王の力は黒い霧となって現れる」
リオンが叫ぶ。
「魔王の力……!」
ミラが驚く。
「魔王? まだ復活してないはずでは?」
リオンが答える。
「前兆だ……封印が弱まってる……」
ミラが息を呑む。
「封印が……」
リオンが続ける。
「このままじゃ……街が……」
霧がさらに広がる。
また一人、霧に触れる。
女性。
目が赤く光る。
凶暴化。
叫びながら走り出す。
リオンが決断した。
「燃やせ!」
叫ぶ。
瞬間、目が変わる。
魔法使いリズの目。
手を前に突き出す。
「炎よ、来たれ!」
手から炎が噴き出す。
霧に向かって。
炎が霧を焼く。
「ジュウウウ……」
音を立てる。
霧が消えていく。
リオンが続ける。
「もっと!」
炎を強くする。
霧が後退する。
でも。
数秒後。
霧が再生し始める。
また湧き出る。
同じ場所から。
リオンが驚く。
「再生する……!?」
ミラが叫ぶ。
「リオン! 後ろ!」
振り返る。
凶暴化した男が襲ってくる。
リオンは炎を止めた。
「戻れ!」
リズの人格を引かせる。
男が迫る。
その時、ミラが前に出た。
「守れ!」
叫ぶ。
目が変わる。
戦士シルヴィアの目。
体が動く。
男の攻撃を避ける。
足を払う。
男が倒れる。
ミラは続ける。
凶暴化した女性に向かう。
拳で殴る。
意識を失わせる。
気絶させる。
殺さない。
無力化するだけ。
リオンが叫ぶ。
「住民を避難させろ!」
周りの人々に。
「霧から離れろ!」
人々が逃げ始める。
ミラは凶暴化した人々を次々と無力化していく。
3人。
5人。
10人。
全員を気絶させる。
リオンは霧を見る。
広がり続けている。
「このままじゃ……街全体が……」
その時、後ろから声がした。
「リオン殿!」
振り返る。
図書館の司書。
老人が走ってくる。
息を切らしている。
「司書さん!」
老人が叫ぶ。
「記録を読みました!」
リオンが聞く。
「何の記録を?」
老人が答える。
「魔王の封印の記録です!」
リオンが驚く。
「封印の……!」
老人が続ける。
「3箇所に封印があります!」
リオンが聞く。
「どこです!?」
老人が答える。
「北の氷山!」
息を整える。
「西の砂漠!」
また息を吸う。
「南の海底神殿!」
リオンが驚く。
「3箇所……」
老人が頷く。
「はい。3つの封印が魔王を抑えています」
リオンが聞く。
「それが弱まってる?」
老人が頷く。
「この霧は、その証拠です」
リオンが理解する。
「封印が壊れかけてる……」
老人が続ける。
「このままでは、魔王が復活します」
リオンは拳を握った。
「行かないと……」
ミラが駆け寄る。
「戻れ!」
シルヴィアを引かせる。
目が元に戻る。
息を切らしている。
「リオン……」
リオンが見る。
「ミラ、聞いたか?」
ミラが頷く。
「封印地……3箇所……」
リオンが頷く。
「行かないと」
ミラが同意する。
「うん」
老人が言う。
「急いでください。封印が完全に壊れる前に」
リオンが頷く。
「わかりました」
霧を見る。
まだ広がっている。
でも、街の人々は避難した。
凶暴化した人々も気絶している。
リオンが言う。
「この霧は……どうすれば……」
老人が答える。
「封印を強化すれば、消えるはずです」
リオンが頷く。
「わかった」
ミラに向き直る。
「行くぞ、ミラ」
ミラが頷く。
「どこに?」
リオンが答える。
「まず、一番近い封印地」
老人に聞く。
「どこが一番近いですか?」
老人が考える。
「北の氷山でしょう。ここから3日の旅です」
リオンが頷く。
「わかりました」
老人に頭を下げる。
「ありがとうございます」
老人が微笑む。
「世界を頼みます」
リオンが頷く。
「必ず」
ミラと共に走り出す。
宿に向かって。
荷物をまとめる。
出発の準備。
部屋に入る。
リオンは本を荷物に入れた。
『転生者の記録』
ミラも荷物をまとめる。
「準備できた」
リオンが頷く。
「俺も」
二人は部屋を出た。
宿を出る。
街の北門に向かう。
後ろから、霧が見える。
まだ広がっている。
リオンは振り返らなかった。
前だけを見る。
「急ごう」
ミラが頷く。
「うん」
二人は北門を出た。
街道を走る。
北へ。
氷山へ。
封印地へ。
太陽が西に傾き始めている。
時間がない。
急がないと。
魔王が復活する。
リオンは走り続けた。
ミラと共に。
世界を救うために。
封印を守るために。
そして、6666回目の挑戦。
今度こそ成功するために。
二人の姿が街道を進む。
小さくなっていく。
地平線の向こうへ。
新しい冒険へ。
新しい戦いへ。
運命の時が近づいている。




