あの日みたいな
以前まつりとリアが囚われた地下施設。
彼女らはもう一度ここにたどり着き、手がかりを探した。
【PUNCH EYES】ボス、五箇条四郎と共に。
「すまなかった…改めて礼を言う」
五箇条は静かに木箱に腰掛け、低い声で声を出す。
無造作に、かつ、離れないように。
彼女たちは五箇条と一定の距離を保ったまま、話をしていた。
「いや、お礼はもういいよ。ぼく達が欲しいのは情報だ。何故あんなことをしたのか…科学者との関係性は何か」
「…科学者の正体も」
ノアの要求にまつりが付け足す。
「今更逃げ出す気力も湧かねえな…いいだろう」
五箇条はそう言うと、大剣を壁に立てかけ腕を組み、少し俯いた。
「一連の騒動が始まった日…そりゃあパニックに陥った。でも俺たちは何があってもこのボスについて行くと決めたからよ。寧ろこの街全部支配できる好機と取った。
しかし現実ってもんはそううまくいくもんじゃねえ。騒動に乗っかって順調に勢力を伸ばしたが、ボスが『科学者』と名乗る男の拳銃一発に敗れ、妙な注射でバケモンにされちまった。
指揮を失った組織は驚くほど簡単に崩れる。バケモンになったボスを研究室の地下に拘束し、科学者はこういったんだよ。
抗ウイルス薬を作るから、私を護衛しろ、ってな」
話の終わりを示唆するように、俯いた顔を上げた。
「…科学者のもとにわたしを連れて行ってほしい」
まつりが呟く。
「わたしなら…なんとかできるかもしれない」
「研究所の場所を移してなければ、居場所は割れてる」と五箇条。
「一週間」
リアが勢いよく立ち上がって、そういった。
「一週間以内に科学者さんのところに行って、パンデミックをやめさせる。ボスさんを治す方法だって、絶対ある」
彼女の手には、あの時五箇条が地面に叩きつけた科学者の手記があった。
「お前、それをいつの間に」
「見て」
3人に向かって、手記の端っこのページを見せた。
「…利害一致だ」
暗い部屋に、かすかな光が差し込んだ。




