第40話 お弁当
俺達はバルバロッサの街を出発して次の街へと向かっている。
相変わらず俺は馬車の横を並走してチェダーさんとゴーダさんが騎乗で先導してる感じだ。
今日はマーブルさんとマリボさんの女性二人が昨日女性従者の人に教えたお化粧の実験台になって貰ってる。
リュミエルが居ないからマリアが一生懸命指導してる。
「マリアちゃん。この鏡って凄いよねぇこんなに綺麗に写るのなんて初めて見るよ」
「そうですよね、私もこの鏡を知った時はびっくりしました」
「ねぇこの鏡っていくらくらいする物なのかな?」
「わたしじゃぁ想像も出来ませんから、サンチェスさんに聞いた方が良いと思います」
「やっぱり女性なら興味を持つじゃろうな、その鏡は今の時点では、オークションにかければ、そのサイズの物で一千万ゴールドはするであろうな」
「え? 一千万ですか? わぁ私達じゃ絶対に手が出せないですね」
「マリアちゃんは何処で手に入れたの?」
「それは、まだ言えないんです」
「そっかぁそんなに珍しい物だったらしょうがないよね。私達もそんなお宝手に入れたいよ」
「お二人共、お化粧の出来栄えが凄い素敵ですよ。この眉毛と目のメークで表情を優しくしたりきりっとした感じにしたりの調整も出来ますから」
「そうなんだね、本当これ私なの? って言うくらい素敵だよ。ねぇマリアちゃん。マリアちゃんの髪の毛って何でそんなにサラサラなのかな?」
「これもですね、シャンプーとリンスって言う髪の毛専用の液体で洗うとこういう風になるんですよ。後はお風呂上りにちゃんと乾かす事も大事なのかな?」
「そうなんだね、そのシャンプーとかも高いのかな?」
「安くは無いですけど、手が出ない程でも無いと思いますよ? 次の街に着いて宿屋に泊まれる時があれば、一回試しに頭を洗ってあげますね」
「わぁ楽しみだよ」
馬車の中はとても賑やかだな。
おっとウルフの気配だ!
俺は相変わらず道中で現れる魔物達を根こそぎ倒してインベントリに放り込んでる。
昨日のと合わすと、そろそろ百匹は超えてるぜ。
流石に隊列に襲い掛かって来る気配の無さそうな距離にいる奴は、見逃してるけどね。
「なぁテネブル、どうやったら子猫のお前がそんなに強くなれるんだ?」
って聞かれたから「気合いだよ」って答えた。
当然「ニャニャァ」としか聞こえないけどね!
「本当に俺達が言ってる言葉が解ってるんだな。昨日もマリアには声かけたけど、この先さ俺達と一緒に冒険者やって行かないか?」
「今はまだマリアと二人で十分だから」と言いながら首を横に振った。
「ニャニャニャアニャ」としか聞こえないけどね!
「チェダーどうやらテネブルに振られちまったようだな? でも同じ町の冒険者なんだから、合同受注なんかではよろしく頼むな」
ゴーダがそう言って来たので、今度は首を縦に振って「ニャン」って返事したぜ。
「チェダー、俺の言葉にはOKだった見たいだぜ」
「そうみたいだな、すげぇ猫だよまったく」
今日は次の街までの距離も長く、お昼は勿論街道沿いで、夜も野宿になる予定だ。
あのお昼ご飯はちょっときついから、マリアに言ってみんなでお弁当を食べたいな……
お昼休憩の時間になり馬車列が止まった。
そこは街道を行き来する商人達が良く利用する場所らしく広場になっていて魔物の襲撃を防ぐための柵も作ってあった。
サンチェスさんの商隊の他にも二組ほどの商人たちがお昼の休憩を取っていた。
商人であれば当然の様にファンダリアの商業ギルドマスターであるサンチェスさんの顔は知っており、サンチェスさんが馬車から降りると二組の代表者であろう商人たちが挨拶にやって来た。
「マスターお久しぶりです。どちらまでですか?」
「王都までじゃ、今回は王都に革命をもたらすほどの商品を手に入れたからの」
「それは羨ましいですね。是非私共にも商機を与えて下さいね」
「うむ、商業ギルドマスターとしてファンダリアの全商人が発展して行けるよう尽力するので頑張りなさい」
その挨拶が行われてる間に食事の準備を始めようとした女性従者に、マリアが声を掛けた。
「あの……今日のお昼は私が準備させて貰って良いですか? 皆さんの分を用意いたしますので。お湯だけを準備して頂ければ助かります」
「あら? 冒険者さんに食事の用意までして貰ったら私達がサンチェス様に怒られないかしら?」
「大丈夫です。調理はしないので用意した物を召し上がって頂くだけですから、配膳のお手伝いをお願いします」
「そうなの? まぁあんな鏡や化粧品を用意できるマリアちゃんなら、何か特別な方法があるのかな?」
その会話の後で俺がインベントリから人数分のお弁当を取り出して、マリアがみんなの前に配った。
お湯を沸かして貰ったのにはサンチェスさんに見て貰おうと持って来た缶詰と、フリーズドライの卵スープの固形の物を食べて貰う為だ。
お弁当は何種類かをランダムに出して置いたけど、蓋を開けなければ中身は解らないので開けてのお楽しみだ。
勿論文化的には箸は無いのでフォークとスプーンを用意して貰ってるぜ。
挨拶を終えてサンチェスさんが戻って来たので、一斉にお弁当を開けて貰った。
「うぉおこんな道中の昼食でまともな食事が出て来るなんて凄いな」
「これはお米か? スープに入れる以外にこんな風にも出来るんだな」
「良く解らんが旨いな」
「お前のおかずも旨そうだな、俺のと半分取り換えてくれ」
「このスープもしっかりと味が有って凄くうまいぞ」
「しかも暖かい料理なんてどうやって作ったんだ? あんな短時間で」
どうやら好評のようだ。
今の反応を見ると、この世界ではお米は雑炊みたいな感じでしか食べて無かったんだな。
前にマリアが孤児院で雑炊を作ってたから、普通のご飯も一般的なのかと思ってたぜ。
「マリア、これは一体どういう事なんじゃ?」
「テネブルの差し入れです。なんだか味気ない料理より美味しい料理の方がみんな嬉しいんじゃないかって?」
「そうか、テネブルありがとうな。この容器は一体何で出来ておるんじゃ?」
「あ、その辺りはノータッチでお願いしますって言ってます。それとサンチェスさんにはこれも食べてみて欲しいと言ってます」
そう言って、マリアは缶詰をサンチェスさんの前に出した。
「ん? なんじゃこれは?」
「えーと、テネブルが言うには保存食で缶を開けなければ一年でも普通に食べる事が出来るそうです」
「ほー素晴らしいな、旅には必需品になるほどの物だぞ」
「後ですね、気に入って頂けたならお弁当は三百食用意してるので、今回の旅の間は外での食事は全部お弁当でいいですか? って言ってますけど」
「それは是非にお願いしたい所じゃが、これほどの料理を無料でと言う訳にもいかん。わしが全員分の食事代として、一人に付き一食千ゴールドを払おう。それでも安いくらいじゃが良いかの?」
「十分だと言ってます」
俺達の食事風景を羨ましそうに見ていた二つの商人のグループにも特別に人数分のお弁当を差し入れしたら滅茶苦茶感謝されたぜ。




