35話 買い物。その後
今回短いです。
宝石店で買い物を済ませ、今、紫炎達は大通りを歩いている。
「にしても、広いなここ」
王国に着いた時から言っている言葉を紫炎は口にする。
「次はどこ行く? シエン様」
宿を出てからというもの何気に気分が良いクレンが鼻歌交じりに、主である紫炎に予定を聞く。
「ん〜、ルファーお前他に行きたい所あるか?」
「えーとね、服屋とかいろんな所に行こうかしら」
それから数時間紫炎はルファー達の買い物をし、宿に戻ったのは日が落ちてからであった。
宿に出る前に所持していた10万ゴルドはもう底を尽いたが、まぁ皆ご満悦なので良しという事にしよう。
ゴルドはこの世界での金である。だが、そこは地球と差ほど変わらなく、1ゴルドイコール1円であった。
ちなみに、宝石を買った時の代金は10万じゃ全然足りなかったので、ルファー達が頑張って働いた金の3分の1が消失したのであった。
「あ、シエンさんどこ行ってたのですか? 探してたのですよ」
宿に着いて、部屋に戻ろうとした紫炎達が、扉を開けた瞬間、テスタが出てきた。
元々合鍵は渡しておいたので、中に入っていたのは分かるが、姫達と同じ部屋に泊まると思っていた紫炎は驚きを隠せない様子である。
「あれ? お前姫達と泊まるんじゃなかったのか?」
その頭上に疑問符を浮かべ、首を傾げる紫炎に、テスタはお構い無しに攻め寄る。
「そんな事より、どこに行ってたのですか?」
「あ、あぁ、皆で買い物に出かけてたんだよ」
「なんで、私を連れてってくれなかったんですか?」
ずりずりと攻め寄り、鼻と鼻がくっ付くぐらいまで近寄る。黒煉達は、既に部屋の中に入っていて、紫炎だけが責められている。
「え? だってお前姫達と王城に行ってたじゃねぇか」
「そ、そうですけどッ!」
そう、姫達と出かけると決めたのはテスタである。だが、乙女心と言うものはそれでは収まらない。わがままだと思うが、実際現実はこうなのだ。
そんな理不尽な怒りを身に浴び、紫炎は戸惑いながらも自分なりに回答を求めた結果。
「あっそうか、お前も宝石が欲しかったのか?」
紫炎の頭では、この答えしか浮かばないのだ。何せ16年間生きてて1回も付き合った事がないのだから。
「違うけど。当たってる所も·····あぁ、もうッ! 今度私にも何かプレゼント下さいね?」
あまり声を荒らげる事の無いテスタも、紫炎絡みになるとここまで変わってしまうのか。
まぁ、部屋に戻っても誰もいなくて、帰ってきたと思ったら、ルファーと黒煉にそれぞれ普段身に付けていない物があるのだから、それから導き出せる結論に妬み嫉みがあるのは致し方ないだろう。
実を言うと、テスタは助けてくれたその日から紫炎の事を好いていたりしている。詳しい話はまたの機会にだが、恋する乙女としてはこの事態は由々しき事なのだろう。
「それじゃあ、今度ユグ達に何か作るって約束したからな、その時にテスタにもプレゼントを渡すから許してくれ」
紫炎はそんな心を知らないので、何で怒っているのか分からない。とりあえずと、プレゼントが欲しい事が分かったので、何とかこの場を乗り切りたい紫炎の必死の説得。
「それでいいですけど·····。それじゃあ私にも綺麗な指輪を作ってくださいお願いしますね?」
「分かった」
何とか許しを頂き、ほっと息を着く紫炎。女性の心は分からないものなのだと確認したのであった。
毎回今回のような回を書いている時に、本当にこうなのか?と思ってしまう自分。心情の描写は難しいですね。次回はテスタの話を上げます。
誤字脱字、日本語の不自然な部分があればご報告下さい。




