3話 紅の騎士 後半
また説明ばかりです…
朝何事もなく目覚める。
昨晩俺の後をつけていた人物も流石に家まではたどり着けなかったらしい。いや、俺がたどり着かせなかった。ステータスを久々に全開にしたからな。
「リミア…行ってくる」
壁に立て掛けてある白銀の盾に向かって口にし家を出た。
ギルドに着くと昨日の人集りが嘘のように消えていた。相手が愛想も良く笑顔が可愛かったりすれば話は別だが、相手はそれとは正反対の態度をとる女だ。野次馬達もそうまでして仏頂面を拝みたいモノ好きもいなかったらしい。まぁ本人にとっては鬱陶しい野次馬が消え清々としているかもしれないが、まぁ俺には関係ない。
「やぁカナ。二日連続ギルド顔を出すなんて珍しいじゃないか」
「ビューテ、俺達は別に毎日ギルドに顔を出しに来る必要なんてないだろう?お前が来すぎなだけだ」
「必要性は無くとも無駄なことをしてるわけじゃあないぞ?ここに足を運ぶだけで得ることのできない情報を知ることだってできるからね」
「0と1じゃ1の方がいいかもな。けどな、1を得てる間に10を手に入れることができる、手に入れてるやつだっているんだぞ?」
目の前に、な?と口元を緩めビューテを挑発するように言葉を使う。俺はお前が1を手に入れている間に10を手に入れてるぞ?それでいいのか?と
「ふっ、あはは。カナも冗談を言うんだね。僕らが一番理解しているじゃないか。情報が持つ、いや、情報を持つ者がどれだけ進化していけるかを」
「まぁ、確かにな。けどそれを言うならお前だって理解しているだろう?俺たちは既存の情報をいくら知り得たって意味をなさないってことをよ」
すると紅の騎士様は大げさに両腕を広げ
「何も無意味なことじゃない。僕たちは先の事を知り得ないのだから既存の情報が無駄だと決めつけるのも少し早い。なら0より1、無いよりあった方が全然良い」
「ん」
たしかにその通りだと口を閉じる。
いくら仕事上必要のない行為と分かっていてもそれが今後本当に必要のないものなのかを今の俺には知る術がない。
ただ、ただ!
「その勝った!みたいな顔やめろ!お前にその顔されるとすっげぇ腹立つ!」
「あはは、カナがそういう反応をするって分かってるからやめられないんだよ。お、そろそろ良い時間だ。あ、そうだカナ」
なにかを思いついたようにある提案をカナに持ちかける。
「んぐぐ…この野郎……。あ?なんだよ」
「今って‘あの’ダンジョンに潜る為に経験値を集めてるんだよね?」
「ん、あぁそうだ。まぁ今っていうかもう半年くらいはずっとだけどな」
次に挑むべきダンジョン『???』に向けて俺はステータスの最大値を塗りかえようとしている。未知に挑むのには最低限必要な行為だ。
「それなら…持っていた方がいいんじゃないかな?」
「だからなにを…」
あまりにもったいぶった言い方をするビューテに若干苛立ちを含み聞き返す。しかし、次にビューテの口から出てきた言葉に思わず声を漏らす。
「E.A__エクストラアビリティだよ」
「な……。…まじ?」
《エクストラアビリティ》
ある一定のダンジョンに認められた者だけが手に入れられる称号。それがE.A。
と、ここまでが一般冒険者に知られている情報である。しかし、E.Aがなんの略称なのかを知る者はごく一部の冒険者に限られている。
アビリティとは文字通り能力を示す言葉である。
ステータスは大きく分け二種類に分けられる。
まず一つが《パラメーター》
これは筋力や敏捷などの身体的なステータスを表す。モンスターを倒し得た経験値はプレート内に蓄積され振り分けることができる。その際に数値化された自身のパラメーターに貯蓄した経験値を一定数振り分けると能力が向上する仕組みだ。
ちなみに、能力向上にはかならずしも経験値を振り分けなければいけないわけではない。日々の鍛錬は数値化こそされないが、確実に当人の能力を向上させている。数値が絶対ではない。数値では動いていないパラメーターも確かに存在する。
二つ目が《アビリティ》
これは武器や本を読み理解し、極める事で得られるステータスを表す。武器には《斬石》や《空歩》といった特殊な能力が秘められている。《空歩》はかなりのレアなアビリティだが、《斬石》は一般的に認知されているアビリティである。アビリティの獲得条件は様々で、なおかつそれを知るすべは無いので、地道に色々な方法を試すしかない。なお、同じ武器には同じアビリティが付与されているので一度獲得条件がわかりさえすれば、それを実行し、誰でもアビリティを取得することができる。
本の場合は、内容全てを理解し、なおかつ一言一句違わず記憶する必要がある。その条件故に武器よりも難易度は別格に高いが得られるアビリティもレアなものが多いと言われている。なお、同じ本は存在しない。
ここまでは一般常識だ。
《エクストラアビリティ》
それは………わからない。
エクストラアビリティに関しての情報はほぼ出回っていない。実際にエクストラアビリティを持っている人物も既に過去の人。情報がないのだ。
そんな中ビューテはどこからかエクストラアビリティの情報を手に入れてきた。
「その話信用できるの?」
エクストラアビリティは一人につき一つ。つまり一度手に入れたら二度とそれを手放すことはできないと言われている。
「んー、正直僕もこの情報が本当かどうかわからない。けどその可能性があるなら…」
「挑戦してみるしかない……か」
するとビューテはニヤリと口角を上げ
「うん、僕もそうだと思う。けど、職業柄こういうのってワクワクしないかい?」
「まぁ、ちょっと……いや、結構」
うん。認めよう。俺はわくわくしているうん。まだ持っていないアビリティ、それも未知のエクストラアビリティだ。冒険者を生業としている身としてはしないわけがない。
「それで、そのダンジョンはどこにあるんだ?」
「うん。これも聞いた話なんだけど、ユーヴェルから西に一時間歩いたところに砂漠もどきがあるだろう?そこにオアシスがあるんだけどそこにダンジョンに関す情報があるらしい」
「あぁ、あそこか。ん?じゃあまだダンジョンの詳しいとこはわからないってこと?」
「そーなんだよね。だからここ最近ギルドで情報収集してたんだよ」
__とりあえず行ってみないとわからないってことか
「それじゃあとりあえずオアシスまで行ってみるか」
「そうだね、準備したら向かおうか」
日課の行為を中止し、ビューテと共にオアシスに向かうことにした。
物陰に二人の会話をひっそりと聞いている人物がいたことを二人は気づいていたのかいないのか…
次回更新は1週間以内に行います…




