13、優しさの行き先
「着いた!鎌倉ー!」
「着きましたね」
鎌倉に着いた途端
人の話し声が増えた気がする
改札を抜け
私たちは駅前にいた
お嬢様のテンションは
鎌倉に近づくほど高くなり
着いた途端
テンションマックスになったのか
両手をあげてバンザイをした
「七海、早く行こ!」
今は、しっぽを振り回している
子犬みたい
喜んでくれていようでよかった
今日は、お詫びも兼ねているから
「ほら、七海早く早く!」
「そうですね、行きましょうか」
さて、そろそろ
出発しないと時間もなくなるが
私は、今怖い
人が多すぎて
車椅子をちゃんと押せるか
人にぶつからないか怖い
車椅子の取っ手を掴む手が少し震えていた
それに気づいたお嬢様は
「大丈夫」
その声は、優しく迷いのない声だった
そのあと続けて
「ほら、深呼吸して周りを見て」
と言った
私は、言われた通り
深呼吸をしてから周りを見た
すると、さっきまで
人が溢れかえって見えていたのに
今は、少なく見える
沢山いることに変わりは無いが
それでも、場所が変わったようだった
私が驚いていると
「大丈夫でしょ」
とお嬢様がニコッと笑って言った
「凄いですね」
「怖くなった時は1回深呼吸してる
その後に見れば意外となんてこと無かった
ってことがよくある」
「そうなんですね」
「私がよく使う落ち着く方法
七海も使ったら気が楽になると思う」
そういうとお嬢様は
私の返事を聞く前に
前を向き
出発するのを待っていた
私は、取ってを握り直して
車椅子を押した
駅を出ると思っていたよりも
人は少なかった
何事もなく小町通りに着いた
私は、歩きながら
お嬢様に何を食べたいか聞いた
すると、キョロキョロ辺りを見渡しながら
どうしようかなと悩んでいた
もう少し進むと
突然「あっ!」とお嬢様が叫び
私は、驚いて足を止めた
何を見つけたのかと思い
お嬢様が指を指す方を見ると
そこには、カレーパン専門店があった
「ここ、テレビでやってた!
美味しいって言ってた食べたい!」
そういうお嬢様の目は輝いていた
私もここのカレーパンは好きで
食べたかったからちょうどいい
だけど、車椅子は入れそうになかった
並んでいる人もいる
私がどうしようかと悩んでいると
「私、あそこで待ってる」
とお嬢様が指を指した
カレーパン専門店の目の前に
空いてる場所があった
運良く人がいなかった
「私、あそこにいるから
カレーパン買ってきて
これ、お金」
「いや、いいですよお金なんて
私が奢りますから」
「いいから」
「今日は、お詫びもあるので」
「お詫び?」
「はい、今まで沢山お嬢様を傷つけました
なので、そのお詫びを」
そう私が言うと
お嬢様は、少し黙ってから
小さく笑い頷いた
私は、買ってきますと言い
列に並んだ
カレーパンを買い終わり
急いでお嬢様の元に戻った
そして、目の前にカレーパンを出した
すると、お嬢様が私を見てから
「あなたのは?」と言いながら首を傾げた
「私は、後でまた買いに行きます
なので、温かいうちに食べてください」
と言いながら
食べやすいように少しカレーパンを出すと
嬉しそうに大きな口でかぶりついた
その後すぐ目をまん丸にしながら
美味しそうに食べていた
しばらく食べていると
覚めてきたことに気づいたのか
「持つから買ってきなさい」と手を伸ばした
私は、お嬢様にカレーパンを渡し
自分の分を買いに行った
食べ終わったあと
また、歩き始め
そのあとも食べまくった
アップルパイを食べ
ソーセージも食べ
甘いものからしょっぱいもの
海鮮も食べて回った
お腹もいっぱいになってきた頃
次は、何しようかも悩んでいると
お嬢様が私の袖を引っ張った
どうしたのかと聞くと
「ねぇ、ここに稲荷神社ってあるの?」
「はい、佐助稲荷神社がありますよ」
「行きたい」
「ですが、階段しかないので」
「いいの」
「でしたら、行きましょう」
「ありがとう」
なぜ、お嬢様があんなに
佐助稲荷神社に行きたがったのか
私には分からなかった
それでも、喜んでくれるのなら
私は、どこにでも行こうと思っていた
神社につき少し離れた場所に止まっていた
しばらく沈黙が続いたあと
「スマホ貸して」
と言ってきた
私は、訳が分からずスマホを出すと
カメラにして欲しいた言ってきた
カメラにしてからスマホを渡すと
鳥居の前に立ってと言った
「私が立つのですか?」
と聞くと
お嬢様は、頷いた
言われた通りに立つと
お嬢様は、片手で頑張って
写真を撮っていた
そして、スマホを下ろしたのを見てから
私が戻ると
お嬢様が呟いた
「この神社、仕事運が向上するって聞いた
だから、ここに来てお願いすれば
七海の仕事も生活も良くなるかなって」
その言葉を聞いて
私は、感激した
いい子すぎる
最初は、酷い子だと思ったけど
私が大間違いをしていた
私のために来たがったのか
私は、ありがとうございますと言うと
少し恥ずかしそうに頷いた
その時、私は思った
なぜ写真を?
私が聞くと
「写真も撮った方が効果出るのかなって
あれ?もしかして意味ない?」
そう言うお嬢様が可愛すぎて
首を横に振り
効果ありますよと言った
すると、「また、ニヤニヤしてる!」と
怒られてしまった
けど、そのあとすぐに笑顔になった
まだまだ、時間はある
次は、どこに行きましょうか
そんな話をしながら
神社を後にした




