9.3人娘
次の町を目指し、街道を自転車で走っていると、前方に3人の女の娘が見えた。
とりあえず軽く挨拶だけして通り過ぎよう。
「こんにちは」
「「「こんにちは」」」
3人が振り向いた。
「あ、昨日のパンツ!」
思わず叫んでしまった。3人おうちの1人が昨日下着を落とした女の娘だった。
「パンツって、あ、昨日はありがとうございました」
「何か困ったことありませんか?」
おれは社交辞令として聞いてみた。
「あ、なら少し疲れたので、そこに座って休ませてもらってもいいですか?」
パンツ娘がサイクロン号の後ろのリヤカーを見ながらそういってきた。
「ええ、どうぞ」
おれはそういって、座るように促す。
「これって何ですか?」
自転車のことを聞いてきたので、昨日街道警備隊に話したのと同じことを説明した。
「どこに向かっているのですか?」
パンツ娘が行先を聞いてきた。
「目的地はノーマン帝国の王都です。途中ネクト町で一泊する予定です」
「私達もノーマン帝国の王都に向かっています。少しですがお金も払いますので、これに乗せていってくれませんか?」
「うん、いいですよ」
「「「やったー」」」
道連れが出来た。おれは彼女達をリヤカーに乗せて、ノーマン帝国の王都を目指すことになった。
自転車の速度を少し落として漕ぐことにした。
「私はタクマ。新米冒険者をやっています」
「新米冒険者なんだ、私達のほうが先輩ね。じゃあフレンドリーに話していいよね。私はペルジュ王国の冒険者ルフィナ、16歳。よろしくタクマ」
と赤髪のパンツ娘が笑って挨拶する。
「私はセルジュ、17歳。タクマ君、よろしくね」
「ノエルです。15歳です。タクマさんよろしくお願いします」
「3人は友達なの?」
「冒険者仲間ってとこね。たまに一緒に依頼をこなしているの」
「タクマは何処の出身?」
「ガラパゴ共和国のトウゲン村。コンタクト村の隣にある村だよ」
「「「聞いたことない村ね」」」
………
……
…
ノーマン帝国 ネクトの町:
夕刻。ネクトの町の前に着いた。
自転車で町に入ると道路を壊してしまうので、仕舞うことにする。
「自転車を仕舞うんで、ちょっと離れていて」
ルフィナ達が怪訝そうな顔をして自転車から離れる。
「《ストリング》」
収納魔法で自転車を仕舞う。
「………」
ルフィナ達が驚きの表情を浮かべている。
「タクマ、何したの?」
「収納魔法で、自転車を仕舞ったんだけど」
「「「収納魔法って存在したんだ!?」」」
どうやるのか教えてくれとせがまれたが、どう説明していいのかわからないので、後日説明するということで、その場を収めた。
………
……
おれ達はギルドカードを見せ、町に入った。
「ねえタクト、宿屋は決まっているの?私達がいつも泊まっている宿屋にするけど、あなたもどう?」
「うん、いいよ」
ルフィナ達に連れられ宿屋に向かった。
……
…
宿屋:
「すみません、2人部屋は2部屋しか空いてないんです」
宿屋の受付嬢がすまなそうに説明する。
「じゃあ、おれは違う宿屋探すから、みんなはここに泊まって」
「お金がもったいないから、タクマもどっちかの部屋に泊まるといいよ。ノエルと2人きりは駄目だけど、私かセルジュなら平気だから」
信用されているんだか、嘗められているんだか?ちょっとドキドキ。
町のお風呂屋さんで汗を流し、食事を終え宿屋に戻った。情報交換しようということになり、おれの寝るほうの部屋にみんな集まった。2つ並んだベッドを引き離し、ヘッドに向かい合わせに座り、みんなで会話する。
「あの自転車、さっき借りて動かしてみようとしたら全然動かないんだけど、タクマが動かすとどれくらいのスピードが出るの?」
「う~ん、コンタクト村を朝出発して、昼前にはノーマン帝国の王都に着くくらい」
「何それ、馬より全然早いじゃない。ちょっと異常なスピードね。そういえば、乗せてもらったお礼を、まだしてなかったね。
お金がいい?それともわたし?」
ルフィナが爆弾を落としてきた。
何それ、誘っているの?
「そういえばタクマ君、さっき胸ガン見していたわね」
セルジュさんまで爆弾を落としてきた。
「そうなんですか?タクマさん」
「出来るだけ、紳士的に対応させていただきます」
セルジュさんの胸を見ながらそういった
『マスター、行動と言葉が合っていません』
「…」
…
「タクマはなんで冒険者をやっているの?」
ルフィナが聞いてくる。
「情報収集かな。おれは故郷に帰る手段を探しているんだ。おれの故郷はすごく遠くて…日本というところなんだけど」
「日本…?」
「みんなはなんで冒険者やっているの?」
おれもルフィナ達に聞いてみる。
「私は縁談話が嫌で、縁談断るんだったら冒険者になって少し家の仕事を手伝えと言われて」
ルフィナは縁談拒否か!
「私は両親が冒険者だったから」
セルジュさんは親が冒険者と。
「私は、本当は魔法学校行きたかったんですけど、落ちちゃって。やることなくて冒険者やっています」
ノエル可哀そう。
その後、どこ国はどうだとか、どこの町に行くと稼げるとか、そんなことを話した。
……
…
「そろそろ、寝ようか」
ここで解散となった。
ルフィナがベッドをくっ付けている。
「なんでベッドくっ付けてるの?」
「元に戻しているだけだけど…紳士なら大丈夫だよね?」
(あまり自信がないです…)
………
……
…
夜が明けた。隣のベッドを見る。
ルフィナの寝ていた布団がはだけている。服もはだけている。
(う~ん眼福)
『マスター、襲うのですか?』
あ、魔剣スパルタンに見られていたんですね。
…
みんなで朝食を食べ、ノーマン帝国の王都に向けて出発した。
………
……
…
湖の近くに来たところで、後ろから大勢の人間の気配がした。
「おい、そこの変なの止まれー」
「「「「「おらおら止まれー」」」」」
馬に乗った男が20人が、後ろからサイクロン号を煽ってきた。盗賊みたいだ。
「タクマ、盗賊よ」
そのうち10人がサイクロン号の前に回り込み行く手を塞ぐ。
「みんな、止まるよ」
みんなに声を掛けブレーキをかける。ルフィナ達が剣を抜く。
一人の男とその取り巻き2人が前から近づいてきた。
「おい、おとなしく、そこの荷物と女を渡せ」
「断る」
それを合図に前の1人と後ろの2人が弓を構える。
すかさずおれは斬撃を飛ばして前の1人を倒し、石弾ストーンバレッドで後ろの2人を倒す。
それに驚いたように他の盗賊達が一斉に武器を構える。
「歯向かおうってのか?」
そのまま盗賊を放置して、後々他の犠牲者が出るのも忍びない。ついでにお金ももらっておこう。
「いや、面倒だ。お前らが有り金全部と、装備を置いていけ」
おれはそう返した。
そういうとおれは瞬時に1人だけ残し、すべて拳で殴り気絶させた。
目が覚めても抵抗できないように、背面観音縛りで縛った。
「「すごい」」
ルフィナとセルジュさんが、おれが1人で盗賊を制圧したことに驚いている。
「すごいです。こんなの見たことないです。ハァハァ」
ノエルが違うことに興奮しているようだ。
敢えて倒さずに残しておいた1人に、倒れている盗賊全員の装備を剥ぎ取らせ、リヤカーに積んでいく。
「さて、この後どうしよう?」
「タクト、盗賊のアジトがあるはずよ。前に盗賊征伐の依頼を受けた時、アジトは潰しておくようにと言われたわ」
「ちょっと寄り道になるけど、そうするか。で、気絶しているやつらはどうしよう?」
「その辺の木に縛り付けておけば、巡回警備員が見つけてくれるんじゃない」
近くの木に縛り付けることにした。
……
…
1人だけ倒さずに残しておいた盗賊に、アジトまで案内させた。
アジトには掘っ立て小屋が10棟くらい建っている。
近寄ると3人の男が出てきた。
おれは投降を促すことにした。
「お前らの仲間はみんな捕まえた。抵抗すれば殺す」
「ほんとうか?」
3人のうちの1人が聞いてきた。
「ああ、みんなやられた。瞬殺だった」
一緒に連れてきた盗賊が応える。
3人の男からは戸惑いが見えたが、結局仲間の言葉を信じたのか、素直におれに従った。
「ルフィナ、これでお終りってことで、いいのか?」
「いいえ、まだお宝探しが残っているわ。盗賊のお宝は征伐した人の物なの」
みんなでお宝を探してみた。けっこうな数の装備品や剣が出てきた。お金もそれなりに出てきた。
『マスター、地中から剣の気配を感じます』
(え、スパルタン、どのあたり?)
『一番端の建屋の中です』
建屋の中に入って、木の蓋があったので開けてみる。綺麗に装飾された剣などが入っていた。
「ねえ、見てみて、これなんか、まさにお宝って感じよ。王様が持ってそう」
ルフィナが剣を持ってはしゃいでいる。
「じゃあ、この4人の盗賊を連れて、さっきのところに戻るよ」
そういって、おれ達は盗賊と出くわした湖の近くまで戻って行った。
………
……
…