10.裁判
盗賊のアジトから、盗賊を縛り付けた場所まで戻ったところ、10人ほどの街道警備隊が、おれ達が縛り付けておいた盗賊に尋問を行っていた。
おれ達が近づく。
「「「なんだ、お前らは?」」」
街道警備隊が警戒心を露にして怒鳴ってきた。
「私はそこの盗賊を捕えた者です。冒険者をやっています。残りの盗賊4人も連れてきました」
おれが応えた。
「何、ほんとうか?」
街道警備隊のリーダーらしき人が聞き返してきた。
「ええ、この4人も引き渡しますので」
おれは持っていた、盗賊を縛った手綱を街道警備隊に差し出した。
「…」
少しの沈黙の後、リーダーらしき人が手綱を引き取る。
「うむ、協力感謝する。我々は街道警備隊だ!私は部隊長のズルダン。で、お前らはいったい何者なんだ?」
「私は冒険者のタクマです。こちらは盗賊退治に協力してくれた冒険者達です」
「たった4人で、これだけの数を倒したのか?」
ズルダンが少し怪訝そうな顔をした。
「はい、そうです」
街道警備隊員らが、なにやら小声で相談し始める。
…
「あー、報酬は明日渡す。街道警備隊の事務所まで取りに来い。それから回収した物も報告する必要があるので、一旦我々が預かるからここに出すように。預かった物は明日お前たちに引き渡す」
部隊長のズルダンがそう言ってきた。
「ルフィナ、どうする?」
「任せるわ、討伐はあなた一人で行ったようなものだもん」
(おれはこの世界の事情に疎いからなー、報酬やお宝だってそんな欲しいわけでもないんだが)
「報酬は王都で受け取れるのですね?」
おれはズルダンに聞いてみる。
「ああ、明日、王都の街道警備隊の事務所で渡す」
「わかりました。お渡しします」
そう言い、回収した装備、武器、お金をすべて街道警備隊に渡した。
街道警備隊の聞き取り調査が一通り終わったあと、おれ達はサイクロン号に乗って王都を目指す。
……
…
「ねえ、タクマの強さって尋常じゃないわよね」
道すがら、ルフィナが聞いてきた。
「死ぬほど鍛えられたから」
そう応えながら、魔剣スパルタンに鍛えられた日々を思い出していた。
………
……
…
ノーマン帝国の王都の城壁の門が見えた。ギルドカードを見せて城壁内に入る。
依頼されていた荷物を届けに、冒険者ギルドに向かった。
冒険者ギルド:
カウンターで依頼の荷物を渡す。
「コネクト村から、依頼の荷物を運んできました」
「はい、ご苦労様です。少々お待ちください」
受付嬢がそう言って、荷物を持って奥の部屋へ入っていった。
…
「確かに依頼の荷物です。こちらが報酬になります。お確かめください」
「はい、間違いないです。ありがとうございます」
荷物を届け終わったので宿屋を探しに向かった。
3人部屋と1人部屋があった。今日はドキドキイベントなし。
………
……
…
翌朝。
朝食後、みんなで街道警備隊の事務所に向かう。
街道警備隊事務所:
「何か用か?」
面倒くさそうに受付が聞いてきた。
「昨日の盗賊征伐の報酬を頂きにきました」
おれが事務所に来た理由を語る。
「昨日の盗賊征伐の報酬?昨日の盗賊征伐は我が街道警備隊が行ったもので、外部の協力者は居ないと聞いている」
話がおかしい。
「いや、おれ達4人で盗賊を捕えたのですが」
「お前達4人だけでか?冗談をいいにきたのか?アハハハ」
「ねえタクマ、あなたの手柄を街道警備隊が横取りしたんじゃない?」
ルフィナが疑念を口にする。
おれ達の後ろから、昨日会った街道警備隊のズルダンがこちらに向かって歩いてきた。
「横取りしたとは人聞きが悪い。報酬欲しさにいいがかりか?たしか昨日の征伐のとき遠くから見ていたやつらだな。自分達の手柄にして報酬でも貰うつもりか?」
「何それ、ふざけないでよ!私達が預けた回収品返してよ。お宝級の剣もあったはずよ」
ルフィナが怒り出した。
(この展開はまずいなー)
「えっと、ルフィナ、今は黙ってて」
とおれはフィナを黙らせる。
「また改めて話をお伺いにきますので、今日はこのまま失礼します」
おれ達はそのまま足早に街道警備隊の事務所を後にした。
【警備隊部隊長ズルタン視点】
回収した宝剣は、王国騎士団への紹介状を書いてもらう見返りに、サットン公爵様に献上した。
今回の盗賊団の討伐の実績を引っ提げて、王国騎士団に入団させてもらう手はずになっている。
このことは誰にも知られてはならない。やつらを盗賊の仲間として引っ立てて、口封じのため死んでもらおう。
………
……
…
【タクマ視点】
宿屋:
宿屋に帰り愚痴と作戦会議を行う。
「あの街道警備隊、ほんと頭にくる」
とルフィナが怒りを露わにする。
「訴え出るにしても、どこに訴えていいかも分からないし、そもそも棚ボタみたいなもんだからなー。諦めてもいいんじゃない?」
「王国騎士団に訴えるのよ。きっと公正に裁いてくれるわ」
「ドンドン」
『マスター、敵意を持った誰かきました』
魔剣スパルタンが警告を発する。
「冒険者タクマは居るか?居るならでてきなさい」
警戒しながらドアを開けると、5人の街道警備隊が飛び込んできた。
「我々は街道警備隊だ。タクマとその仲間を盗賊征伐の虚偽の伺いで逮捕する」
みんなに諦めて従うよう促した。
「お前達の裁判は明日行われる。自分達の行いをしっかり反省しておけ」
街道警備隊の1人がそう言い放った。
……
…
留置所:
牢の扉がゆっくり閉じられた。
「どうしよう?おれ1人なら簡単に抜け出せるんだけどなー。いっそのこと、この国滅ぼしちゃおうか!」
『マスター、それはたいへん面白いと思います』
魔剣スパルタンが賛同する。
………
……
…
翌日 裁判所:
裁判が始まった。
裁判官席は王国騎士団の3人。
被告席はおれとルフィナ、セルジュ、ノエル。
原告席は例の街道警備隊が3人。部隊長のズルダンが居る。他の2人も見覚えがある。
傍聴席には気品のある紳士が1人。とその隣に鋭い目の老人が1人座っていた。気品のある紳士の関係者なのだろうか?
「これより裁判を行う。私は今日の裁判の裁判長を務める王国騎士団のジャスパーだ。街道警備隊のズルダン、容疑者の罪状を述べよ」
「街道警備隊のズルダンです。
ここに居る冒険者タクマ、他3名は、一昨日盗賊が征伐された際、ただ見ていただけなのにも関わらず、昨日街道警備隊の事務所に押しかけて、自分達が討伐したのだからその報酬と回収した装備、武器及び金を返せと言いがかりをつけて、街道警備隊から金品を騙し取ろうとしました。これは、詐欺罪及び脅迫罪にあたります」




