15.ガイアスに来ました
リレイロードからの転移後、おれは草原に中腰で立っていた。
「スパルタン、別の世界に転移したのか?」
『はいマスター、そのようです。
ところでその《中腰前屈み》の姿勢はなんですか?』
「未来から来たアンドロイドの登場シーンを再現したものだ!恰好いいだろう?」
『…情報の収集を開始します』
…
『情報収集を終了しました。この世界はガイアス。精霊の力が満ち溢れた世界です』
「スパルタン、精霊の力って何?」
『たとえば、人は精霊の力を使って魔法を発動することや、身体能力を上げることができます。
また、精霊の力を借りれば、この世界の人と会話ができます』
外部から供給出来る魔力と闘気って感じか。
スパルタンに使えそうな情報を聞いてみた。
・現在の位置は、バグナール帝国のハンター村の近く。
・バグナール帝国の通貨は1ダル≒1円くらいだ。
・等々
「まずはお金の確保と身分証の取得か!」
魔剣スパルタンが一番近い町の方向を示す。とりあえず、サイクロン号でそこを目指す。
やがて、進行方向に、大きな猪のような動物が現れた。
「スパルタン、あれ、食べられる?」
『食べられます、マスター』
大きな猪のところまで走って接近すると、腰を落とし右腕を下げ、右拳を大きく振り上げた。
「《モーニングエレクションアッパー》」
大猪が宙を舞って落ちていく。
「絶命している?」
『まだ生きています』
その場で喉を引き裂き、血抜きをする。
「売れるといいけど」
………
……
…
転移してからの初めての村、バグナール帝国のハンター村に着いた。
「ハンター村へようこそ。身分証は持っていますか?」
「いえ、持っていません」
「そうですか、ではひとり1万ダルの通行料がかかります」
「持ち合わせがないので、この猪を売ろうと思っています。買い取ってくれるところはありますか?」
「ならここで買い取りましょう。少しお待ちください」
査定人らしき人が呼ばれ、査定を行っているようだ。
…
猪は10万ダルになった。そこから1人分の通行料を引いて9万ダルを受け取った。
「身分証明が欲しければ、冒険者ギルドか商業ギルドに行って登録するといいです。1万ダルほどかかりますがそれで身分は証明されます」
「わかりました。ありがとうございます」
とりあえず安そうな宿屋を探して一泊する。
明日は冒険者ギルドに行って冒険者登録しよう。お金も必要なので、ついでに依頼も受けよう。
………
……
…
翌朝:
冒険者ギルドに来た。
「冒険者登録したいんですが」
「登録するには簡単な審査が必要になります」
「はい、お願いします」
受付嬢が水晶玉を取り出した。
「これは嘘発見器です。嘘をつくと濁ります。じゃあこの水晶玉を触って、今からする質問に答えてください。
《犯罪を犯したことはありますか?》」
「いいえ」
「はい、結構」
水晶玉は濁らなかった。
「では登録料が2万ダルになります」
(あれ、町に入るとき、ギルド登録料は1人1万ダルと教えられたけど?ま、いいか)
その後、身長、体重、体の特徴などを記載用紙に記載し、指紋を取られ、身分証となるギルドカードを作ってもらった。
「これが冒険者ギルドの説明書です」
ギルドについての説明書受け取る。
この世界の冒険者にも冒険者ランクがあるらしい。
D級~A級に分かれている。
「依頼を見せてもらってもいいですか?」
「左上にD級と書かれているのが、あなたのレベルに合った依頼です」
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依頼
S級 《ホワイトゴーレムの欠片の収集》報酬5億ダル 期限残り1か月
A級 《カウカウの討伐と肉の調達》 報酬25万ダル 随時
:
B級 《ビッグボアの討伐と肉の調達》 報酬12万ダル/1匹 随時
B級 《用水路の清掃の護衛》 1万ダル/1日 本日
:
D級 《淡霧草の採取》 報酬50ダル/1本 限定1万本
D級 《用水路の清掃》 6千ダル/1日 本日
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依頼にはS級という物があった。これはA級のパーティーが5組以上組んで受けられる依頼らしい。
D級はと…《淡霧草》採取の依頼やってみようか。
「この依頼受けたいのですが、初めてなので詳細を教えてくれませんか?」
受付嬢が指導係りの人を呼んでくれた。
《淡霧草》の標本と採取場所を確認し、地図を買わされた。
(スパルタン、この草の生えている場所分かる?)
『情報収集します…おおよその位置はわかりました』
「じゃあサクサク採取してこよう」
……
…
その日は、夕方まで《淡霧草》の採取を続け、合計400本になった。
2万ダルになるはずだったが、1万6千ダルしかもらえなかった。
「あの、400本あるので、2万ダルになるんじゃないんですか?」
「あ、ごめんね、他にも《淡霧草》を持ち込んだ人がいて、1本40ダルになったの」
周りの冒険者達がクスクス笑っている。
「え、ですが依頼用紙にはまだ1本50ダルと書いてあります」
「訂正するのを忘れていたわ。後で訂正しないと」
次の日も《淡霧草の採取》の依頼を受けてみる。
「あの《淡霧草の採取》の依頼、きょうは1本50ダルで間違いないですか?」
「ええ、間違いないわ」
……
…
その日も夕方まで採取を続け、昨日と同じように400本渡した。
「報酬は1万ダルになります」
「今朝確1本50ダルと確認しました。2万ダルの間違えでは?」
「マスターに聞いてください」
するとそこへやけに体のゴツイおじさんが現れた。
「何を騒いでいる。お前は昨日登録したという冒険者か?
採取の仕方が悪かったんだ。半分は使い物にならないから報酬は1万ダルだ!」
また周りの冒険者達がクスクス笑っている。
ちょっとした新米冒険者虐めってやつか。
もういい、少し大きい町へ移動することにしよう。
移動する前に持ち物を売ってお金にするか!
「わかりました。
では、このポージョン売りたいんですけど、買い取って頂けますか?」
と、マリアナさんが作ってくれたポージョンを差し出す。
「これ、ポージョン?マスターちょっと確認お願いします」
指先でポージョン掴み、ぷらぷら左右に振っている。
「どれどれ」
受付嬢がマスターにポージョンを渡そうとした瞬間、瓶が指から滑り落ちてしまった。
飛び散ったポージョンが一瞬虹色に輝いた。
「あ、ごめん、割っちゃった。マスター、業務上の過失ってことでギルド経費でお願いします」
「割ってしまったものはしょうがないなー、ほれ1千ダルやる、これで十分だろう」
と、悪びれる様子もなく、1千ダルをおれに差し出した。
………
……
…
翌日 バグナール帝国諜報部:
「宰相、探していたエリクサーが見つかりました」
「何、本当か!どこにあった?急いで手に入れろ」
「エリクサーはハンター町の冒険者ギルドにありましたが、瓶が割れて飛び散りました」
「瓶が割れただと?」
「はい、受付嬢がギルドマスターにエリクサーを渡そうとしたときに、誤って割ってしまいました」
「その冒険者ギルドのマスターに伝えよ!30日以内に、変わりのエリクサーを見つけろ。見つけられなければ斬首だと」
翌日 冒険者ギルド:
「冒険者ギルドマスターに勅命を伝える。エリクサーを損失させた失態は許し難い。
よって30日以内に、変わりのエリクサーを見つけろ。見つけられない場合は斬首とする」
国の使者が勅命を伝える。
「私はエリクサーなど知りません!」
ギルドマスターが慌てて否定する。
「先日受付嬢から渡されたエリクサー入りの瓶を落として割ったことは調査済みだ。
飛び散った液体が虹色に輝いただろう?あれはエリクサーならではの現象だ」
…
国からの使者が帰ると、ギルドマスターが慌ただしく受付嬢に詰め寄った。
「おい、先日の新人冒険者はどこに行った?」
「2日前にこの町を出て行きました。何か用事でもありましたか?」
「先日割ってしまったポージョン、あれは帝国が必死になって探していたエリクサーらしい。
代わりのエリクサーを探して献上しなければ、おれは斬首だそうだ!お前も無事に済むとは思うな」
「え、エリクサー…私はあの瓶をちゃんとマスターに渡したわ、割ったのはマスターで私のせいじゃないわ!」
「国からしたらどっちが落としたなんて、どうでもいいことだろうよ。斬首の対象はおれとお前だよ!」
「イヤーーー」
何事かと、周りの冒険者が集まってきた。そこには頭を抱え震えているギルドマスターと、白目を剥いて失禁している受付嬢の姿があった。




