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魔剣の呪いがスパルタって!  作者: 軒下水滴
アトラス編
14/31

14.2度目の転移

 初代ラフエンテ国王と初代フロレス辺境伯は盟約を結んでいた。


 フロレス辺境伯が所有する本に書かれている、天界から来た男の話は史実であり、フロレス家は、男が天界から帰ってくることを信じ、ずっと待ち続けていた。

 ラフエンテ王国はフロレス家に領地を保障し、フロレス家はラフエンテ国王の敵を、先祖代々の刀で倒し続けてきた。


 おれは選択を迫られている。

 ラフエンテ王国の《転移の洞窟》か?それともリレイロードの《転移の洞窟》か?


 もしペルジュ王国の《転移の洞窟》が地球への帰り道ならば、地球に帰った転移者は、子供に会うため、なんとしてもこの世界に帰ってくる方法を探すはずだ。

 それが出来なかったということは、地球ではないよほど過酷な環境に移転したか、もしくは地球で、《転移の洞窟》を見つけることが出来なかったことになる。


 おれはラフエンテ王国の《転移の洞窟》ではなく、リレイロードの《転移の洞窟》に賭けてみることにした。


 そして、ルフィナと別れて、リレイロード王国の王都へ向かった。


………

……


 リレイロード王国の王都の前、おれは街に入る手続きをする。

「冒険者のタクマです。ギルドの依頼を受けながら旅をしています。これがギルドカードです」

「滞在予定はどれくらいですか?」

「王都には10日くらいで、あとはギルドの依頼を受けながらリレイロード王国内の町を回る予定です」


 とりあえず宿屋を決めて荷物を置く。

「そういえばスパルタンはトウゲン村に長く居て、内情にも詳しいんだっけ?」

『はいマスター、人々の会話から、情報収集していましたので』


「アーロンさんにリレイロード王国にお勧めの店があるって聞いたけど、アーロンさんってトウゲン村にくる前はリレイロード王国にでも居たの?」

『はい、リレイロード王国内では、かなりの地位にあったみたいです』

「そうか。ならちょっと名前使わせてもらおうかな」


……


 アーロンさんがお薦めの《アントン》という喫茶店を探して入ってみた。

 地球の喫茶店みたいで、清潔で感じのいい店だ。とりあえず、空いている席に腰をかける。

 年配のおばさんが、水を運んできた。

「ご注文が決まりましたら、お呼びください」


「アーロンさんという方のお薦めでこの店にきてみました。マテ茶をお願いします」

 年配のおばさんは、一瞬、怪訝な表情を浮かべたが、すぐに驚いた表情に変わった。

「まあ、アーロンさんの紹介ですか!よく来てくださいました。アーロンさんはお元気ですか?」

「はい、トウゲン村で元気にやっています。私もいろんな仕事を紹介してもらいました」

「まあ、あなたもトウゲン村の出身なんですね。マテ茶は炒ったものと炒っていないものがありますが、どちらをお持ちしますか?」

「では炒ったものをお願いします」



「お待たせしました。これが当店自慢のマテ茶と、サービスのお菓子です」

 サービスまで付いてきた。ありがたく頂こう。

「頂きます」

 一口飲んでみた。

「ちょっと香ばしくて、すっきりして飲みやすいです」

 ほうじ茶に似ていた。



「ごちそうさまでした。あのーちょっとお尋ねしてもよろしいですか?」

「はい」

「この街に図書館はありますか?」

「ええ、ありますが…そうですね、王城の図書館にでも行ってみてはいかがですか?」

「え、そんなところに入れるんですか?」

「ええ、アーロンさんの紹介だといえば入れてくれます。バッジか何か預かっているのならそれを見せてあげてください」

「そういえば、出がけに何んかバッジを頂きました…」


……


城門前:

 喫茶店を出て、城門の前にきた。

 道行く人がみんな遠巻きにみているが、誰も城門に近づこうとはしない。本当に入っても大丈夫なんだろうか?

「すみません、冒険者のタクマと申します。城の図書館で調べ物をしたくて来ました。あ、アーロンという方の紹介できました」

 恐る恐る聞いてみた。

「お前が王城の図書館に?…何にしても、今日すぐには無理だ。お前の用事は事務係りに通しておくのでまた明日来てくれ」

 明日出直すことにして、その場を後にした。


………

……


翌日、また城門に来た。

「すみま…」

「あ、お待ちしておりました。昨日は失礼いたしました。どうぞこちらに。

 アーロン様からお預かりしている物があれば拝見したいのですが、よろしいでしょうか?」

「頂いたものですか!?このバッジくらいですね」

 門番がバッジを恭しく持ち確認している。

「大変貴重な物をありがとうございます。それでは図書館の管理人にご案内させますので」


 絢爛豪華な図書室に連れていかれた。

「風土期と奇伝はどの辺にあります?」

 図書館の管理人に聞いてみる。

「は、こちらと、その隣の棚になります」

 本も豪華な装丁だった。


 ひとつの風土期を見つけた。

 文献によると山間の村のドラゴンの巣のすぐ側に神隠しの洞窟があるという。

 ドラゴンが近くに居るため誰も近づけない。


 奇伝物も見つけた。ルフィナのところにあった本とほぼ同じ内容だった。

 少しエッチな挿絵があった。

 この際だ、異国の性事情も調べておこう。

「あのー、性的な本ありますか?」

 おれは目を泳がせながら聞いてみた。

「………」

「いえ、なんでもないです…」

 諦めた。


………

……


転移の洞窟:


 図書館の本に書いてあったことを頼りに、《転移の洞窟》の近くに来てみた。

「ドラゴン見当たらないなー」

『今周辺には居ないようです』

「じゃあ、早速洞窟の中を見てこよう」



 洞窟の中を突き進む。Y字路に差しかかる。分かれ道の手前で、2メートルくらいのチンチラが座ってこちらを眺めていた。

(チンチラだよね?)

 表情が分からない。近づいてみたが、動かない。

「見えてないのか?」

『どうなんでしょう?』

 試しに左手を上げて振ってみた。

 するとチンチラも右手を上げて振って来た。

「なんだこれ?」

 今度は剣を左手に持ち替え、空いた右手を振ってみた。

 するとチンチラも左手を上げて振って来た。

「…ちょっと可愛いな」

 そのまま額の辺りを撫でてみた。首を上下させて喜んでいるみたい。

 キャベツを上げてみようと差し出した。キャベツを受け取り喜んで食べている。

 襲ってくる気はないみたいだな。

 無視して行こうとすると、チンチラが先導するように前を歩き出した。

「ついて来いっていっている?何んかわかんないけど、ついていってみるか」

 分かれ道に差しかかるたびに、チンチラがおれの方を振り返ってみている。

 首を縦に振って、大丈夫だよと意思表示をする。



 やがて、紫色のモヤが見えてきた。

「おれが転移した時もピンクのモヤを見たなー。これに触れると転移するのか?」

『そのようです』

 チンチラが離れてみている。

 チンチラに、ありがとうの意味を込めて、もう一つキャベツを差し出した。喜んで食べている。

「洞窟も確認出来たし、帰ろうか」

 そういって歩き出すと、チンチラがまた先導するようにおれの前を歩き出した。

 こいつもしかして賢いのかも?



 チンチラの先導で、迷うことなく洞窟の外に出ることが出来た。

「ありがとう」

 といい、リンゴを与えてみた。キャベツよいも食いつきがいい。



「バサッ、バサッ」

 上空から羽ばたく音が聞こえてきた。

「ドラゴンか」

『そのようです』


「ドーン」

 ドラゴンが舞い降りた。というかほとんど自由落下で落ちてきた。

「ドーン」

 今度はドラゴンが横に吹っ飛んだ!

「え!」

 チンチラが横っ飛びして、ドラゴンを蹴り飛ばしたみたいだ。

 ドラゴンは気絶しているようだ。

「スパルタン、このチンチラ、メッチャ強くない?」

『そうですね。どれくらい強いのか不明です』

 何か納得いかないまま、チンチラのリンゴを与え、撫でてあげた。



「それじゃあねー、ありがとう」

 おれは手を振りチンチラと別れた。チンチラも手を振り返してきた。手を振る意味を分かっているんだろか?

「さて、一旦トウゲン村に帰ろうか!」


………

……


トウゲン村:

「これから、アースロード王国にある《転移の洞窟》へ入り、私の元いた世界を目指します」


「タクマ君、空飛ぶ自転車作ってみたんだけど、持っていく?」

「キャシーさんレイラさん。ありがとうございます。

 すごいな。プロペラと羽付きですか!?ちなみに材質は何ですか?」

「アダマンタイトと鉄の合金。アダマンタイトだけだと重くなっちゃうからね。あと、修理用にこのアダマンタイトも持って行って」


「タクマ君、体力ポージョンと癒しの飴を作ったんで持っていって。材料とレシピも入れとくね」

「マリアナさん、ありがとうございます。助かります」


「タクマ、わしが昔集めた武器を何本か持っていけ。お金がないとき売ってお金にしろ」

「ありがとうございます。リハク師匠」


 それと、

 ゴードンさんからはお面とマント、数十セットを貰った。なんでも《男はたまに変身したくなる》ものだとか。


 パトリシアさんからはハリセンを数個貰った。叩かれると半日分の記憶が消えるらしい。


 アーロンさんからは、いくらの価値があるか分からないほど大きな宝石を頂いた。なんていい人なんだろう。


『マスター、私の分身をこの世界に置いていきます。リハク氏に預けてください。これから何度転移するか分かりませんが、転移するごとに道標として分身を置いていきます。ちなみに剣を握っても恩恵(呪い)はありません』

 魔剣スパルタンの分身をリハク師匠に預けた。


「元の世界に戻れたら、今度はアトラスへ転移する方法を見つけて出して、またここに戻ってきます。

みなさん、それまでお元気で」


………

……


山の中の転移の洞窟:

 洞窟の入り口近くに、この前のチンチラがいた。

 今回もチンチラが転移の洞窟まで誘導してくれた。


 紫色のモヤ前で暫し佇む。

 さすがにこの紫色のモヤは不気味すぎる。中に入るのは、かなり勇気がいる。

「何とでもなれやー」

 意を決して、紫色のモヤの中に飛び込んだ。

 眩しい光がおれを包み込んだ。


(何か格好いい登場ポーズってあったっけ?)

 おれは中腰に屈んでみた。


………

……



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