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Magica Technica ~剣鬼羅刹のVRMMO戦刀録~  作者: Allen
MG ~Miniature Garden~

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277/987

274:オーガの集落へ

書籍2巻発売記念、連続更新中です。

書籍版マギカテクニカ2巻は、本日9/19(土)に発売となりました!

全国書店、ウェブサイト、また電子書籍でもご購入いただけます。

ご購入いただけた方は、是非巻末にあるURL、QRコードからアンケートにご協力ください。


HJノベルズ紹介ページ

http://hobbyjapan.co.jp/hjnovels/lineup/detail/263.html


Twitter

https://twitter.com/AllenSeaze












 エレノアによってもたらされた情報、成長武器を強化するために必要となる三つの素材。

 それを落とす三体のネームドモンスターの内の一体、『暴食の悪鬼ブラッディオーガ』――それを最初の標的と定めた俺たちは、南西の街シェーダンまで移動していた。

 こちらには既に多くのプレイヤーが流入しており、生産系のプレイヤーたちによって街の復興が進められている。

 生産系のプレイヤーにとっては、生産活動が最も効率よく経験値を稼ぐ方法なのだ。復興中の街は、彼らにとってはこの上ないほどの稼ぎ場所なのだろう。

 まあ、俺たちもこれから狩場に向かうと考えれば、俺たちも彼らも似たようなものなのだろうが。



「あ、先生。行く前に教会に顔を出していきますか?」

「ああ、あの子供たちか。戻ってきてからでもいいんじゃないか?」



 歓迎するとは言われていたが、今はあまり時間の余裕もない。切羽詰まっているというほどでもないが、流石に歓待を受けているような時間は無いのだ。

 緋真もそれは分かっているのか、特に反論することもなく首肯して引き下がった。

 落ち着いて話をするのであれば、ディーンクラッドを倒した後の方が良いのだろう。今は、誰もが戦っている状況だ。



(……話、ね。そういえば、オークスとも話しておいた方がいいんだろうな)



 剣聖オークス――ブラッゾは、かつて彼の弟子であった存在だ。

 剣に狂い、オークスによって斬られたと聞いていたが、まさかあのようなことになっていようとは。

 あの男は、結局の所方法を間違えてしまっただけなのだろう。

 《奪命剣》で相手の生命力を奪うことは確かに言い知れぬ快感があることは事実だ。しかし、それで人を斬ることに対する抵抗を失い、進むべき道を見失ってしまったのだろう。

 強くなる方法も、剣聖を目指す道も、幾らでもあったはずなのに。

 まあ、何にせよ彼と話すのも先の話となるだろう。そこまで考えて、俺は思わず苦笑を零した。



「……終わったらやること、か。捕らぬ狸の皮算用だな」

「現状だと、まだ先が見えないですからねぇ。でも、必ず勝ちますよ」

「ああ、そうだな。勝たねばならん」



 恐らく緋真は教会のことを言っていたのだろうが、特に否定する理由もなくそのまま頷く。

 とはいえ、オークスに色々と伝えるのは悩みどころではあるのだが。

 彼は恐らく、ブラッゾが悪魔になっていたことは知らないだろう。

 既に斬った男が何故か生きていて、それが悪魔になっていた……いや、死んだブラッゾが悪魔になって生き返ったのか?

 どういう仕組みなのかはよく分からんが、どちらにしろオークスからすれば寝耳に水な話だろう。

 心穏やかにはいられないだろうが、黙っているのも不義理な話だ。それに関しては伝えなければならないだろう。


 そんな事をぼんやりと考えながら、街の入口まで足を進める。

 向かう先は更に南西、山々の間にあるという盆地だ。

 オーガたちはその近辺に集落を作っており、そのボスとなる存在がブラッディオーガであるという。



「向かう先は……確か、あっちの山とそっちの山の間だったか」

「ええと……そうね、地図の上ではそうなってるみたい」

「なら、飛んでいくとするか。流石に、あそこまで移動するには距離があるからな」



 地上を行ってもいいのだが、この辺りはランドシープたちの生息域に近い。

 あいつらも狙い目の相手ではあるのだが、戦闘にどうしても時間がかかってしまうのが難点だ。

 それに、そこそこ使える素材だからということで、現在多くのプレイヤーが狩ろうとしている対象でもある。

 流石に、標的でもないのに他の連中の狩場を荒らすのもどうかという話だろう。



「よし……行くとするか、セイラン」

「クェ!」

「あんまり気合を入れ過ぎないでくださいよ? ストームグリフォンだとペガサスじゃ追い付けないんですから」

「分かってるさ。しかし、セイランも成長したもんだな」



 小さく笑いながらセイランの背に跳び乗り、合図を送る。スピードの件もあり、アリスもこちらに乗せることにしよう。

 緋真に釘を刺されたこともあってか、ある程度速度を押さえて地を蹴ったセイランは、そのまま翼を羽ばたかせて上空へと舞い上がった。

 あっという間に離れていく地上には、幾人かこちらを見上げている人々の姿が見て取れる。

 彼らはプレイヤーか、或いは現地人か。多少増えてきたとはいえ、飛行できる騎獣を持つ者は少ないし、どちらから注目されたとしても不思議はないだろう。



「あら……ランドシープの群れね」

「空中からでも目立つな、あいつらは」



 地上を大移動している羊の群れ。その後ろには、奴らを追い立てる黒い牧羊犬たちの姿が見える。

 そして、そんなランドシープたちの向かう先に、逃げ惑う数人のプレイヤーの姿。

 どうやら、奴らの突進に対処しきれないようなパーティであったようだ。

 正直な所、奴らはかなりの数がいるわけであるし、もっと大人数のレイドを組んで対処した方が良いのではなかろうか。

 まあ、大量の素材を得たいからこそ少数で挑んでいたのかもしれないが、押さえきれないのでは本末転倒だ。



「……先生、あれ助けます?」

「いや、横槍を入れるもんでも無かろう」



 負けるのであれば、次への反省とすればいい。俺たちには、それが許されているのだから。

 尤も、また同じことをして負けるのであれば、それは擁護のしようもないのだが。

 地上からは視線を外し、再び前へ。前方に見える山々はそれほど遠いわけではない。あと数分も飛んでいれば、目的地まで到着できることだろう。

 そうして目標時間を測っている時、隣に並んできた緋真が疑問の声を上げた。



「ところで先生、今回はどうやって攻めるんですか? 上空から突撃とか?」

「お前な、流石にそんな無茶をするわけがないだろうが」

「いや、先生は普段から割と無茶をやってる気がするんですけど」



 半眼でこちらを見つめながら何やら心外な発言をしてくる緋真に、こちらもまた半眼で睨み返す。

 俺は多少賭けに出ることがあったとしても、それは勝算があるからこその行動だ。

 どう足掻いたところで勝ち目のないような行動などするはずがない。



「あのな、今回はオーガの群れだぞ? 適当に突っ込んで勝てるような相手じゃない」

「まあ……それは確かにそうですけど。それじゃあ、少しずつ削っていくような感じで戦うんですか?」

「それもいいんだが、時間がかかりすぎるからな。とりあえず、まずは状況の確認だ」



 相手の群れがどのような規模であるのか、どれほどの強さの敵がどれぐらいの数いるのか。

 そして、標的であるブラッディオーガはどのような外見で、どのような武器を使い、どんな性格をしているのか。

 知るべき情報はいくらでもある。そして、知ることさえできれば取れる対策も幾らでもある。

 故に、まずは情報の収集が必要なのだ。



「……つまり、最初は私が潜入して調べてくるってことよね?」

「それが一番手っ取り早いな。頼めるか?」

「まあ、いいけどね……実際、無策に挑むよりはその方が安全でしょうし」



 こういう時に頼りになるのがアリスだ。

 アリスの隠密能力であれば、オーガ相手には発見されない可能性が非常に高い。

 まあ、急所を一突きにしても死なない可能性があるため、接敵は避けなければならないが、そこは安全を取って行動するよう注意すれば何とかなるだろう。

 無論、アリスの背負うリスクは大きいが、どうやら彼女も納得してくれているようだ。



「まあ、とりあえずは上空からの偵察だ。その後、森に潜んで作戦を立てつつ機会を伺い、行動に移る。それで問題は無いな?」

「ええと……はい、とりあえず大丈夫だとは思います」

「お父様のご随意に」

「私も了解。まあ、話を聞いた感じ、ネームドモンスターでそんなことをする必要があるのは今回だけでしょうしね」

「済まんな、よろしく頼む」



 大雑把な方針も立てたところで、ようやっと山の裾野辺りに到着する。

 ここから地上に降りて探索でも良いのだが、先にオーガの集落を上空から探索したい。

 そのため、まだ地上には降りず、真っすぐと山の間を進むことにした。

 山々の間と言っても完全に谷になっているわけではなく、緩やかな坂を描く山道となっているように見える。

 一応、両方の山から流れ込む水があるためか、そこそこに水量がある川が流れており、木々のない川沿いを長距離に渡って見渡すことができた。

 どうやら、川沿い付近であれば山中でも着陸することはできそうな様子だ。

 川を辿るように先へと進み――その源流らしきちょっとした湖を超えて、更に先へ。



「あ……先生!」

「ああ、見えてきたな」



 目を凝らしながら緋真が挙げた声に、俺は頷きながら応える。

 山間を越えた先にある、窪んだ平地。あまり大きくはないその領域に、小さな集落があるのが見て取れた。

 山々に囲まれ、普通では発見が難しいような場所。そこに動き回るのは、人間よりも大柄な体躯を持つ魔物――オーガたちだ。



「結構人里離れたところにあるわね……」

「人里に近けりゃ、集落になる前に潰されてるだろうからな。結果的にこの辺りになった、って所か?」

「設定なんだか現実なんだかよく分からない話ですね」

「まあ、位置はこの際どうでもいい。問題は……」

「結構な数がいる、ってことね」



 とりあえず、セイランたちの高度を上げ、奴らには気付かれぬよう距離を取りながら上空から観察する。

 オーガたちの数はかなり多く、ざっと見た限りでも百体以上は存在していることだろう。

 やはり、これを相手に正面から戦うことは避けなければなるまい。


 簡素な木製の家屋らしき建物や、中央付近にある篝火、飾り付けられた動物の骨。

 どうにも奴らなりの文化があるようだが、その辺りの考察は今は放置しておく。

 気にするべきことは、奴らがそれなりの知能を有しているということだ。知能がある相手はそれだけ戦うことが難しく――同時に、罠にも嵌めやすい。

 上手くすれば、効率的に数を減らすこともできるだろう。


 と――その時、集落の中心近くにある一際大きな建物の中から、一体のオーガが姿を現した。

 他のオーガと比較しても巨大な体躯、赤黒い肌、背負っているのは何か巨大な魔物の骨を加工したと思わしき棍棒。

 あれは――



「……ブラッディオーガ」



 『暴食の悪鬼ブラッディオーガ』――俺の標的となる魔物の姿に、口の端を吊り上げる。

 間違いなく強敵だ。だが、全力で狩り取ってやることとしよう。











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