ninety thirth story
斉藤先生は少しにこやかに龍崎を見つめる。
「お前をここで見るのは久しぶりだなぁ・・・・、って、初めてか!」
先生は、龍崎に近づきながら語りだした。
「俺の夢はなぁ・・・。お前込みのこのクラスで、数学を仲睦まじく教えるのが夢だったんだ!!良くぞ、叶えてくれたっっ!!」
そういうと、先生はガバッと龍崎に抱きついた。
「なっ!!」
龍崎は力尽くで先生を引き剥がそうとするけど、先生はべったりとくっついていた。
クスクス クスクス
そうしているときに周りから笑い声がしだした。
その笑い声は次第に大きくなり、
「センセー!嫌がってんじゃん!!やめろよ〜」
「先生ってそ〜ゆ〜趣味?」
「うけるっっ!!」
いつの間にかクラス中は笑いの渦になった。
「だぁぁぁぁ!いい加減はなせぇ!!」
やっと龍崎は、先生を引き剥がすことが出来た。
龍崎は力みすぎて、顔が真っ赤になっていた。
「大丈夫かよ。龍崎〜」
そのときだった。クラスの男子が龍崎に声をかけたのは。
一気に教室が静かになった。
その男子は、一気に青くなった。
きっと、さっきのはノリだったんだろう。
今、彼からは恐怖が溢れていた。
「りゅうっ・・・・・」
「大丈夫だ。ありがとう。」
私が声をかけようとしたとき、龍崎はあの笑顔で答えた。
すると、男子は笑顔になって、へへへ、と笑った。
良かった。
クラスはまた、温かくなった。
でも、私は峯元たちはその光景を冷めた目で見ていることに気づかなかった。
先生はその光景を仁王立ちで眺め、よしよしとうなずいていた。
「ところで、龍崎君、先生はいつも疑問に思ってたんだよ。」
「なんすか?」
先生は二マッっと、笑う。
「君は、ぜぇんぜん授業に出てないくせに、テストの点はいいんだよなぁ・・・。ナニユエ!?」
龍崎はじっと先生を見て、
「俺、天才ですから。」
そのとたん、またクラスの皆は笑い始めた。
その光景を見てると、なんだか私も笑えて来た。
先生のおかげで、龍崎とクラスのみんなの壁が薄れて行ってるのが分かった。
そのムードを崩さないまま、数学の授業は終わりを告げた。
今日、私は初めて、この先生を心から尊敬した。
「神田。」
礼が終わって、皆が道具を片付け始める頃、先生は手をちょいちょいさせながら私を呼んだ。
龍崎に目を向けると、行って来いと言ったので、私は安心して行く事にした。
「なんですか?」
私が先生の前に行くと、いきなり先生は私の頭を激しく撫ぜた。
「神崎、お前が龍崎を連れてきてくれたんだろ?ありがとう。先生の中には、アイツのことを良く思わない、ガキンチョじみた心の狭い人も居る。・・・お前がサポートしてやってくれ。俺も手伝うからな。」
先生はそういうと、にこっと笑って教室を出て行った。
なんだか、直哉さんを思い出してしまった。
私もなんだか幸せな気持ちになった。
龍崎のほうに振り返ると、信じられない光景があった。
なんと、龍崎の周りにさっきの男子を初めとした何人かが集まってぎこちないながらも話していた。
「龍崎って、前回のテスト、学年5位以内だったんだって?」
「あ〜・・・、ワリ、俺、それ見てないから分かんねぇや。」
「見てねぇのかよ!!すっげ〜、ぜんぜん余裕?みたいな?」
「そ!余裕、見たいな?・・・って、冗談だぞ?」
そう、わきあいあいと、笑いながら話していた。
「良かったじゃん!奈緒!!龍崎上手くやっていけそうじゃん!それに。男子と居たら、沙織とかあんま話せないみたいだし!!」
優香が私の肩をバシッと叩く。
「・・・・・問題は、峯元たちだよね?」
恵里は、静かにそういった。
「なに、あいつ。調子乗ってるだろ。」
「ふざけてるし」
ぼそぼそと言う、峯元たち。
一番分かって欲しかった人に、分かってもらえてなかった。
その後も、特に問題無しで4時間目まで終えることが出来た。
どうやら、龍崎を良く思ってないのは担任だけらしい。
「龍崎!学食一緒に食いにいかねぇ?」
龍崎と仲良くなった佐々木たちが、誘ってきた。
行っちゃうのかな?
そう思いながら、隣にいた龍崎を見ると、私のほうを見て笑っていた。
「ワリ。俺、彼女と食うって約束してんだ。」
そういって、私の手を握った。
「ちぇっ!いいなぁ。俺らにも、紹介しろよなぁ!!」
そういうと、佐々木たちは手を振って学食へと向かった。
「龍崎・・・・、いいの?」
「?何言ってんだよ。良いに決まってるし。」
嬉しい。
友達より、私を選んでくれたことがすごく嬉しかった。
「じゃぁ、いってらっしゃ〜いvv」
優香と恵里はニヤツキながら手を振った。




