ninety second story
龍崎の沙織に向けられた優しい顔を見る。
少し胸が痛んだ。
なんだろう。これ・・・。
「ん?」
私の視線に気づいたのか龍崎が不思議そうな顔をする。
「えっ?ううん。なんでもないよ!」
そういって、私は龍崎の袖を引っ張って進み始める。
地面にへちゃげてる沙織たちの顔が異様にキモかった。
「なんだよ、急に・・。」
龍崎は少し困った顔をする。
「別に・・・。」
私はパッと袖を離す。
イライラするなぁ・・・・。
なんだか泣きそうになって、その顔が見られないように先々進んだ。
「どうしたんだよ。急に。」
龍崎は私の腕をガシッと掴んで、自分の胸に引き寄せる。
急なことで驚いたけど、直に感じるぬくもりは、次第に私のイラツキを落ち着かせた。
「ううん。なんでもない。ごめんよ?」
私はそう笑って、龍崎の胸の中から静かに出た。
しばらく龍崎は心配そうな顔をしてたけど、いつの間にか直っていた。
「よし!着いたね!!・・・・緊張するなぁ・・。」
それから3分ほどしてやっと、教室の前に着く。
「・・・、何でお前が緊張すんの?」
龍崎はフッと笑って見せたけど、私には不安と緊張が溢れているのがわかった。
そっと、手を握り、龍崎に笑いかける。
龍崎も笑い返して、静かに手を離す。
「行くか・・。」
「うん。」
私達は教室に足を踏み入れた。
教室が一瞬静かになる。
その沈黙を破ったのは、恵里だった。
「おぉ〜!ほんとに来たんだね。馨君!!」
続いて、優香も話しかける。
「初めまして!アナタのことはいつも奈緒から聞いてるよ。」
その二人の声をスイッチに、教室は再び騒がしくなる。
でも、その騒がしさからはいい雰囲気はなかった。
≪・・・龍崎じゃん・・・。何で来たんだろう?怖い・・。≫
≪何であんな不良みたいなのが、奈緒ちゃんの彼氏なんだよ・・。≫
≪・・・やっぱカッコイイ〜≫
ぼそぼそ聞こえる、雑音から耳をそむけ、優香たちと一言二言交わしてる龍崎に目を向ける。
「あそこだよ、席・・・てか、知ってるか。」
ああ。と、いいながら、龍崎は自分の席に向かって歩く。
龍崎が歩くたび、その近くに居る生徒は一歩後ずさりをした。
私はその龍崎の後をひょこひょこ着いて行って、その隣の席に座る。
「・・あれ、お前、俺の前じゃなかったっけ?」
「・・・変えてもらった。」
だって、不安じゃない?一人だったら・・・。
龍崎は少し笑って、ふ〜んと言った。
キ〜ンコ〜ンカ〜ンコ〜ン
そのとき、ちょうどチャイムが鳴って。先生が入ってきた。
それを合図に、雑音は一気に消えていった。
「はい、おはよ・・・・・?!」
教壇に着き、生徒一人ひとりの顔を見ていて驚いた先生。
考えなくても、龍崎を見たに違いない。
「・・・・・・。見慣れない顔が居るな。」
そういって、怪訝そうな顔をする。
なにさ?あれ・・・。
「ちょっ!!・・・。」
立ち上がろうとした私を、龍崎が抑える。
「ほっとけ。」
そう、真顔で言うけれど、龍崎からは怒りがにじみ出ていた。
「なんなのさ、あの先生!」
「確かに!馨君に対して酷くない!?」
「普通、喜ぶよね・・。」
HRが終わった後、私と優香と恵里は集まって愚痴っていた。
それなのに、当の本人、龍崎は涼しい顔をして、一度も使ってないようなぴかぴかの教科書に目を通していた。
「・・・多分・・、あいつ殴ったことあるから。まぁ、アレ、柔道部の顧問だし、生徒に負けたって言うのがいやで、なんともなかったけど・・・。だからじゃね?」
それを聞くと、先生もかわいそうに思えてきた。
「・・・・でもさ〜・・・「馨くぅんvvvv」
・・・・・・・・・・・。
来た。
フッとみてみると、奈津実が龍崎に抱きついていた。
「・・・・・何?」
それに対し、龍崎はまた朝のような笑みをつけて返す。
イラ
まただ。
またこの気持ち。
なんなのさ・・・・。
「へぇぇぇいっ!君たち!早く席に着け!!数学が始まるぞ!!」
そこで数学の斉藤先生(29)が出席簿を供託に叩きつけて入ってきた。
そして、奈津実はしぶしぶ、席に帰っていった。
ナイス!!先生!!
でも、斉藤先生も、あの担任みたいに言うのかな?
そう考えると、少し不安になってきた。
「さぁ、P128を開け〜・・・・って、ん?
おぉ、龍崎じゃないか!!」
先生の声と共に、クラス中の視線が龍崎に集まった。
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