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eighty story


奈緒はいらない子なんだ。

生まれなければ良かったんだ。




おまわりさんに見つけられて、少しの間病院にいた。


病院にいる間、ずっとドアの前で座ってた。


でも、入ってくるのはお医者さんや、ナースさんだけだった。




退院した後、『児童養護施設』って、ところに連れて行かれた。

そこは、前の家からそう遠くなくて、知ってる人がたくさんいた。


みんな、みんな、嫌いだって。

みんな、みんな、気持ち悪いんだって。


奈緒のこと。




みんな、みんな、奈緒に嫌な事言った。

みんな、みんな、叩いてきた。

みんな、みんな、嫌な事した。



奈緒は・・・・・そんなにいちゃいけない子ですか?




もう、外に出たくなかった。

奈緒はずっと、部屋にいることにした。


佳奈ちゃんとか、フミちゃんが小学校に上がっても、奈緒は部屋の中にいた。

ずぅっと。





少ししたら、小学校の先生が来た。


深澤みさわさん〜奈緒の旧名〜。学校に来ないの?」


女の先生で、ドアをトントン叩きながら話しかけてきた。


「なんで行かなきゃ行けないの?」


奈緒はドアの前に座ってた。


「・・・なんでって・・・、皆待ってるよ。私だって。」


うそつき。

先生から、嫌だな〜、何でこんなめんどくさいこと・・・、って感じが来てるんだよ?



「うそつき。先生、そんなこと思ってない。嫌だって、思ってるんでしょ?」


「っ・・・・。」


本当なのね・・・。


先生はボソッと言った。



それから、二度と来なくなった。



うそつき。

みんな、みんな、うそつきなんだ。




















それから、一年たった。


奈緒は2年生なんだって。


それでも2年生の奈緒は部屋の中にいた。




ギィッて、ドアが開いた。


あっ、鍵閉めてなかった。





開いたドアからは、光が入ってきた。

その光の間に、施設の先生が立っていた。


嫌だな。気持ち悪いのよ、この子・・・。


少しはばれないようにしたらいいのに・・・。


先生は笑顔でそう思ってた。



「このこです。」


先生が私を手でさしながら言う。

ドアの影から、男の人と、女の人が出てきた。




「っ!」


一瞬、お父さんとお母さんが重なって、少し後ろに下がった。



「奈緒ちゃん、私達が新しいお母さんと、お父さんよ?」


その女の人たちは、奈緒に手を伸ばしてきた。


白く、柔らかそうな手を。


あの、痛そうな手じゃなくて。




「・・・あ、新しい・・・?」


奈緒は分からなかった。

お父さんと、お母さんは新しく出来るの?




「そう、新しい。今日から、奈緒ちゃんは神田奈緒 ね。」


「そうだぞ。俺たちの娘だ。」


男の人が奈緒をダッコした。



その人たちは喜んでいた。






奈緒は・・・、必要とされてるのかな?





奈緒は、いてもいいのかな?



「ねぇ、お姉さん達は、奈緒の事叩かない?気持ち悪くない?」




女の人たちは顔を見合わせた。

それからは、悲しいような、かわいそうのような、そんなのを感じた。



「当たり前よ。私達はそんな事をしないわ。」


「そうだ。よろしくな、奈緒。」


その人たちは、奈緒に笑いかけてくれた。

ニコって。


少し、奈緒は嬉しかったんだ。



その人たちは、奈緒の手を持った。


そして、奈緒は久しぶりに部屋の外に出たんだ。




奈緒は、その人たちの車に乗った。



「お姉さん達・・・、名前は?」


お母さん、お父さん。

そう呼べばいいのかもしれなかったけど、奈緒は無理だよ。

だって、奈緒のお母さんと、お父さんは、一人だけだもん。



「神田 泰助と、綾子よ。いつか、私たちの事をお母さんって呼べるようになったら呼んでね。」


綾子さんは隣に座ってた奈緒の頭をなぜなぜしてくれた。






奈緒は、今日から神田 奈緒になった。



呼んでいただき、ありがとうございました。


お手数では有りますが、評価していただければ嬉しいです。

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