sixty fifth story
キレイに洗濯されて、キレイにハンガーにかかっている制服。
触れると、清潔な洗剤のにおいがする。
なのに、私はこの匂いを好きになることは出来ない。
なんでって?
・・・・・私の匂いじゃないから。
袖に手を通しながら、宿題をしていなかったことに気づく。
「はぁぁぁ・・。」
私はため息を軽く吐いて、学校でやることにした。
一階に下りて、適当に食べる。
皆を起こさないように、静かに早く。
まだ日が上がってなくて、でも、起こしたくないから電気もつけたくなくて、真っ暗の中私は一人でご飯を食べる。
別に寂しくなんか無い。
怖くなんか無い。
慣れだよ、慣れ。
食べ終わったら使った食器を洗って、食器たてに置く。
軽く身の回りのことをして、静かに外に出る。
誰にも会わず、ドアを閉めれた時、私はほっと肩をなでおろす。
別に怖いわけじゃない。
特に理由があるわけじゃない。
反抗期でもない。
一緒に居たら、つらいだけ。
『気味悪い。』
『初めての子供ね?』
視界が潤んでくる。
いろんな事考えてたら、余計なことも、思い出してしまった。
私は頭をぶんぶん振って、考えていたことを頭から消した。
あ〜・・・宿題しないと・・・。
私は、駆け足気味で学校へ向かった。
門をくぐると、一番に広い校舎が建っている。
当然、その校舎の上に屋上があるもので、こんな時間にはまだ居ないと分かってても、目が向かってしまう。
そして、当たり前なのに、龍崎たちが居ないことに安堵の息を吐いた。
教室の中に入ると、ようやく窓の外から優しい朝日が昇ってきた。
私は自分の机の横のフックに鞄をかけて、ノートを取り出した。
教科書を開いて10問もある数学の問題を解き始める。
はじめは地道に、必死に考えたいたけど、3問解いたところでダウンした。
私ははっきり言って、頭が偉いほうではない。むしろ逆?ってか?
机に伏せて、降ろしていた少し色素の抜けた紙を指に巻いてみる。
するっと、指から解けた髪をしばらく見つめる。
いつの間にか、私の意識は遠のいていた。
「・・・・・・・ぉ」
「・・・・・・・なお。」
「ナオッッ!!」
「へいっっっ!」
私はガバッと顔を上げる。
周りには優香を初めとするたくさんの人だかりが出来ていた。
教室にはたくさんの人がいて。
窓からは明るい光がさしていて。
時計は8時を指していて。
机の上にはよだれが垂れていた。
「・・・あんたさぁ、早く来るのはいいけど、寝るなよ。何しても起きないんだから・・。」
優香は、私の顔を見てため息をつく。
「・・・?」
状況がつかめなくて、首をかしげている私に、誰かが鏡を貸してくれた。
「っっ!うわぁ・・・。」
おでこに『肉』がかいてあって、ほっぺには渦巻きとひげが書いてあって、瞼には目が書いてあって・・・・。
鏡に映ってるのは、変わり果てた私の顔だった。
よく起きなかったな、私。
まだ寝ぼけてるのか、そんなところに感心してしまった。
昨日更新できなくて、すみませんっっ!
読んでいただき、ありがとうございました!!