thirty third story BELIVE
あの日から毎日、パンはノブにかかっていた。
たわいもない内容が書かれた紙と一緒に。
俺はその紙も、パンも捨てることが出来なかった。
『もしかしたら・・・・。』
捨てたはずの想いが心を揺さぶった。
少しぐらいなら、信じたっていいのか?
袋の中からカレーパンを一つ取り出し、かぶりついた。
懐かしい味が口いっぱいに広がった。
視界が潤んだのは、きっと気のせいだろう。
俺は、昼から玄関の前に座っていた。
周りはもう、薄暗かった。
少しで良い。
少しでいいから、あいつと会いたかった。
「馨くん・・・?」
何でだ?
なんで、 田上がいるんだ?
俺の目の前には田上がいつものあの白い袋を持ってたっていた。
「・・・・なんで・・・・おまえ・・・。」
言葉が出ない。
「馨くん・・・。これ・・・・秘密だって、私が持ってきたこと秘密だって・・・言われたんだけど・・・。毎日私が持ってきてるんだ。パン。私がパン買ってきて・・・。奈緒が手紙書いて入れて、一緒に持って行ってって、言うの。」
そういうと、田上は申し訳なさそうに袋を差し出した。
「うそ・・・・だろ・・・?屋上に・・・神田はいるのか?」
「・・・ううん。奈緒は着てないよ。でも、私は毎日屋上で馨君を待ってるから。」
何かが音をたてて崩れた。
俺の真ん中がごっぽり抜け落ちた。
「いらない。」
俺は袋を付き返した。
何を期待してたんだ?
『毎日屋上にいるから!!』
あの言葉は、聞き間違いだったのだろうか?
信じない方がよかったんだ。
・・・・・そんなこと、わかってたのに。
信じたって、何もならない。
無駄だったんだ。
悲しかった。
神田も他の奴らと同じだったって事に悲しかった。
俺は田上がいたことも忘れて、町に飛び出した。
次々と浮かび上がってくる神田の顔。
俺はそれを振り払うかのようにがむしゃらに走った。
それでも、アイツは消えなかった。
「・・・・・くすっ」
もう走れなかった。
崩れるように道にしゃがみこんだ。
そこはもう、知らない場所だった。
消えそうな三日月が、黒い空に唯一つ浮かんでいた。
息が思うようにすえなくて、苦しいのに、浮かび上がる神田はあの時のまま笑っていた。
胸が締め付けられた。
ぎゅっっと服を掴んだけど、苦しさは消えなかった。
*続きます*
お久しぶりです!!
吸いません、なかなかかけなくて・・・。
明日、休みなんで2話、3話同時(?)投稿したいと思います!!
読んでいただき、ありがとうございます!