第9話 3名の者たち
ガルシア財閥日本支社の地下に、アレンとフランツ、そしてヴィルは来ていた。見慣れない3名の者を連れて。アレンは普段シャツの下に隠しているミスリルのプレートを首から下げていて、ヴィルとフランツも首からヒヒイロカネのプレートを下げていた。見慣れない3名の者たちも、首からはヒヒイロカネのプレートを下げている。
「ドイツから来てもらった幹部の者たちだ。君たちは一応知っている者たちだと思う。黒狼との戦いにおいて、有力な戦力として戦ってくれる。まずは、自己紹介をしてもらおうか。一応ね」
アレンは綺麗に整列した構成員たちに見慣れない3名の者たちについて軽く説明した。だが、見慣れないというのも、日本ではというだけでドイツでは良くみる者たちだった。
「私はゼーベル。日本は初めて来たので不慣れだが、直ぐに慣れる。黒狼との戦いと聞き、強者と戦えるのを楽しみにしている。私のことを知っている者も多いと思うが、戦友として接してくれ。以上だ」
ゼーベル。彼女は、ドイツで白鳥の教育係として鞭を振るっていることで有名な女性幹部だ。彼女に鍛えられた構成員も多いので、気を一層引き締める者たちも多かった。ゼーベルは剣の扱いがとても上手く、暗殺よりも真正面から戦うことを得意とする。
「では、次は俺が。俺はシュトルム。ゼーベルと同じく日本には初めて来た。不慣れなことも多いが、直ぐに慣れるだろうから安心してくれ。特に言うこともないが、ダンジョンに行く時よりも気を引き締めろ。それだけだ」
シュトルム。ドイツではいくつかの部隊を抱える幹部で、多くの者から恐れられている。彼は災害系の魔法を得意としていて、こちらもまた暗殺よりも真正面から戦い、圧倒的な力で叩き潰すことが得意な人間だ。
「最後に私が。私はヴァイク。ゼーベルやシュトルムと違って、日本には何回か来たことがあるから、ある程度は分かる。黒狼の人たちは真正面から戦うことが得意だから、裏で気づかれずに戦うことを意識して。私からも以上」
ヴァイク。彼女は雲などの視界錯乱に特化した魔法で暗殺を得意とする女性幹部で、ドイツでは暗殺系に特化した者たちを育てている。ゼーベルやシュトルムとは真反対の人間で、裏で戦うことを得意とする。
ゼーベル、シュトルム、ヴァイクの3名から簡単な自己紹介を受けた構成員たちは、より一層緊張感を胸に抱く。
今回の敵は、ヴァイクが言った通り真正面から戦うことを得意とする武闘派ギャングだ。だが、それでも諜報を得意とする者もそれなりに居るので軽視する事は出来ない。
「さて、3人の事は説明したので黒狼に気づかれない行動に移すとしようか。」
アレンの言葉によって、ゼーベル、シュトルム、ヴァイクの3名も改めて胸に手を当て、腰に回し頭を下げる。
アレンの後ろに控えるフランツとヴィルも同じように手を胸に当てて腰に回し頭を下げていた。
「今から話す事は命令だ。手を抜くことは許さないし、ましてサボるなんて事をしたらどうなるかは分かっているだろうから細かい事は言わない。」
アレンの圧倒的な圧に、逆らおうなどと考える者はいなかった。数年程前、逆らった者が居た。その者は即座に連れて行かれ、それ以降姿を見た者はいない。
「幹部クラスの者たちは生け捕りにしろ。ドイツへ連れて行く。使える人材はなるべく有効活用する為に。」
生け捕りほど難しいものはない。だが、命令されたからにはどんな任務でも遂行する。
「常に2人1組で行動し、1人にならないようにしろ。」
この言葉に、その場にいた者たちは瞬時に思考を巡らせる。総合的に判断して、ほぼ全ての者が真正面から戦う者と、裏で戦う者で行動した方が良いと結論が出た。
「何かあったら直ぐに連絡してくれ。戦いが終わるまで、僕自身も配信なんて事はせずに戦いに集中する。では解散だ。配置は話し合って決めてくれ。ヴィル、後で共有を頼む」
そう言って、アレンはフランツと共に最上階へとエレベーターに乗って行ってしまった。
残された構成員の者たちと、ゼーベル、シュトルム、ヴァイクと数名の幹部たちは、細かく話し合い、各々の特徴を活かせる配置を考える。
口出しはせずに、静かにその様子を見ながら記録してまとめるヴィル。彼は、やっぱりここは居心地が良いと心の何処かで思う。
自分でも、何故こんなガッツリアウトなことをしている裏社会のここが居心地が良いと思った理由はよく分からなかったが。
◇◆◇
フランスの首都、パリ。何処かの建物の地下で、黒のライダースジャケットを着た男たちに囲まれた男の姿があった。
囲まれている男は、鍛えているのか、とてつもなく強い雰囲気を出し、拳を握っては開いてを繰り返している。
「ボス、車にお乗り下さい」
黒のライダースジャケットを着た男たちの1人が、囲まれていたボスである男を自らが運転する車に乗せる。扉が閉まると、車は直ぐに走り出した。
「ボス、空港には既に手配しています。そのまま向かって頂いても大丈夫です」
「分かった。エペ、お前もついて来い。戦いの場所は日本だ」
運転している男、エペはボスである男に話しかける。返ってきた応えは「ついて来い」という言葉だった。
「了解致しました。日本ですか……行った事はありませんね」
「私も行った事はない。だが、日本にあちらのボスがいるからな」
エペは日本に行った事がない。ボスも行った事はないようだ。ボスの言うあちらとは長年敵対しているドイツのマフィア、白鳥のことだ。
白鳥のボスが日本に居るという情報を掴み、報告した所「直ぐに日本に向かう」とボスは言った。その言葉を聞いたエペは直ぐにジェット機を手配し、車を動かした。
「ボス、勝算は」
「このままいけば、白鳥が勝つだろう。ドイツにあるガルシア本家はガチガチに守られているし、個々の戦力が高い。だが、黒狼もそんな簡単には負けない。負けたら終わりだ。僅かに勝率があるのなら、本気で挑む。」
今まで、長い間ずっと白鳥と敵対しても生き残っていたのは、それだけ黒狼も力を持っていたからだ。そんな硬直状態の戦いを終わらせるために、ボスは日本に向かう。それを語られずとも汲み取ったエペは、自らも身を投げだすつもりで戦う。
勝率は白鳥の方が高い。だが、黒狼にも勝つチャンスはある。上手く組み合えば、どちらが勝つかなんて誰にもわからない。
昨日の夜、投稿しようと思っていたのに、寝過ごして投稿出来ていなかったものです。
今日はもう一話、投稿致しますので宜しくお願い致します。




