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12話

作成日が2016年……わぁ……

待っていてくださった方いたらすみません……

「とりあえず、下っ端でも出来そうな依頼探さないとな」


 金欠の自分には休んでる暇がないのだ。

 当然だが依頼を受けないとお金は入ってこない。早速馬車馬のように働くとしましょう。

 そうと決まれば話は早いと、依頼用紙が貼ってある掲示板に向かう。


「おお、裏も表も紙がいっぱい」


 依頼用紙がたくさん貼ってある掲示板は、近づいてみると結構大きい。上の方なんかは今の自分の身長じゃ背伸びをしても届かない。

 用紙は決まった大きさがないのか、掌サイズからポスターサイズまで様々だ。依頼内容の文字も、手書きから印刷された物まである。それぞれ個性があって、眺めてるだけでも結構面白い。


 パッと目につく物はやっぱり討伐系。色んな魔物の討伐依頼が出ているけど、どれも難易度が高そうだ。オークにフォレストワームにドラゴン……ちらほらゲームで見た事ある魔物の名前もある。

 正直、ゲーム内ステータスを受け継いでいる自分なら倒す事も出来そうだけど、同じ強さとは限らないし、あの誓約書は出来れば書きたくない。しっかりと経験を積んでから挑戦した方がいいだろう。


「慢心は人間の最大の敵って言うし。薬草採取とか、討伐でもゴブリンとかないかなぁ」


 表側をざっと見ても見当たらなかったので、裏側に回る。というかこれどっちが裏表なんだろう。

 薬草薬草……あ、あった。花形の討伐依頼に埋もれるようにして、その小さい薬草採取の依頼用紙は貼ってあった。

 採取する数は五つか。よしよし、自分がちゃんと取ってきてやるからな。結構美味しい依頼だと思うけど、やっぱり地味目な以来は埋もれるのかな、なんにしても今の自分には好都合だ。


 薬草採取の依頼用紙を剥がしカウンターまで持って行くと、難しい手続きもなく依頼が受理される。

 納品期限は三日。薬草五つに対して長いような短いような、ギリギリに探しに行ってなかなか見つからないという事もありそうだし、油断は禁物だろう。

 早速今から探しに行きたい所だが、生憎まだ街に用があるのでそっちを優先しよう。行き先は鍛冶屋だ。

 アルニラムを手に入れて用済みになった剣で、素材を剥ぎ取る用のナイフでも作ってもらいたい。無理なら銅貨一枚でも良いから買い取ってくれたら良いな。


 ギルドにいた冒険者と思しき優しいお姉さん方に鍛冶屋までの道を聞くと、丁寧に教えてくれた。

 道案内も申し出てくれたが、教えてもらっている間のお姉さん達は、なんだか獲物を狙う獣のような眼をしていたので遠慮しておいた。









「お、ここか」


 教えてもらった通りの場所にその鍛冶屋はあった。

 武器屋や防具屋などが建ち並んでいる、職人通りの内の一軒。年季の入った外観は、ゲーム内でよく利用した鍛冶屋を思い出させた。


「あー懐かしい、確かあそこもこんな見た目だったなぁ」


 遊んでいたゲームには武器や防具に耐久値があり、修理しないとどんどん壊れやすくなっていったのだ。その耐久値を回復させるのが各街に存在する鍛冶屋であり、プレイヤーなら一度と言わず何度もお世話になっている。

 かく言う自分もそのプレイヤーの一人だった。もっとも自分は、鍛冶屋のハゲのおっさんのキャラ……ヘルラフが気に入って修理に関係なく通っていたのだが。

 露出多めな美少女NPCが溢れるゲーム世界で、ヘルラフのおっさんの笑顔と頭は輝いていた……もう会えないと思うと少し寂しい気もするが仕方ない。とりあえずはナイフの確保だ。


 鍛冶屋の扉を開け中に入る。

 店内はカウンターと壁に掛けてある武器や防具のサンプルだけというシンプルな造りだった。

 奥に扉があり、そこが工房のスペースになっているのだろう。店主はそこにいるのか、カウンターは無人だった。


「すみませーん」

「おや、お客さんかな? 今行くよ!」


 奥の扉に向かって声を掛けると、数秒をおいて店主と思われる男性が出てきた。

 出てきた男性は金髪巻き毛の碧眼で、偏見たっぷりなのは承知だが、とても鍛冶屋には見えない王子様フェイスの持ち主だった。なんだか周りの空気がキラキラしてる気がする……。

 鍛冶屋よりイケメンシェフと言ったほうがしっくりくるだろう外見だ。


「お待たせしてすまないね! 僕は鍛冶屋のベンジャミン! 先日愛する妻が息子を産んでね! 今はちょうど息子の寝顔を眺めるので忙しかったんだ!」


 いい笑顔でわかりやすい説明ありがとうございます。

 イケメン鍛冶屋、もといベンジャミンさんは嬉しそうに聞いてもいない情報を喋りだした。キラキラしてたのは子どもが産まれたからか元からか。とりあえずこの喜びを人に伝えたくて仕方ないみたいだ。


「昨日ロイゼンに来たばかりのキーアです。息子さんが産まれたんですね、おめでとうございます」

「ああ、よろしくキーアくん! そう、そう、そうだとも! これがまた可愛くて仕事なんか手につかないんだ! 君も一目見て行くと良い! そうさそれがいい!」


 言うが早いかズルズル引きずられて奥の部屋に連れ込まれる。

 そんな簡単に人を上げて良いのか!? ていうか力強っ!

 部屋にはベビーベッドが置いてあり、中で産まれたてと思われる赤ちゃんがスヤスヤと寝息をたてていた。

 ふくふくとした頰っぺたをしていて、夢を見ているのか時折口をモゴモゴとさせている。見ているこっちが笑顔になる寝顔だった。


「うわぁ、可愛い。この子、なんて名前なんですか?」

「ふふ、そうだろう可愛いだろう。この子の名前はヘルラフ! 一ヶ月悩んだのさ!」

「マジか」


 ヘルラフといったら生前のゲーム内に存在していた鍛冶屋、のおっさんだ。

 ただ名前が同じだけかもしれないが、今までゲームとの共通点が多数あった事から、なんだか偶然には思えない。


「……この可愛い赤ちゃんが、あんなおっさんになるのかぁ……」


 ヘルラフのおっさんは嫌いではないし、むしろ好きなキャラだった。でも、そうかぁ、こんな小さい子があんな筋骨隆々のおっさんに……

 思い出してみると、鍛冶屋のヘルラフの笑顔はなんとなくベンジャミンさんと似ていた気がしないでもない。

 ベンジャミンさんは空気がキラキラ。ヘルラフのおっさんは頭がキラキラ。なんだ、あるじゃないか共通点。仮に、本当に親子だったとしても問題はない。


「きっとベンジャミンさんそっくりに育ちますよ、色々と」


 そう言うと隣のベンジャミンさんは、だといいなぁ、とそれはまた幸せそうに笑った。

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