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二話 山賊の引き渡し

戦闘が終わり戦果が明らかになった。俺たちとの戦闘で死んだのが山賊長含む十六人。城壁から飛び降りて逃げようとし、リーゼとリリウムの魔法を受けたり、ルッカの弓で射られて死んだのが五人。降伏したのが十四人。先に捕縛した街道の斥候と合わせて、砦の山賊は総勢三十六人だった。六人で捕まえたにしては結構な大捕り物になったな。降伏した山賊たちから武器と防具を没収してから、山賊をロープで二人一組で縛り、砦に広がる火を呪文で消化した。


「そら、きびきび掘れ」

「掘れ掘れー早くしないと日が暮れちゃうぞー」

「クソッ……」


山賊が悪態を付きながら、砦に合ったスコップで穴を掘る。俺はルッカと山賊たちが砦の外で穴を掘り死体を埋めている作業を監視していた。作業する山賊は二人一組で腰を頑丈なロープでつながれているため、逃げ出そうにも走りにくくなっている。なぜ埋葬しているかというと、SMOでは死体を埋葬せずに長時間期間したら、死体がゾンビなどのモンスターに変化するからだ。他の四人は山賊から宝の場所を聞き出し、砦から運び出している。


「穴を掘るのはそれくらいでいい。次は死体をここへ運んでこい」


指示に従って山賊が死体を穴へ投げ込んでいく。死体が二十一体穴に放り込まれ上から土をかけられた。墓標も何もないが、山賊の扱いはこんなものだろう。野焼きして放置されないだけマシというものだ。


「そっちは後始末終わった?アンデッド化を防ぐ処置をしに来たんだけど」


砦で宝探しをしていたノーラがこちらにやって来た。


「今ちょうど死体を埋め終わった所だ」

「それなら呪文掛けるわね。<清浄化(ハロウ)>」


ノーラを中心にキラキラとした光が周囲に降り注ぐ。


「これでこのあたりは二週間アンデッドが発生しないようになったわ。死体がゾンビになるのは死んでから一週間以内だから、これで死体が万が一ゾンビ化しようとしても大丈夫ね」

「こいつらが溜め込んでいた宝はどうだった?」

「見てからのお楽しみよ」

「おい、付いてこい」


山賊を引き連れて仲間が宝が集めた場所に向かう。


「これはこれは随分溜め込んでいたようだな」


そこには山賊たちの戦利品が並べられていた。貨幣が詰まった袋、宝石と宝飾品が収められた箱、未使用の武具、金属のインゴット、上質な布、酒瓶に酒樽。全て売り払えばかなりの金額になりそうだ。不思議なのは、現金と酒に山賊が手を付けていない事だ。


「酒や金を自分たちで使わなかったのか?答えろ」


連れてきた盗賊の一人を問いつめる。


「俺たちが分け前を要求しても、お頭はこれは上納するんだって言って聞かなかった」

「上納?何処へだ?」

「お頭は俺たちには話さなかった。だから、お頭が一週間後にここを引き払って納めに行くって言った時から、皆でここを出る日にお頭の寝込みを襲って宝を分け合おうって算段を立てていたんだが、今日あんたらが攻めてきたのさ」


「他のやつは知らないか?」


他の山賊を見るが、全員が顔を横に振った。


「ノーラ、上納先の東の組織とやらについて、何か証拠はなかったのか?」

「えーっと、リーゼとリリウムに聞いて」

「妙な冊子があった」

「これです」


リリウムが俺に植物紙を糸で綴じた簡素な冊子を手渡してきた。


「なになに、『素人でも立ち上げられる盗賊団ガイド』?何だこのヘンテコな題名は」


質の悪い紙で作られた冊子の表紙には題名とともに副題で『君も今日から大盗賊だ!』と赤字で書かれ、それに加えて下手くそな盗賊の落書きが挿絵として描かれていた。


「カイル、いいから読んでみろ」

「読んでみて下さい」


リーゼとリリウムは真面目な表情をしている。俺は安っぽい紙質の冊子をめくり冊子を読む。読み進めて行くとなるほど、二人があの表情になった理由が分かった。この冊子は題名はふざけているが、盗賊が待ち伏せをするべき場所、拠点を構えるのに適した地形、仲間の増やし方と統率方法、襲撃すべき獲物の見分け方と取るべき戦法、危険の避け方などが分かりやすく書かれていた。野盗の教本というものがあるのならこれは及第点だ。


「これを書いたのは誰だ?」


本を渡してきたリーゼとリリウムに聞いてみる。二人とも首を横に振った。


「分からん。これを書いたのはプレイヤーというのは確かだが」

「これは生産系クラスが作れる一番質が悪い本です」

「こういう本を刷るのがプレイヤーの間で流行っているのか?」

「いいえ。情報を新聞形式にして売るプレイヤーは居ますけど」


プレイヤーが山賊を訓練したり、冊子を配って教育し見返りに上納金を要求してて、それが山賊長の言っていた東の組織か?あの山賊長を殺したことで山賊を手早く武装解除出来たが、ああするのは早計だったかもしれない。


「ノーラ、山賊長の死体を街の教会に持ち帰って蘇生出来ないか?」

「犯罪を犯したNPCを教会は蘇生しないわ。プレイヤーに殺されたNPCを蘇生するのは、蘇生費用を賞金に転嫁出来るからだし。私もまだ蘇生呪文を使えないわよ」

「山賊長を掘り返して教会で蘇生してもらったらいくらだ?」

「蘇生費用はレベルの三倍の数の金貨だから、五十枚くらい取られるわね」


気になるが金を払ってまで蘇生して調べる話でもないな。


「ねえねえ、そういうことを考えるのは職員に山賊を引き渡してからにしようよ―」

「……街道に待たせたまま」


盗賊の斥候を捕まえこの場所を吐かせてからギルドに引き渡したら、職員が盗賊のいる場所まで馬車で送ってくれた。街道で待つ彼らへ今日中に、捕らえた山賊を引き渡さないといけなかった。


「そうね、みんな戦利品をしまって街道に引き返しましょう」


ノーラの指示で俺たちは山賊の戦利品をインベントリに手分けして納め、山賊を引き連れて砦を後にした。




         ※




「十四人ですか。大捕り物になったようですね」


俺たちは最寄りの街道で待機していた二人の冒険者ギルド職員につれて来た山賊を引き渡した。職員は乗ってきた窓のない四角く堅牢な馬車に山賊を押し込むと、職員は馬車の入り口に外から閂をかけ施錠した。


「この場所で代金を貰えるの?」

「もちろんです。そのために皆さんに着いて来たんですから」


職員はノーラに金貨が詰まった袋を渡す。


「依頼達成報酬と、捕縛した山賊一人あたり金貨八枚の追加報酬です。今後ともギルドをよろしくお願いします」


そう言うと二人のギルド職員は馬車を街の方向へ走らせていった。


「ノーラ、あの山賊たちはどうなるんだ?」

「重罪のNPCは、東の群島の開拓最前線へ流刑か、鉱山都市の一番危険な最下層でカナリアになるらしいわ」

「カナリア?」

「シエフィルトの鉱山最下層は危険だからNPC鉱夫は降りないわ。最下層では鉱石を重罪の囚人が掘るの。だから鉱山で安全を確かめるカナリアってこと」


山賊の末路としては妥当だな。


「それでノーラ、我らはこれからどうする?」

「そうねえ……」


ノーラとリーゼが地図を広げて考えている。


挿絵(By みてみん)


「ここから北東の港町アバディンに向かいましょう。戦利品を売る必要もあるし、ここから東の街なら山賊が言ってた組織について何か分かるかもしれないわ」


次の目標が決まった俺たちは、街道を北東に歩き始めた。

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