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捕まえられる

とりあえずこれで完結となります。

 なんで、こんなことになったんだろう。

 私は目の前の元好きだった人を見る。

 元好きだった人は私に向き合っていて、私の腕を掴んでいる。


 ああ、今日は厄日だ……。今日はいつものように、先輩に追いかけられて作ってあげたお弁当を渡したらとっても喜んで貰えて。一緒に昼食を食べて、いつものように授業を受けて帰ろうとしただけなのに。


「なあ、お前さ。まだ俺のこと好きなんだろ?」


「え」


 素っ頓狂な声をあげてしまった。幼馴染をまじまじと見てみるが、あの時のような気持ちにはならない。

 あれ、おかしいな。振られた時物凄い苦しくて悲しかったのに、今はなんとも思わない。

 自分でも驚く。今、幼馴染は私の好きな人ではない。私の好きな人は____


 私が沈黙を続けていることを了承だと受け取ったのか幼馴染は口を開いた。


「じゃあ、俺ともう一回やり直そう。あの時の俺はちょっとおかしかったんだって。お前が手出させてくれないからちょっと、まあ……だったけど。最近お前先輩にちょっかいかけられてるんだろ?俺と付き合ったら守ってやるから」


 意味がわからない。


「前に腕を組んでた女の人はどうなったの?」


「ああ、あいつか?構って構って煩いし、少し冷たくしたら違う男のところに行くし、もういいんだ。そうだ!俺とお前が付き合ってあいつには麗美をやろう。それでいいだろ?」


 何がそれでいいだろ?だ。あいつというのは柳井先輩のことだろう。

 だんだんと怒りが湧いてきた。私のあの頃の好きだった気持ちをぐちゃぐちゃにされている気分になる。

 というか私はこんな奴が好きだったのか。昔の私馬鹿じゃないのか。


「お前も嫌なんだろ?あいつにつきまとわれるの。見目がいいからって気持ち悪いよな……」


 幼馴染は柳井先輩の悪口を言っているようだった。

 嫌、なのかな。最初は面倒だと思ったし、不思議に思ったりしたけど



 一度も私は嫌だって思ったことなんてなかった。



 自覚した時に顔に熱が集まるのを感じる。あれ、おかしいな。これじゃあ私が先輩を好きみたいじゃないか。

 私がオロオロしながら顔を赤らめているのを幼馴染は見ると


「な?俺とやり直そう?」


 と手を差し出してきた。

 幼馴染は私が手をとることを確信した様子で笑っている。

 ………なにを勘違いしているんだろうか?自分で私を捨てたくせに。そこまで私は馬鹿な女じゃない。

 怒りの蓋がポロリと落ちた。


 パァンッ


 手を弾く音が響いた。

 幼馴染は手を弾かれたのが信じられない様子で私を見た。


「なにが、やり直そう?私を捨てて可愛い子に乗り換えた癖に。それなのに都合が悪くなったらやっぱりこっちが良かったなんて子供の我儘じゃない。……私はもうあんたの事なんて好きじゃない。あんたは知らないだろうけど私が泣いてる時ハンカチを差し出してくれて、そばに居てくれた先輩のことを悪く言わないで!」


 怒りに任せて、一度に言う。幼馴染を睨み付け帰ろうとするが手を強く掴まれて止められる。


「なっ………!ちょっと優しくしたら調子にのって」


「調子にのって?調子にのってるのはあんたじゃない!先輩の方がずっとずっとあんたより優しいしかっこいいわ!」


 その瞬間幼馴染の手が大きく上がり私の顔めがけて落ちてくる。ぎゅっと目を瞑り、衝撃に備えようとする。

 ………あれこない。そぅっと目を開けて見るとそこには先輩がいた。

 先輩は幼馴染の手を取って私を守るように前に居てくれている。


「ねえ、君さあ。」


 先輩が地から這い出たような低い、怖い声で言う。


「ちょっと自分の分が悪くなったら女の子に手をあげるって最低じゃない?馬鹿じゃないの?あとさあ、葉ちゃんはもう君のものじゃないんだから。君は手放したんだよ。」


「そ、それは」


「だからさぁ、さっさと消えてくれないかな」


 それが決め手だったようで幼馴染は逃げていった。


「先輩、ありがとうございます。」


 頭を下げてお礼を言う。やばい、かもしれない。助けに来てくれたことが嬉しくて。しかもさっき自覚してしまったからちょっと先輩の顔が見れない。


「葉ちゃんのためだったらお安い御用だよ?ああ、もうあいつに掴まれてたところ赤くなってる……他になんもされてない?大丈夫?」


 はい、そう頷きたいのに恥ずかしくて顔が上げられない。

 それを先輩は不思議に思ったのか首を傾げた。


「え、なんかされたの?……やっぱり二、三発いっとくべきだったかな……?」


「え、いや違うんです。物騒なこと言わないでください」


 そう言いながらも顔を上げない私に先輩は心配そうに声をかけてくる。

 あれ、先輩の顔見れない。これは、もしや


「葉ちゃん、ごめんね」


 そう言って先輩は私の顔を上げさせた。


「え……」


 先輩が固まる。そして手で口を覆うとオロオロとし始めた。


「待って待って葉ちゃん。……顔真っ赤だよ……?」


 勘の鋭い先輩だから気付かれてしまったのかもしれない。

 私は顔を手で覆い俯く。


「あの、ええと……私」


 そこまで言って、頭が爆発した。先輩は私の言葉を待っている。

 もう、無理です。

 私は逃走を図ろうとしたけれど先輩にがっしり抱え込まれてしまって逃げられない。

 う、あ、と変な声が出る。絶対今の私は真っ赤っかだ。

 そして、次に先輩が発した言葉は


「もしかして、葉ちゃん。まだあの男が好きだったの……?」


 的外れな言葉だった。


「………違います。」


 言わなきゃ、先輩は私にいつも好きだって言ってくれたんだから。

 息を吸い込み


「先輩、告白してくれた答え。まだ出してませんでした」


 ああもう心臓が壊れそう。というかなんで先輩後ろから私を抱き寄せてるの。そんなことしても逃げませんって。


「_____私は先輩のこと、が 好き、です」


 その瞬間先輩がぴしりと固まった。

 先輩?声をかけても反応が無くて、不安になってしまう。

 何度目かの呼びかけで先輩はハッとし、私のことを抱き締めた。


「せ、先輩?」


「葉ちゃん、葉ちゃん。」


「はい」


「僕も大好きだよ」


「私も、大好きです」


 先輩は嬉しそうにはにかむとゆっくりと言った。


「僕と付き合ってくれますか?」


「_____はい」


 勿論






全3話読んでくださった方ありがとうございました!

ほのぼのな感じを出せていたら嬉しいです(*^^*)

気力があればその後も投稿するかもしれません……。

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