宵闇に咲くひとしずく
掲載日:2026/09/26
風がそっと髪をほどく駅前の路地で
君と別れた
誰が誰に向けて置いていったのだろう、開け放たれた鳥籠が
今の私の心境をよく表していた
ビルとビルの間に霞む月明かり
潜んでいた影は全力で疾走するかのように
私を歩く先を一足分越して纏わり付く
泣き枯らしたせいで身体は足先まで疲れきって
小さな公園のベンチに腰を下ろすことにした
花壇には散らばる花びらが幾重にも飾られ
咲き誇った季節の名残が模様となって
足元の砂に紛れて消えていく
夜の静けさに包まれた住宅街
窓の向こうで響くテレビの音
灯る明かりひとつひとつが
どこかで同じ孤独を抱えているようで
息を吸うたび
胸の奥に残る痛みで
私を目覚めさせてくれる
君を知って初めて知ったこの痛みが
今の私を形作っているのだと気づいた
宵闇に咲くひとしずくは
消えることなく咲き続けている
あの花壇に散らばる花びらのように
きっと名も無き理由を無闇に与えられた同じ穴のムジナ
そのしずくは涙なのか
いまだ答えは見つからないけれど




