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再会した冷徹上司は、私にだけ過保護です  作者: 永久保セツナ


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番外編 日暮秋葉という男(氷室視点)

「日暮先生の著作、拝読しております」


 ――日暮秋葉の自宅。

 俺は先生の部屋で、彼とちゃぶ台を挟み、向かい合って座っている。

 

「え〜? あの本読んだんだ。懐かしいね」

 

「ぜひ日暮先生に次回作を執筆していただきたく……」

 

「そういう堅苦しいのいいよ。コーラ飲む?」

 

「なぜ、湯呑にコーラを……?」


 先生の出した湯呑の中では、黒い液体がパチパチと炭酸を弾けさせていた。

 ――これは、俺がそれがし編集部に入り、日暮先生の担当になったばかりの頃の話だ。


「日暮先生、どこですか。怒らないから出てきてください」


「絶対怒るやつじゃん!!」


 日暮先生が自宅の何処かに隠れているのを、無理やり探した日もあった。


「原稿上がるまで帰りません」


「実質同居じゃん」


「同居にならないように努力してください」


 あの人は、いつもそうだ。

 才能はあるのに、それを発揮しようとしない。

 なぜかと彼に問えば、「困らないから」だという。

 原作が何度も映画化され、過去の本が売れ、そのたびに印税が入る。

 だから、最新作を出さなくても困らないのだと。


 極めつけは、年末のことだった。


『ウィーウィッシュアメリークリスマス、アンドハッピーニューイヤー』


 そんな書き置きを残して、先生が消えたことがある。


「先生……日暮先生……! いったいどこに……!」


 俺は年末、ずっと先生を探した。

 自宅から、彼がよく行く喫茶店、街の雑踏の中にまで。


 ――俺が悪かったのだろうか。

 俺が、先生を追い詰めてしまったのか。

 何度も何度も、先生の跡を追いかけた。


 そして、年明け。

 奴はケロッとした顔で、編集部にやってきたのである。


「あけおめことよろ〜」


 奴は肌を焼いており、明らかにハワイ帰りだった。


「フンッ」

 

「痛いッ!?」


 俺が脳天にチョップを食らわせると、先生は「背が縮む!」と頭を押さえていた。

 

「お前は何をしているんだ。警察に捜索願まで出したというのにハワイだと??」

 

「ええっ!? なに事件にしてるの!?」

 

「お前が悪い」


 それ以来、俺は日暮に対して、敬意を抱かなくなった。


「……大変だったんですね」


「そうだな」


 俺の昔話を聞いた小日向が、お気の毒と言いたげな顔をしている。

 俺は間違っていなかったんだなと思う。


「ねえねえ春ちゃん、新作のプロット見て~」


「はいはい、今拝見しますね」


 ……小日向が入社してから、日暮先生は少し変わった。

 新作を出す意欲はあるらしい。

 どういう風の吹き回しなんだか。

 ……まあ、やる気が出たなら、それに越したことはない。

 俺もプロットのチェックのために、日暮のいる小日向のデスクに向かっていった。

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