第二章 ⅦーⅠ
登録以来、毎日万能職ギルドに顔を出しては受けて来た何度目かの採取依頼を終え、フェスは森からナーダに戻って来た。早朝、起床して朝のルーティンを終えるとすぐに支度を調えて宿を出、開店したばかりの近場の食堂で朝食を摂り、昼食の包みを受け取って出掛けて来たので、ギルドに寄ってからでもまだ日は高い。依頼を受けると直ぐに『地図追跡』で目的地点を品定めしておくので探し回る可能性は低い(もちろん到着前に誰かに採取されてしまっている等の可能性もある)。肉体の高スペックによって、早歩きでも馬車よりは多少早く移動も可能だった。こと採取依頼に限れば、高効率かつ迅速なメソッドが完成したといって良かった。もはやお馴染みとなった森は特に危険もなく静かで、吹き抜ける風が少し冷たかった。そこここでやはり採取依頼を受けた万能職だろう人影を見掛ける。彼ら、彼女らの事情は判らないが、自分はこんな風にゆっくりやっていきたいものだ、とフェスは考えながら採取依頼を手早くしかし丁寧に済ませ、ナーダへの道を急いだのだった。
東門を潜り、中央区画へと向かう。広い通りを、ひっきりなしに人や馬車等が往来する。向かって右手の北区画では、宝飾店や銀行(両替商をも含む)の支店等が目立つ。対して東区画では武装した、制服を着用した衛士等が道に目を光らせていたり、何事か話しているのが印象的だ。なるほど、うまく出来ているのだな、といつも思うフェスだった。ナーダは王国東方防衛の要衝の一つとなっている。イスタリコ王国も最初から現在の版図を誇っていた訳ではなく、二百年以上前には南部は幾つかの国に分かれており、戦争を含む諍いも絶えなかった。ナーダは当時の王国南部最大の都市だったのだ。結果的に南部は王国に併合されたが、未だに王国に対して反抗的な言動をする者も少なからず存在した。それ以降は主にアルムス山脈を超え侵攻してくる外国からの備えに重要な役割を果す事になった。そういった事情から、王国内の犯罪者はもとより外国の盗賊等犯罪者、また外国の不審者達(スパイやテロリスト等の疑いのある)の出入りにも目を光らせているそうだった。万能職ギルドもまた指名手配等に係る以上、そういった情報を耳にする事もあったのだ。




