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山田と佐藤  作者: うんち
1章
3/23

3話 ロビー活動







 僕は(ふもと)からそこそこ離れた川辺を拠点として、野営生活を続けながら、順調にロビー活動も並行して進めていた。



 謎のヒーローごっこである。



 人の気配を追う事で山道を発見し、そこから更に気配を追う事で、人のよく通る道というものが何となく掴めてきた。



 摘まれた薬草らしき植物の跡、踏み締められた地面など、人の痕跡を観察し、それを続けると癖というものが見えてくる。

 彼等がどのような場所を求め、どのような道を通りたがるのか、感覚的に掴めてくるのだ。



 今まで全く人と出会えなかった為、僕は他人に飢えていた。

 ヒーローごっこも頑張った。



 冒険者さんとか、薬草を採取している幼女とかを、物陰からじっと観察する。



 そこへたまにモンスターがエンカウントするので、ピンチを見計らって颯爽と助けるのだ。



 冒険者や幼女が接敵に気付かない事はよくあった。

 オークさんは割と堂々としているが、狩猟民族かつ食物連鎖の下の人であるゴブリンさんは警戒心が強い。

 畢竟(ひっきょう)、コソコソ近づいてアンブッシュを仕掛けようとするパターンが多い。



 しかしジャングルの王者たる僕に隙はなかった。

 王たる僕が、ゴブリンさんより先に気配に気付く。



 どんなにボーッとして、薬草取りでしゃがんだ幼女さんのパンツを観察してても、敵が近づくと僕のゴーストが囁いてくれる。

 どういう配線で病変が成されたのかわかんないんだけど、僕の主観とはなんか別の所で察知してるらしい。



 僕の作り出した幻覚である青髪ポニテとゴブリンさんのどっちかが、接近した敵に気付いて知らせてくれるのだ。



 もう完全に病気だと思うんだけど、心理学上、社会生活に不便がなければ病気じゃないって聞くし。

 まあ今の僕は社会の枠組から弾き出されてるんだけど。

 色々含めて気にしないことにした。



 病気じゃないとしたら、異世界由来のなんかかもしれない。

 ほら、親切な精霊さんとか、タルパを生み出すスキルみたいな……。



 まあそんな感じでピンチの冒険者とか、幼女の前に颯爽とあらわれて投石アンブッシュする。



 僕の戦法は基本アンブッシュなので、敵も敵じゃない人も大体ビックリする。

 ビックリしてるうちに接近して鏖殺(おうさつ)するのが勝ちパターンよ。

 むしろ投石だけで敵が全滅する方が多い。



 この活動で不審者の有用性を認知させ、気付いたら街の英雄になってるって寸法よ。



 そんで、敵を全滅させるまでは良いんだけど、ひと月以上会話してないせいか、第一声が出てこない。



 冒険者さんとか幼女が僕に話しかけてきて、言葉はわかんないんだけど、声の調子とかから内容はなんとなく伝わってくる。

 顔は直視できないので表情はわからない。



 感謝してるっぽいんだけど、僕は何を言っていいのかわからなくなって、口を開いて声を出そうとするとストレスから動悸が激しくなり、視野が狭まってくるのだ。

 どうせ日本語通じねえじゃんとか考えると、余計に言葉を探すのが億劫になる。



 結果的に緊急時、モンスターを全滅させた男が、話しかけたら挙動不審になり、一言も喋らず会釈(えしゃく)して去って行くという不審者情報が住民に認知されようになった筈だ。



 最適化した結果、最終的に僕はモンスターを全滅させると同時に現場から離脱するようになった。

 たぶん不審者の存在と行動は認知されてるので、ロビー活動としては姿を見せなくても問題ないだろう。






ー◆ー






 1回本気で追いかけてきた3人の冒険者達がいた。

 最初に見かけたパーティブレイク三人組である。



 オークの大群に囲まれており、それに気付いていない事がわかったので、すわ緊急事態だと投石もそこそこにオークに突撃した。



 とても勘のいい連中で、すぐに呼吸を合わせてくれた。

 最初に敵の少ない方を片付けて戦線を整え、僕と陽キャっぽい青年をタンク役に、後方から魔法と矢の雨が飛ぶ。

 このとき僕は初めて魔法を見て、密かにテンションが爆上がりした。

 でも森で火を放つのはどうなの。



 敵を鏖殺すると、雰囲気が弛緩するのがわかった。

 僕が呼吸を整えていると、キラキラした汗をかいた赤髪の陽キャが、白い歯を覗かせたイケメンスマイルで話し掛けてきた。



 180cmの長身に鍛え抜かれたその身体は、イケメンのイケメンたる由縁(ゆえん)であり、柔らかな口調で奏でるその美声は、F分の一揺らぎという言葉を連想してしまう心地良い音色だった。

 裏表のない人の良さを一見にして思わせる。

 汗もいい匂いしそう。

 絵に描いたような陽キャであり、つまりは異世界テンプレのイケメンだった。



 一方不審者は薄汚れたボロ布で顔を隠し、目線はギョロギョロと不安定で口を半開きにし、イケメンの陽キャ相手に緊張して全身を硬直させる隠キャかつ不審者だった。

 背が高いばかりのヒョロガリであり、見るからに臭そうで、端的に言い表わすとボロキレをまとったナナフシかなんかであり、つまりはテンプレの不審者である。



 ロビー活動の結果、回数を重ねるごとに顔を晒すのが辛くなって、最初から被っていたフードが手離せなくなった次第だ。

 不審者はより不審者に近づいたが、不審者だって不審者の自覚はあるので、人に顔を晒すのが苦痛なのだ。



 不審者が陽の圧に消し飛んで死んでいると、イケメンが整った眉を崩して困惑した表情を見せた。

 女性二人も何やら囁きあっている。



 だから最近は会話する前に逃げてんだよな。

 ロビー活動の回数に反比例して、ただでさえ少ないコミュ力が死んでいくの自分でわかってるもん。

 イケメンがテンプレイケメン過ぎて、思わず直視しちゃったのが敗因だった。



 気を取り直し、各々の反応を無視して会釈をし、反転して山の奥に駆け出した。



 そしたら何故か追いかけてきた。

 僕はビビった。



 走るのには自信があったが、鍛えているだろうイケメンはもとより、イケメンの付属品である肉便器ファンネル2体も普通に速い。

 本気で走ってるのに差がそれほど生まれない。



 背後から何度も大声で呼び掛けられる。

 なにこれ猪の巻き狩りかなんかかよ。

 僕は恐怖が高まるのを感じた。



 テンパり過ぎて、久々に方向感覚が失われる。

 そうだと気付いたのは、いつか来た断崖絶壁が目の前に迫っていた時だった。

 焦りから視野が狭まり、崖の存在に気付いたのは本当に直前だった。



 背後にはもはや無言で迫ってくる3人が。

 イケメンを中心に三方向に分かれており、横に逃げても詰みになる布陣を油断なく整えている。

 本当に本気過ぎて、本気の理由も全然わからないので本当に怖い。



 恐怖から、逃げ道を無意識に選択した。

 崖に向かって速度を落とさず駆ける。



 僕は運動神経がわりといい。



 崖に衝突する寸前まで全力疾走した。

 直前で全身を屈め慣性を受け流し、垂直跳びに移行して壁面に取りつくと、頂上まで4〜5階相当の高さをボルダリングの要領で一気に駆け登った。



 崖を登るあいだ、背後から矢や魔法を射られる可能性が常に頭をちらつき、速度を落とす選択を全身が拒否した。



 頂上に辿り着くと、疲労と恐怖からの解放感で、四つん這いの状態のまま一歩も動けなくなる。

 冷や汗も多分に含むだろう、ヌルヌルとした汗が全身にまとわりついて気持ちが悪い。



 意識して深い息を吐き、呼吸を整えていく。



 青髪ロリポニテが僕を心配して慌てている。

 ゴブリンさんは、困惑した表情で僕と崖下を交互に見ていた。



 ノロノロと犬の様に移動し、崖の下を覗く。

 3人が唖然とした表情でこちらを見上げていた。

 お互い目が合うのがわかる。

 その状態のまま、しばらく無言の時間が緩やかに過ぎていった。



 3人に攻撃の意志が無いことは最初からわかっていた。

 最初から最後まで、僕のゴーストに反応が無かったからだ。



 もう捕らえられないと悟ったのか、チラチラと振り返りながら去って行く。

 恐怖から、彼らの姿が完全に見えなくなるまで目を逸らせなかった。

 しばらくして、安堵と情けなさから涙が溢れた。






ー◆ー






 そんな感じで、僕のロビー活動は順調に進んだ。

 同時にコミュ障も順調に進行してゆく。



 ゴブリンやオークが、村人だか冒険者だかを集団レイプしている現場に出くわしたことも数回あった。



 モンスターの生態がエロゲ準拠してるのに若干高揚を覚え、若干興奮しつつ、暗がりから投石で全員鏖殺した。



 オークさんを剣で突き刺して念入りに殺し、被害者の身体を水筒の水と清拭(せいしき)用の葉で清拭し、全身の具合を検める。

 傷があれば再び洗い、ヨモギをすり潰して塗る。

 頑張って噛んでなめした猪の毛皮で包み、お姫様抱っこで集落に向かって駆けてゆく。



 僕は運動神経がわりといい。

 普段運動しない癖に、持久力には自信があった。

 そこそこの速さでノンストップで進む。



 驚いている門番に引き渡し、状況の説明を求めているらしい彼に会釈して反転し、無言で森へ駆けてゆく。

 ロビー活動が功を奏して、不審者の存在は門番も認知していたのだろう。

 深追いされたり、敵意を見せられることはなかった。



 ただ、ゴブリンさんの大群が、集団レイプしてた現場に出くわした時は本気で焦った。



 ゴブリンレイパーの数も多いし、とりあえず投石して気を引いたんだけど、人数の多さからか興奮してる連中が、僕に気付かないまま腰を振っている。

 全然女の子から離れてくれない。



 どうしていいかわからなくて、とりあえず奇声を上げながら接近して斬りかかると、大半の連中は気付いてくれた。

 ただ、こっちに気付いても腰が止まらない人達もいた。

 人数が多いし、僕は居ても問題ないと判断したのかも知れない。



 無事ヘイトを稼いだので、追いかけっこしながら石を拾っては投げて数を減らす。

 この時、僕はゴブリンさんを完全に舐めていたのだが、彼等が人数に任せて矢や石を放ってきて、久々に死の恐怖が蘇った。



 戦闘の勝敗は、基本的に数で決まることを完全に失念していた。



 追い付かれれば人数差ですり潰される。

 木を遮蔽物にしながら森の中を走る。

 矢を剣で薙ぎ払い、頭を二の腕の革鎧で守った。

 防ぎきれなかった矢と石が身体に当たるが速度は落とせない。

 胴体は鎖帷子(くさりかたびら)で保護されているが、腕や脚に石が当たり、矢は革鎧を貫通する。



 道を見失わないよう円を描いて駆けながら、体力を擦りきって敵を鏖殺し、傷だらけのまま、ほうほうのていで現場に戻る。



 10人くらいのゴブリンさんが、依然として問題なく腰を振っていたので、落ち着いて呼吸を整え、一息に連続で投石して数を減じさせる。



 人質の存在と手段に気付いたゴブリンさんがなんかしようとしてたけど、今更手遅れなので全員無事死亡した。



 休む間も無くとどめを刺し、5人の少女達と己の傷を検める。

 この人達の矢って唯でさえ不衛生っぽいし、仮にウンコ塗った矢傷を放置してたら間違いなく破傷風になる。



 大急ぎで持っていたヨモギを全部すり潰す。

 自分の傷を洗い、痛む傷口にヨモギを塗りたくる。

 少女達の全身を洗っている暇も水筒の残量もないので、清拭用の葉で大雑把にぬぐって傷の有無だけ確認し、傷があれば水で洗いヨモギを塗る。

 幸い致命的な傷を負っている人は居なかった。



 全身にまとっていたザーメンパックは、多少ぬぐったけどこびりついたままだ。

 これ抱っこして運ぶ不審者にもダメージがあるので我慢してほしい。



 当然だが、見るからに少女達は衰弱している。

 時間がない。

 ひとまず一人だけ抱っこし、伝わるかどうか全然自信ないけど、戻ってくるから待っててと言い残して集落へ走る。



 困惑した門番さんに女の子を渡し、コミュ障の必死こいたボディーランゲージであと4人いることを何とか伝える。

 ソワソワしながら待っていたら出てきたのは、知らない冒険者さん4人と、例のイケメンとファンネル2体だった。



 とてつもない気まずさを感じつつも、状況が許さないので現場に走る。

 打ち漏らしたゴブリンさんや、通りすがりのオークさんが出るとも限らない。

 時間が惜しいので、後ろを気にしつつ全力で走った。



 現場に戻ると無事で、思わず安堵の息を漏らした。

 今更どうしようもないが、不安に駆られて全員の安否を再度確認する。

 後ろから冒険者さんが集まって来るのを感じ、僕の中に再び気まずさが生じるのがわかった。



 冒険者さんが少女達を保護するのを尻目に、僕は少しずつ距離を取っていく。

 イケメンが僕にむかい動いた気配を感じて反転、森の中に全力で駆け出した。



 イケメンの叫び声が背後に遠ざかる。

 少女達の存在も手伝ってか、今回は追いかけっこに発展することはなかった。



 こうして二ヶ月ほど経過し、僕はある問題に直面した。



 大切に使っていた岩塩が無くなりつつあった。






ー◆ー






 ロビー活動の結果、僕の不審者然とした印象を鑑みても、集落の住人には多分、安全かつ有用な不審者として認知されてると思う。

 謎のヒーロー不審者マンとして名を馳せている可能性も高い。



 塩を求めれば、(こころよ)く応じてくれるかもしれない。



 でも万が一嫌な顔されたら、僕の脆弱なメンタルが一撃で砕け散るし、対価として差し出すものもない。

 お金も持ってるけど死体から剥いだお金だし、この辺の塩の価値もわかんないし。



 動物の肉とかを持って行ってもいいんだけど、持っていったとして、次に起こすべき適切なアクションが全然思い浮かばない。



 仮に門番さんか、その辺の冒険者さんに肉を渡したとして、何コイツって反応されたら、多分僕は何も言わずに逃げだす。

 不審者伝説に拍車をかける結果しか思い浮かばない。



 色々考えてたら気分が沈む。暗澹(あんたん)たる心持ちで森を徘徊し、芋を掘りながら、どっかに岩塩埋まってないかなとか考える。



 川の拠点に戻り、(かまど)(たきぎ)を組み火を焚き、籠を川から回収して調理の準備を始める。

 魚と芋に少しの塩を振って、枝を串にして火で炙る。



 熱を通してる間に、鎧を外して全身をほぐす。

 採集した薬草を整理し、小分けして鞄に詰め込む。

 肩掛け鞄は腰のベルトにくくり付け、ウエストポーチのように運用する事にしていた。

 走るときに邪魔なのだ。

 剣もロープと鞘を加工して、背負うように身に付けている。

 籠や背嚢は邪魔なので拠点に置いたままにしている。



 火の通りの具合を見て、食事を摂る。

 味に慣れきった上に、塩味が薄くて食欲が湧かない。

 食べ終えるとデザートに果物をかじる。

 ビワに似たこれは甘くておいしい。



 果物はいくつか選択の余地があるので、数少ない娯楽でもある。

 ビタミンの補給のためにも、積極的に食べる必要があった。

 最近の食事は朝晩の2回。

 小腹が空いたら、そこら辺の果物を採取して食べた。



 なお干物は既に作っていない。

 作るのに塩を多く必要とするのもそうだが、食糧は充実しているし、道に迷うことももう無いので、今は作る必要性が薄い。



 食事が済むと、薪を集めつつ今後の事を考える。

 何日かに一度、拠点は移動する。

 モンスターや動物、あと人に場所を覚えられるのを避ける為だ。

 明日は移動しようと決める。



 目先の予定が決まってしまったので、目下の塩の問題、ひいては対人関係の構築について頭を巡らす。



 思考が滑る。

 今日も考えるのには駄目な日だった。

 身体を濡れタオルで拭いてハンモックに転がる。



 もうどうしようもない気がする。

 どうでも良くなってきたので、ロリポニテの彼にお願いしてヨシヨシしてもらう。



 太ももを目で舐める様に眺めていると、恥じらった彼がスカートを捲り上げてくれた。

 黒のローレグにスジが浮かんで目にやさしい。

 ゴブリンさんと二人で微笑みながら眺めた。

 徐々に眠気が訪れる。



 もう最悪、岩塩が無くなってもいいや。

 ミネラルは魚や果物で補給できる気がするし、血液は完全栄養食ってタフの人も言ってたので、蛇とかの生血(なまち)を飲めば生きてける気がする。

 刃牙の自衛隊の人も蛇の血飲んでたし、たぶん大丈夫だろ。






ー◆ー






 開き直った僕は、久々に気持ちよく目が覚めた。



 食事を済ませ、拠点を移して、諸々の準備を終えると、すぐに自由時間となる。



 洗濯をして身体も洗い、さっぱりした僕は早々にロビー活動へと移る。



 籠を放置すれば魚は勝手に獲れるし、近辺の果物の生えてる場所は把握している。

 芋や山菜もよく探せばそこら中に生えてるので、動物を狩ろうとしなければいくらでも時間が作れた。



 ロビー活動は大いなる暇つぶしでもある。

 積極的にコミュニケーションを取ろうとしなければ、精神的な負担も無い。

 陰キャは人間観察して情報を得ることに余念がなかった。



 ウロウロしていると、戦闘の気配をゴブリンさん(スタンド)が教えてくれた。

 自分の気配を殺しつつ現場を確認すると、女の子3人がオークさんの集団に囲まれていた。

 しかも既に1人負傷している模様。

 大乱交オマンコシスターズが始まってしまう。



 ちょっとレイプの頻度多過ぎない? お前らもっと人数集めてから来いよ、とか思いながら、石を拾って投石しつつ大急ぎで現場に急行。



 オークさん達が怯んだ隙に、援護に気付いた女の子達が負傷者と共にこちらへ移動。戦線を整える。




 見た感じ、無事な二人は後衛っぽいので、女の子達の前に出て回避タンクに徹する事にした。



 オークさんはアホなので大振りのテレフォンしか打ってこない。

 囲まれないように立ち位置に気を付ければ問題ないが、今回は特に負傷者がいるのでこれ以上下がれない。



 イケメンとファンネル達に比較したら、威力も連携も(つたな)いが、二人は必死に魔法を当てて援護してくれる。

 僕はオークさんの集団内に潜りこみ、中で牽制してヘイト稼ぎすることを敢行。




 左手で剣を振り、隙があれば使い捨てのスリングを投じて頭を砕く。

 四方から攻撃がくるが、ゴーストの囁きに身を任せ、跳ねたり転がったりしながらアホ共のテレフォン攻撃を回避する。



 必死こいて避けてたら、いつの間にか負傷者が戦線に復帰していた。

 前線が2人となり、全身から謎の光を放つ聖職者っぽい女の子が、メイスを振り回してオークさんの腹を臓物ごと吹き飛ばす光景に戦慄しつつ、戦況が定まっていくのを感じた。



 レイパーを無事殲滅(せんめつ)すると、疲れが一気に出た。

 フードが脱げていたので被り直す。

 汗が噴き出て動く気になれなかった。



 目に入った汗を拭って周りを見ると、肩で息をする3人の内、1人の女の子がこちらをじっと見ていた。



 金髪ショートの、真っ白い肌に青い眼をした150cmほどのほっそりとした小柄な女の子である。

 十代に入ったばかりだろうか。

 非常に整った顔をしている。

 ゆったりとした黒いローブを羽織り、先程は魔法で援護してくれた片割れだった。



 気まずさを感じ、さっさと会釈して逃げようと方針を固めるも、どこか懸命な彼女の視線と、頭に引っ掛かった違和感から目を離せない。





「……?」





 どこかに既視感を覚える。



 お互い見つめ合っていると、唐突に女の子が泣きそうに顔を歪ませ、次いで僕の胸元に飛び込んできた。





「山田……!」





 潤んだ目でこちらを見上げながら、震える声で僕の名を呼ぶ。違和感の焦点が繋がった。





「佐藤さん……?」





 久々にまともに声を出せた気がする。



 僕の胸元にすがり付くこの人は、異世界に転移する直前、僕と一緒に街を散策していた。



 彼は女装癖を持つメスショタおじさんであり、数少ない僕の友達だった。







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