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異世界召喚~出会い編

・・・眩しい。

目を開けると目の前には鎧を着た戦士のコスプレをした女の子が傷だらけで座り込んでいた。神殿のような大きな柱のある部屋にいることからここが日本じゃ無いことだけは明らかだった。

(えっどういうこと!?っていうかここどこ!?)

俺は混乱した頭を落ち着かせようと今日の出来事を思い返した。

今日は誕生日。仕事が終わり帰りにいつものコンビニで夕食とケーキを買った。普段はケーキなど食べないが今日はなぜかいつもと違うことをしたい気分だった。

家に着き誰もいないことをわかっていながらも

「ただいまー」

と言いながら玄関のドアをガチャっと開けた。

その時、目も開けられないような光が体全体を覆うように襲ってきた。

「うっ 眩し・・・」

(なるほど・・・まさか家に着いたらこんな異世界召喚みたいなことになるなんて・・・)

異世界物は好きで漫画や小説をよく読んでいたからこんな状況でも割と受け入れられた。

経緯は後でゆっくり考えることにしてとりあえず今の状況を知ることにしよう。


女の子に大丈夫ですか?と話しかけようとしたその時

「もう一度問うが 我の仲間にならないか?」

背後からの突然の声に驚き、思わず後ろを振り向いた。

(!?)

アニメなんかで魔人や魔物と言われているような姿の生き物がそこにいた。頭には角があり口には牙、肌の色は青色とまさに人外の生き物だった。

その時、俺はここが異世界であることを確信した。

「魔王の仲間になるなら死んだ方がマシだわ」

女の子がそう言うと魔王は少し焦っているように見えた。

(ん?魔王?)

信じたくはなかったが、現状を理解した。

俺は家に帰ると異世界召喚され魔王とのラストバトルというスーパーデンジャラスな状況に巻き込まれているのだと。

「ならば行け 勇者を殺すのだ 我が召喚獣よ」

と魔王が勇者に召喚獣をけしかけた。

(あの女の子が勇者なのか、助けたいけど一般人がラストバトルに参戦って死亡フラグだよなぁ)

俺はいきなり命を賭けて人を救えるほど人間が出来ていない、むしろそういう人の方が多いはず。

まだ死にたくないのでとりあえず見て見ぬフリをすることにした。

「なぜ行かん 命令に逆らうのか召喚獣よ!」

魔王はそう言いながらこっちを見ていた。

(えっ俺!?)

現状が理解出来ていなかったらしい。

どうやら俺はラストバトルに異世界召喚された召喚獣のようだ。

せめて教会とかお城で人として召喚されたかった。

「あの~魔王様」

この世界に来て初めて声をかけた相手が魔王とは。

「私では足手まといになるので元の世界に戻してもらっていいですか?」

これで元の世界に戻れるならと考えた俺なりの作戦だ。もし帰れたら今日の事は忘れよう、そう思っていた。

「ぬぅぅ」

魔王が少し困ったような声をあげていた。

(あれ?どうした魔王少し様子がおかしいぞ)

「ねえ ちょっとあなた」

勇者の女の子が話しかけてきた。

「戦う気がないならそのままでいてくれる?」

なんて答えたら正解なのだろう。もちろん魔王側で異世界生活を送るなんてまっぴら我慢だ。

そう考えたら人間側に味方するべきだと考えた。

「戦えないことは魔王様に話した通りだから何もしないよ」

それを聞いた彼女はにこっと笑い一言

「助かったわっ」

その瞬間、彼女は魔王目掛けて剣で斬りかかった。

「ぐぁぁ」

魔王は剣を避けきれず体を斬られた。反撃もせずフラつきながら何もしない魔王はなにか変だ。

「召喚術さえ使えれば」

魔王は小声で呟いた。

「これで最後よ 召喚の魔王」

彼女は魔王に剣を突き刺し、そのまま魔王は倒れ込んだ。剣が突き刺されたまま魔王は生き絶えた。

(ところで召喚者が死んだら俺ってどうなるんだろ?)

心配していたが特に身体に変化は無かった。

普通のRPGゲームなんかだと召喚者が死んだら召喚獣も消える仕組みだ。この世界はゲームとは違う、全く想像もつかない。

「あれ?なんであなたまだ残ってるの?」

彼女は不思議そうにこっちを見ている。

こっちの世界でも召喚者が死んだら召喚獣も消えるらしい。

とりあえず聞いてみることにした。

「どうやったら戻れるの?」

「・・・」

沈黙で返された。



彼女の名前はシーナと言うらしい。

「俺の名前は朝宮一樹、異世界から来た一応は人間」

「じゃぁカズキね、行くと来ないんでしょ、よかったら一緒に私の国に来る?」

このままこんな所に置き去りにされたら死んでしまう、願ってもないお誘いだ。

「よろしくお願いするよ」

その後、帰路の間この世界の事を色々と聞いた。

この世界には5人の魔王がいること、魔王は魔眼という力を持っていて勇者以外は対峙するだけで動けなくなってしまうこと、シーナには勇者の素質があって仲間と魔王討伐に来たけど仲間が途中で全滅してしまったこと

(あれ?俺ってもしかして勇者素質を持って召喚されたんじゃ・・・)

少しでも異世界召喚らしい特殊能力を期待していた。

「ねぇシーナ、魔眼って勇者以外は動けなくなって戦えないんだよね、動けるってことは俺って勇者の素質があるのかな?」

「えっだってあなた魔王の召喚獣でしょ?動けるのは当たり前じゃない」

(そうでしたね・・・)

自分が召喚獣としてこの世界に来たことを改めて実感したのであった。



馬車に揺られながら数時間、ようやくお城のような建物が見えてきた。

「もう少しで着きそうね、あれが私の住んでいるアスラン国よ」

そう言いながら彼女は少しほっとした顔を見せた。

「シーナ様、お帰りなさいませ」

町に着くと門番らしき兵士がシーナに声をかけてきた。

「ただいま帰りました」

彼女には似合わない少しかしこまった返事だ、もしかしたらこっちが普段のシーナなのかもしれない。

「城で国王がお待ちです」

そのまま門を通り、中央に見えるお城へ向かった。

「へーなかなか賑わった町だね」

建物の前で果物を売っていたり武器屋の看板がぶら下がっていたり異世界物でよく見る風景そのものだった。

「シーナ様お帰りなさい」

町の子供らしき女の子がシーナに気付き近寄って話しかけてきた。

「ただいま」

彼女も女の子の頭を撫でながらそれに応えた。

「人気者なんだね」

「そんなんじゃないわよ」

彼女は少し照れ臭そうにしながら顔を赤くしていた。

お城にたどり着き城の門の中から出てきた兵士に案内され国王の待つ広間に通された。

「よくぞ戻った勇者シーナよ」

王冠をかぶり、マントを羽織ってそれらしい椅子に腰かけている。いかにも王様といった感じだ。

シーナは面前で止まり膝まづいた。俺はそれを真似しながら同じようにする。

「はい、召喚の魔王を討伐し、ただいま戻りました」

シーナは城を旅立った後のこと、魔王討伐までのことを王へ報告した。

「そうであったか、過酷な旅であったな。してその方がカズキ殿か?」

「はっはい」

いきなり話を振られて焦ってしまった。

「どうだ、これからも娘と共に魔王討伐の旅に出てもらえぬであろうか」

王様のお願いを断れるわけもない。

「はい・・・・ってえぇぇーーシーナってお姫様だったの!?」

お姫様という言葉に驚きすぎたせいか少しシーナの機嫌が悪くなった気がした。

「良かったのぅ心強い仲間が出来て」

「お父様、カズキ様は魔眼が通じないだけのただの凡人ですわ」

シーナはムスッとした顔をしている。やっぱり機嫌を悪くしたらしい。

「ふぉっふぉっおぉそうじゃ、今日は祝勝会を開くのでなカズキ殿もぜひ参加してくだされ。それまでの間、客室でくつろがれるといいだろう」

「でっでわお言葉にあみゃえて」

慣れない王様への敬語・・・噛んでしまって恥ずかしかった。

シーナは顔を背けているがクスクス笑っていることは見て分かった。

一通りの報告が終わり

「それでは失礼いたします」

シーナがそう言いながら広間を出ようとしたので

「失礼いたします」

同じく挨拶をし、広間を出ようとした。

「カズキ殿、本当にありがとう」

王様がそう言って頭を下げていたのを見てしまった。シーナはもう視界にはいない。

通常ならここで去るべきがセオリーだろう、だけどここで王様に話しかけた。

「王様、頭を上げて下さい、私はそこまで感謝されるようなことはしてませんから」

「おぉすまぬな、カズキ殿少し話をしてもよいかな?」

俺は無言でうなづいた。

「この国では生まれてすぐ勇者の素質があるかを調べておる。魔王に対抗出来る者が勇者だけしかおらんからじゃ、だが娘に素質が出てしまってのぅ」

そこまではどこにでもある世界を救う物語のような設定だった。

「幼い頃から娘には戦士としての教育を施し、戦えるだけの力は付けさせてきた」

「例え世界屈指の力を持った仲間がいても魔王と対峙しては何も出来ん、それが魔眼の力なのじゃ」

つまりこういうことか、世界最強の力が有っても魔眼に抵抗出来なければ意味が無いと。魔王には結局勇者1人で戦わなければいけないのだと。

「娘1人に重荷を背負わせてしまったが生きて帰って来てくれた、しかも魔王に対抗出来る力を持った仲間を連れてだ。そなたには酷なお願いをしてしまうが娘を守って欲しいのだ」

王様は少し震えながらそう話しをしてくれた。

娘を思う父親の気持ちと国を思う国王の気持ちが何となく伝わってきた。

「安心してください、シーナは死なせませんから」

俺は出来る限りの言葉を伝えた。

「ありがとうカズキ殿、さすがシーナが認めただけの男だな」

俺はペコリとおじぎしその場を去った。



その後、メイドさんらしき人の案内で客室に通された。

「部屋の物はご自由にお使い頂いて構いません。会食のお時間の少し前にご案内に参りますのでそれまではごゆるりとおくつろぎ下さい。」

そう言ったメイドさんは丁寧なお辞儀を残し部屋を去っていった。

(こんな豪華な部屋じゃ逆に落ち着かないよなぁ・・・)

まるでスウィートルームのような部屋に通され1人で何をして時間を潰したらいいのかわからない。

「とりあえず会食用の着替えでも考えようかな」

そう呟き、クローゼットを開けるとタキシードやスーツがずらりと用意され並んでいた。

その中から黒色の無難なスーツを手に取り

「よしっこれにしよう」

目立たず浮かなそうなスーツに決め会食の参加準備を終わらせた。所まではよかったが

「ん~暇だ・・・」

ベッドに寝転がり何もやることのない俺は天井を眺めながら今までのことを思い起こしてみた。

眩しい光とともにこの世界に召喚された俺は魔王の召喚獣だった。いきなり魔王と勇者のバトルに巻き込まれて死亡フラグだった所を勇者の女の子に協力して魔王を討伐。協力なのかどうかはわからない、正直何もしていない。その後女の子の厚意によって今のような状況に至る・・・と、現状をまとめると異世界召喚された人間が王宮で客人扱いされているだけである。そんなことを考えていると

コンコンコン

ドアをノックする音が聞こえた。

「カズキいる~?」

シーナの声だ。

「どうぞー」

ガチャっとドアが開きお姫様らしいドレスを着たシーナが入ってきた。

「何してるかなーと思って来てみたんだけど」

「想像通りかな」

そのまま彼女はこっちに歩いて近づきベットの上に座り込んだ。

「お父様はあぁおっしゃったけど無理しなくていいからね」

「魔王討伐のこと?」

「カズキは戦えないんだからこの町にいたほうが幸せかもよ」

彼女なりに気を使ってくれているらしい。

「たとえ戦力にならなくてもシーナ一人にはしておけないよ。それに何も出来ないわけじゃない、何か出来るかもしれないだよ?」

正直なところ何か出来るとは思っていない。でも彼女が背負った辛い運命を聞いてしまったからには一人にさせちゃいけないと思った。

「カズキは優しいね」

彼女は安心した顔を見せた。やっぱり心細かったのだと思った。

コンコンコン

「会食のご準備が出来ました」

メイドさんが祝勝会の時間を知らせに来た。

「あっはい、今から準備します」

「じゃぁシーナまた後でね」

「うん」

シーナはドアを開け一足先に部屋を出て行った。

「あら姫様いらっしゃったのですか」

「私もそろそろ向かいますわ」

彼女が出て行った後、俺も身なりを整えて会食の準備をすることにした。



会場に着くとそこはまるでどこかの国の立食パーティーのようにオードブルやお酒がずらりと並んでいた。参加している人も貴族のような人だけでなく鎧を着た兵士も混ざっていてみんな楽しそうな顔をしている。この国の居心地の良さを感じた。

「皆の者、今日は我が娘のシーナが勇者として召喚の魔王を討伐しためでたい日となった」

「今日を祝おうではないか」

みんな乾杯をしているようでグラスのぶつかる音があちらこちらから聞こえてきた。

がやがやとみんなが騒いでいる中でシーナがどこにいるのか周りを見渡してみる。

(やっぱり主役だしすごい人気者だな)

周りを大勢に囲まれ笑顔で会話をしている彼女を見て少し寂しさを感じた。

この異世界で独りぼっちの自分の唯一の知り合いが遠い所にいることが孤独感を生んでいた。

(少し一人になろうかな・・・)

そう思い、お酒の入ったグラスを片手に俺は夜空の見えるテラスに向かった。

テラスの椅子に腰かけ夜空を眺めていた。

「この世界の夜空って綺麗だなぁー」

夜空には散りばめられた星が光っていた。日本でも都会の光の届かない山奥にでも行かないと見れないような光景だった。そのまましばらくそこにいることにした。

夜空を肴に一人で飲むのは至福の時ではあったが少し酔いが回ってきたのかうとうとし始めた。

「カーズキ」

シーナが声をかけてきた。

「うわぁっ」

思わずびっくりして目を覚ました。

「こんな所で一人で飲んでるのー?」

「まぁね、人見知りだし、それにほらっ夜空が綺麗だなーって」

「ほんとねー、普段気にしてなかったけどこうやって見ると綺麗」

シーナが声をかけてくれたことが少し嬉しかった。

その後二人して空をしばらく眺め続けた。

「カズキ、これからよろしくね」

「こちらこそ」

「あっでもただの凡人だから役に立たないかもよ?」

「なんでそんなこと言うかな」

少し口を膨らませた彼女を見て可愛いと思ってしまった。

そうだ、俺はこの世界に来てしまった俺を救ってくれたこの子を守ろうと誓った。














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