5. 少女生活の決定
先週後らせてしまったため、今週は二日連続ですが、今後は週一に戻ると思いますので、ご容赦ください。
「はぁぁ」
「うるさいな。おに…姉ちゃんは。もう来ちゃったんだから流石にそろそろ諦めたら?」
「だってぇぇぇ!」
あれから数十分後。俺たちは少し遠くにあるショッピングモールにいる。ここは我が家の周辺で唯一映画館があり、映画を見るときにはよく来るのだが、今日は映画も見ないのになぜかここにいる。
その理由は主に二つ。一番近くのところよりも地味に大きいから。そして、俺が洋服を買いにいったとき、すずや俺のクラスメートとかに会ってボロを出したり、焦ったりしないように。とのこと。
先程、母を含めた家族でこの状況についての方針を決めた結果、俺の予定通りこのことは誰にも言わない家族の秘密となること。学校や部活はしばらく見合わせること。そしてもう一つが決まった。のだが、、
「ねぇ!?今からでも帰らない?」
「ダメ!それにさっき聞いた通りでしょっ!?」
「萩、さっきいいって言ったよね!?」
「うぅぅ…」
さて、なぜここに来るはめになったのかお話ししようと思う。
時は数十分前、上に挙げた二つのこの状況に対する方針が決まった時に戻る。
「ええぇぇぇ!!?」
「いや、別にこの際そこまで驚くことじゃないでしょ?」
「でも、なんでそんなことしなきゃいけないの!」
「理由はさっきいってたじゃん」
上から俺、母、俺、すず、の順である。
とりあえずこの会話を理解してもらうためにも、時系列を整理しようと思う。いや、時系列というほどではないかもしれないが……それはどうか突っ込まないでほしい。
まず最初二階から降りたときにはなぜかもう母は理解しており、様々な言葉を涼香と二人で浴びせてきた。これがまず一つ。
次に食事をしながら、さきほど申した通り二つの方針を食事を取りながら決めた。要するに例の家族会議的ななにかは朝食を兼ねてだった訳だ。それで二つ。
そして今、会議で少し時間をかけて朝食を食べ終えたこのとき、母さんが再び「じゃあ買い物行こっか?」と、言った。要するに再び女物の洋服を着るように勧告してきたのだ。これで三つ目となる。
実は下に降りてきたときも同じように言われたのだがそれはしっかりはっきりと断った。そして絶対に嫌だと強く言ったら、涼香もお母さんもこのことについては触れなくなったので洋服まで着せるのは諦めたのか、そう思っていた。
でも、世の中そこまで甘くないらしい。
母さんは俺は洋服と下着を買いに行くべきだと主張する。そこで俺がさきほどのように抗議したのだ。因みに涼香も母さんサイドに付いた。最悪。
と、まあこれがここまでの経緯である。これを踏まえて話を戻そう。
すずの声を聞いた母さんはこう続ける。
「だって萩斗はどうせ明日もどっか遊びにいこうと思っていたんでしょ?ゲーセンでも本屋にせよ遊びに行くつもりだったんでしょ?どこに行くにせよその姿でその服装で行動するのはあやしまれるわよ。」
うぅ…。残念ながら図星だ…。明日はもともと部活がOFFなので遊びにいこうと思っていた。今はそれどころじゃなさそうだけど、間を縫って遊びにいこうとしてたのだ。
確かに今の自分の容姿についても理解している。確かにこの格好で動き回ると目立つだろう。だが、彼女らは大きな勘違いをしている。
「確かにそうだよ。だからワンピースとかスカートとかはく分にはいい。けど、わざわざ買いに、特に下着なんかは男物でも問題ないでしょ!?」
そうこれが俺の主張だ。正直ワンピースとかスカートに関しては別に穿いても構わないと思う。
これはもうしょうがないことだし、この春先というこれからだんだんと暖かく、暑くなるであろう時期だ。見るからにスカートとかの方が涼しそうだし、それにこの見た目だ。カートなどに対する抵抗は実は全くない。
別に買っても構わない。が、すぐにもとに戻るかもしれないのだから、勿体無くないかってだけ。
でも、下着となると話が変わる。理由は簡単。流石にはずかしい。ただ、それだけだ。
それに、これに関しては見た目に関わらないのだから別に男物でも構わないのでは?と思うのが正直なところ。
でもそれは涼香に認められない。
「でも、あった方がいいと思うよ。てか、胸の辺りとか擦れて痛んだりしない?」
「そ、それは…」
指摘の通り、朝起きて少ししてから気付いたのだが少し胸の辺りが服で擦れて少し痛かった。
ところでなぜここでその話を出す?もしかして、、あの、、その、、口に出すのは躊躇われるが、いや心の中だからセーフかな…?いや、そうじゃなくて。
いわゆる…ブラ…というものをすればこの痛みが和らぐとか…?もし、そうなら確かにあった方がいいかもしれない。
少しそう思ってしまう。が、すぐに思い直す。いやあんなの絶対着けたくない。
しかしこの少しの時間の動揺が命取りとなってしまった。このとき、瞬時に俺の動揺を感じ取った我が母が口を開けたのだ。
「そういうわけだし、母さんはこうなった以上諦めた方がいいと思うんだよね。気持ちはわかるんだけど、もし戸籍とか諸々なんとかなって誤魔化してでも学校行けたなら、絶対に必要になるから。ね?」
最後の「ね?」に大きな力と圧が感じられるんだけど。そしてその圧は動揺している俺を押し潰した。
「あ、はい。」
こう思わず頷いてしまった。なんかあんな感じで圧力掛けられると頷かざるを得なくなっちゃうのは俺の悪い癖である。もちろん、頷いたからには実行せざるを得なくなった。
「それにやっぱり自分で好きなの買っといた方がいいと思うよ。下着とかはそれこそすずとサイズが違いすぎるから貸せないし、スカートとかだって、おに……お姉ちゃんのサイズのやつ2枚くらいしかないから。」
ここで涼香も追い討ちをかけた。てか、そもそもこいつらは下着とかまで貸す想定だったのか。
ますます俺の主張は通らなくなる環境へと変わっていく。
そして、俺の気持ちすら変えさせた決定打となるやり取りが入った。
「もし断固拒否するなら、今日は一先ず見送ろうと思っていた病院に行くよ?」
「「はい!?」」
妹とハモる。二人ともなぜ病院なのかわからない。熱は下がったのだから別に行く必要ないと思うのだが。
「だって男が女に変わるなんて医学的にも衝撃に決まっているでしょ?あくまでも男として振る舞うのなら病院行ってさっさと原因を調べてもらって、病院の指示をあおぐ方が楽でしょ。ただ、病院で研究対象扱いとかされたら自由がなくなると思って、とりあえずは女の子として過ごさせて誤魔化そうと思ったんだけど…」
「そうだね。さっさと服買いに行こうか」
即座に俺が返答した。
確かにその通りだ。普通、朝起きたら自分の性別が変わっていたとして行こうと思うのは病院…なの…かもしれない。だって、それは体の異状。それ以外のなんでもないのだから。
俺と涼香がそんな考えに至らなかったのは、一つはそれよりもこの状況で学校とか諸々に対してどう対応するかの方に思考を向けていたから。もう一つは洋服をどうするかしないか俺の中で葛藤していたから。
そんな俺と涼香に対する母さんの「病院行くか」という意見はもっともだと思う。が、そもそも萩斗と今ここにいる少女が同一人物であることを証明するのが難しい。
さらに、仮にそれが認められれば病院に閉じ込められるのは必至だろう。それが嫌であれば女の子らしくしとけと。なるほど。
俺もさすがに病院に監禁されるのは嫌なのでこれこそ頷かざるを得なくなり、今こうしてここにいるのだ。
全置きが長くなって申し訳ない。要するに病院に監禁or女の子っぽくする。好きな方を選べと脅された。それだけだ。うん。
とにかく、そういった事情もあって、今は一先ずすずから借りた服と……下着、を着ている。
思っていた通りワンピースの方が涼しいし、ゆったりしていていい。あんまり激しく動きすぎると見えてしまうだろうがそこまで動かない俺から言えば大した問題点ではない。
それよりも下着に関してだ。これだけはと拒否し続けたのに来といた方がいいとのこと。例の胸の辺りの痛みもましになるし買うときの採寸のとき変に怪しまれる可能性を排除するため、、、と言われればしょうがない。これが原因でバレることはないと思いたいが、可能性は排除すべきだ。
これらの服は買い次第自分のに着替える予定。妹のをずっと着たままなのは正直兄として恥ずかしいから。
あとこれは述べる必要ないかもだけど部活には車の中から俺の口で直接休みを連絡しておいた。顧問の反応は普段と変わらないので本当に声に関しては変わっていないらしい。
因みに髪型はポニーテールにしてあるが、これは車のなかですずから借りたゴムを使って自分でやったものである。髪が長いため暑くてしょうがなかったからだ。割とうまくできたのかわからないけど、今のところこれに関して、なにも言われてない。
それはともかく
冒頭のように涼香たちは言うが、明らかに女の子らしい格好をさせられている?上にいきなり女子用の下着まで買わされるのだから、この嫌々な態度も仕方ないだろう。うん。まぁそう言いつつも変に病院とかに連れていかれるよりはいいと思うけど…
気付いたら涼香が俺の手を取り、ショッピングモールの入り口へ引っ張っていく。すぐに涼香の手を払いのけて自分で歩き始める。
ここは家からもっとも近いデパートより新しい。そろそろ九周年フェアなるものも行われるそうで入り口のポスターを貼るようのアレには、それを宣伝するものが張られていた。
まだ四月下旬なのに空調が効いているのがわかった。
中に入ってすぐに母から封筒のようななにかを受け取った。
中を出すと一万円札が2枚。疑問の目を母に向ける。
「それでたぶん足りるから取り敢えずウィメンズならなんでもいいから涼香と一緒に買いに行っておいで。」
「はっ!?」
俺が衝撃に走っているのに対してすずは嬉しそうだ。
「あ、それ面白そう。ついでにすずの服も買ってきていい?」
「ダメ!と言いたいところだけど、もしお金余ったらいいよ。」
「やった!!」
「ただし、3、4、日分の服は買ってからね。」
「はーい」
「いや、ちょっと待った。なんですずと二人だけで!?」
この方向で進んでしまいそうなので急いで突っ込む。普段すずが服を買うときは少なくとも母も付いてくる筈だ。別に母がいなくても構わないのだが、このままだとすずの着せ替え人形にされる気が…
「お母さん買い物してきたいからごめんね。朝はセールだから、買いにいきたいのよ。それに母さんは中学生の娘の服はわからないから。」
「でも、、」
このままだとすずの着せ替え人形にされる、、、という俺の発言を押しきって
「すずなら多少は服わかる筈だから。精々似合うの選びなさい。」
そう、俺とすずをショッピングモールという平原に突き出したのだった。
「なあ、すず?お前俺くらいの年の女の子の流行とかわかるの?」
「恥ずかしいし、普通にバレちゃいそうだからせめて外では言葉遣い気を付けてもらえない?おに、、お姉ちゃん」
「あ、ごめん。。」
そう言いながら、今自分でも言いながら俺をお兄ちゃんと呼ぼうとしたよな、と愚痴る。
今、俺たちはお母さんに突き放され、涼香のよく行くらしい店へと向かう移動中である。その店に俺くらいの身長に合うのはあるのかと聞いてみると普通にあるよ、っと返されてしまった。
と、いうのもその店は小中学生くらいの女の子をターゲットに様々な衣料が置いてあるとのことだ。
さらに、この一夜の変化の中でまた新しく見つかってなかったものがわかった。身長の縮小だ。
彼女はこのように続けた。
「それにお姉ちゃんの今気づいたけど身長少し小さくなってるような気がするよ。すずが137位なんだけどこの感じだと10センチも差がなく見えるよ」
と、なると身長はあっても147くらいらしい。1年の三学期の記録は153.4だから実に六センチ縮んでることになる。正直頂けない副作用だ。いや、この事態すらそもそも望んでいなかったのだが。
「え、と。すずは私くらいの娘の流行とかわかる?」
「本当に少しならね。でもほとんどわかんないから、勘で好きなの選んじゃうのがいいんじゃない?」
「結構適当だね……」
それでいて今確認してるのは、そもそも涼香も今時の中学生女子がどんな服着ているのかわかってんのかについて。
そういうのも涼香は小学五年生。確かにおしゃれに興味が出てきた年頃だろうが中学生と小学生のファッションはさすがに違うのではという懸念のためである。
「まぁでも本当に好きなの選ぶのが一番だと思うよ。すずは。あとは試着したときに似合ってるかは見てあげるから。」
「俺に似合うのなんてあんのかなぁ……」
「お姉ちゃん!!」
「はい」
あ、今傍にいた女子高生っぽい人によくわからない視線で見られた。まぁそうだよね。こんな水色のワンピにしっかりとポニーテールをしている娘が「俺」なんて一人称使ってたら不思議な目で見られるかもね。
今度から思考でも「私」を使うようにしないとな…
「でも今のおに、、、お姉ちゃんは結構似合うの多いと思うよ。ボーイッシュでもいいけどかわいい系が一番似合うと思う。」
「そうなんだ…」
「そうなんだ、じゃないよ。ほら、着いたよ!」
そういってすずはかわいい系の方が似合うという言葉に衝撃を受けた俺、、私の気を知って知らずか、手を取ると走り出す。後ろで束ねた髪が上下に動くのがわかった。そしてある点で止まった。もはや諦めの気持ちが大きく、深いため息をついた。
そして、目の前の店に顔を上げる。すると、、
そこにはメインカラーがホワイトでところどころピンク色の照明が漏れている、すずのおすすめ、とってた大きな店が立っていたのだった。
現実を見せられたようで再び顔を俯かせると、子馬の尻尾は一瞬暴れたがすぐに静かになった。
横目では涼香が嬉しそうにしているのが見えたのだった。
読んでいただきありがとうございます。自分でも自分の書いたものを読み返してみるとどこか味気ない部分があるのはわかるんですよね…
でも、どう直すべきなのかわからないところが多くて……
もちろん他のかたのを読ませていただくことで少しずつですが改善できるように心掛けて書いているのですが、悪い点、直すべき点、逆にもしあるのならばよい点を教えてくださるとありがたいです。
さて、次回からは少しずつ萩斗が女の子として過ごすようになってきます。序章についてはあと5話くらいでまとめられるかな…
追記:ボーイズラブ、ガールズラブ、R15、の警告タグを外しました。今のところそのような描写が使われるかわからないためです。もし、このような描写が見られた場合警告タグを再度付けます。




