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仄かに私を隠したのは誰?  作者: 狛烏賊
わたしのハジマリ
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4. 最悪な朝 (後編)

遅れてしまい申し訳ありません。こんな感じで急に出せないことが続くこともありますがご容赦ください。明日もこの続きを夜7時に投稿する予定です。


「それで、、、結局どうしてそんな姿になっているの?」


 そんなこの事態の本質をつく質問をされた。


 ……



「いや、さっき話した通りなんだけど。」


 俺はそう返した。


 だって本当にそうなんだからしょうがない。というのも先程信じてもらったあと、朝起きたらこうなっていたという簡単な内容は伝えてある。


 念のためもう一度朝起きてからここまでの経緯を説明する。




「……ってところですずが来たの。納得した?」


「納得はしないけどわかった。とりあえずお兄ちゃんは朝起きたらなぜか女の子になっていたってことね。しかもこんなにかわいいし。」



 羨ましそうにこちらを見る。いや、そんな目で見られてもなんともできないし、これは俺が望んだ状況では…ないはず。うん。俺が望んだ状況ではない。


 というか、彼女の目からみたら俺はどう見えているのだろうか。そこまで『かわいい』を強調されると流石に気になるのだが。あとで洗面所で確認しよ………。



 あっ!そうだ。まだ、俺が女って決定したわけでは……ない、。



「涼香安心しろ。お前の言ってることはおおむね合ってるが一つ間違っているぞ。俺はまだ女の子になったとは決まってないぞ。なぜならまだ、アレが無くなっていることを確認したわけでもない。」



 そう俺は胸を張って言う。そういえばそうなのだ。あのとき、こいつが来たとき、俺はトイレに確認しに行こうとしていたところだったんだ。うん。


 でも、当然?ながら彼女は反論してきた。


「はっ!?何いってんの。お兄…お姉ちゃん。てか、さっき自分のまた触って確認したっていってたじゃない。」


「うるさい。あとお姉ちゃん言うな。まだそうと決まった訳じゃないし。」


 せめて「お姉ちゃん」はやめろ。はずかしいから。マシで。


 しかし、それ対する涼香の対応は上手かった、ってか俺がポカしただけなの気もするが。


「じゃあそうと決まれば良いのね?」


 あ、あれ?でも、この流れに流されて、、


「あ、うん…。うん、いいけど。」


 はい、墓穴を掘りました。自分の首を絞めるってこういうことなのかな?


 とりあえず見栄を張ってみたのはいいものの実際この状況において何よりも自分の体の様子を見て自分の考えてることが正しいとはとても言えないことは流石にわかってる。


 それがわかってんならこんなことするなと思う者もいるかもしれない…が、あくまでも俺は昨日までは、、まぁ柚菜なんかにかわいいとか言われてはいたが、()()()()()男だったのだ。逆にこれをすぐに認める方が無理だろう。うん。


 いや、でも、、



 これは完全に俺がしくじった気が…


 

 いや、こんな状況になったら焦るよね。普通。うん。



 でも、そんな心の反論が聞こえるわけなく、完全にはめられた俺は彼女にこう言われてここで完全にあとに引けなくなる。


「じゃあここで裸になっても構わないから今すぐ確認してごらん。どうせお姉ちゃんになっているんだろうし。もし、そうなっていたら私のワンピ、本当に貸してあげるから。」


「む、無理。ここではやだ。」


「じゃあトイレに行ってきてもいいよ。ここで待っているから。なんなら洗面所にもよってきて今の自分がどんな感じか見てきてごらん。本当にかわいいんだから。」


「うぅぅ。わかった。」


 しぶしぶ承諾せざるを得ない。なんらかの圧力が働いてるようだ。いや、無言という圧がかかっている。



 なんかのラノベかなんかで聞いた魔性の妹ってこういうのを言うのだろうか。なんか地味に怖いのだが。

 ってかさっきまで俺が女の子っぽくなってしまったことを信じなかったくせに、信じた瞬間に結構嬉しそうにしているんですけど。これはこれで少し悲しいんですけど。


 そう思いながら嫌々しながらもトイレに行って例のものを確認する。


 ……まぁ、もともとする予定だったからよかったんだけどね。



 ……



 で、その結果なんですけど。 

 

 やっぱりっていうか、予想通りっていうか…。 


 まぁともかくアレはありませんでした。


 薄々はわかっていたもののこの実情を現実に目にしてみるとなんだかいろいろな感情が思い浮かんできて、涙が出る。


 なぜかこのタイミングで昨日のことまで脳裏に浮かんでしまう。俺は何かをしてしまったのか、と。余計涙が出てくる。



 それはポツポツと俺のふくらはぎの辺りに水溜まりを作る。



 それから5分。いや、もっと短いかもしれないし長かったかもしれない。とにかくそれくらいの間トイレでただ一人ポツンといた。涙はもうすでに止まっていた。そんな状況下で妹が部屋で待っていることを思い出したのと、ただここにいてもしょうがないことに気付いたのでトイレから出ることにしただ。


 でも、一旦止まったはずの涙はトイレから出て、手を洗うために訪れた洗面所で再び流れる。


 俺はやっぱり弱虫だった。こんなとき一人ではいつも泣いてばかり。そして、その自己嫌悪の感情が涙腺の決壊を決定的なものとした。


 その気持ちをなんとか振り切り、涙腺の復旧を早めるために他のことに気を留めたいと思った。


 そして、手を洗っているとふと涼香の言葉を思い出す。


 もし、涼香の言う通りにしたら今度こそ自分が女の子になっていることを認めることになるのかもしれない。

 それでも、俺はこの気持ちを振り撒くにはこれ以外しかやることがないと思い、それを実行に移すことにした。


 いや、自分自身気になっていたのかもしれない。

 どっちにしろ鏡は目の前、自分が顔を下げているから見えないだけであり、本来はもう見えているはずなのだ。


 そのとき決心した。そして顔をあげた。


 ………



 そこにはかわいらしい少女が立っていた。


「これが……俺……?」


 おもわず声を出してしまう。でも、許してほしい。自分で言うのもなんだが本当にかわいいと言うのはあながち間違いではなかったと思う。


 少女の肌は白く透き通っており、目がパッチりとしている。


 一見したところ俺の面影はないように見えるが、細かいところが似ているというのも指摘通りだ。特に目元なんかは似ているかもしれない。


 例えば先程述べたように目がパッチリと大きいのだが、そこはもろ俺の特徴だ。女子だと映えるのかもしれないが、男子の頃は出目金とか言う風にいじられたものである。


 一応先に断っておくが、俺は決して容姿がいい方ではなかった。むしろあまりよくなかった。昨日音楽の際で言われていた『かわいい』はあくまでも、『声』がである。そして、この様子を見ると明らかにここに写る少女は自分なのである。


 俺が手をあげれば鏡の少女も手をあげる。俺が舌を出せば鏡の中の()()も舌を出す。しかももとの自らの特徴も思った以上に残っている。


 俺は戸惑い、そして驚く。それ以外のことなどできなかった。先程の不安などはもはや吹き飛ばされていた。


「あぁぁ」


 思わず声を出してみると確かに声の感じは変わっていないのだが、この声が容姿にあっおり、複雑だ。


 因みに髪はやっぱり肩の下に掛かるくらいに伸びていた。試しにポニーテールをして見るとこれまた結構似合っていて、これが自分だと忘れそうになる。



 ーーいやいや、あくまでも俺は男子だから。うん。



 そう己に言い聞かせながら洗面所をあとにし、すぐ目の前にある自分の部屋のドアを開ける。


 すると中に入るといつ持ってきたのか例の…ワンピース、、だろうか。そんなものが置かれており、その脇ですずは待機していたようだ。


 そして怪しくにいって笑うとついに声を出す。


「で、お姉…お兄ちゃん!どうだったのかな?」


 わざとなのか知らないがわざわざ言い直してまでして言う。少し煽られてる気がするのは気のせいではないだろう。うん。

 とはいえ、さきほどあんな風にこんな状況を自分でもわかっていたはずなのに気違いめいた発言をしてしまったのは俺だし、素直に伝えて、『お姉ちゃん』呼びに慣れるしかならなそうである。


 男に二言はないっていうし。いや、今は実質女の子なのか。もうこの際どうでもいいや。それに関しては。そう思い言葉を返す。


「はいはい、涼香ちゃんの言う通りでしたよ。」


「ほら、いった通りだね。お姉ちゃん。おとなしくお姉ちゃん呼びされろ。」


 こいつ、すげぇ生意気なんですけど。面倒だからとりあえず『お姉ちゃん』呼びだけは黙認しようとしたところだが、命令調がムカつくので撤回したい。でも、この際やっぱり面倒だしとりあえず黙認してやろう。この議論はまたあとで。


 そう思い、さきほどからの妹の様子を思い出してつい苦笑してしまう。なぜだろうか。朝から驚いて、泣いてたのに、なぜか我が妹の命令調の口調がおもしろくなってしまう。ん、、、そういえばトイレで泣きながら考えていたことがあった気がする。、、なんだっけ。


「あぁ、とりあえずお姉ちゃんが笑ってよかったよかった。お姉ちゃん泣いてたか……「あ!!!!!」」


「ちょっ、お兄ちゃ…お姉ちゃんどうしたの。せめて、私の話終わってからにしてくれない」


「いや、無理。それより重要。」


 今思い出した。実はトイレで自己嫌悪になりながらかんがえてきたことがあったんです。しかもこれ、かなり重要な要素だと思う。それに涼香の意見も聞きたいこと。


 まぁね、確かに、今のすずの話も少しは重要なないようだった気もしなくもない。彼女はいきなりの出来事に落ち込んで泣いていた俺を励まそうとしていたんだろう。それはそれで有り難いのだが、、今の感じからして『お姉ちゃん呼び』無理矢理やってんだろ。無理矢理やるくらいだったらお兄ちゃんでいいからってか、そうしろ。


 そういうことで考えていたことを伝える。でそれなんだけど、、


「この状況、母さんとかになんて説明しよう?それに学校どうしよう。部活も。ねぇどうすればいいと思う?」


 ということです。これが俺の言う重要なことで涼香の意見も聞きたくてトイレのなかで考えていたことなんです。なんでそんなに感情がグシャグシャしていたのにこんなこと考えていたかって聞かれてもわかんないけど、とにかくなんか気になっていた。


 だって、本当にどうすればいいかわからないのだ。


 母さんや父さんに関しては最悪、涼香みたいにしてなんとかなるかもしれない。引かれるかもだけど。でも、俺の気持ちからしたらそんなこと言いたくない。恥ずかしいし。

 それに、両親も俺の突然の変化に戸惑うのは間違いない。いきなり息子が娘に変わってたら当たり前だろう。もし、仮に明日になったら戻るのであればこのことは隠したい。


 学校に関してはもっと大きな問題である。学校の情報は戸籍と結び付いているはずだ。仮にこの姿が続いたとき、女子として通学するには戸籍の変更は必須になる。


 いまは性同一性障害とかで戸籍上の性別の変更は可能らしいが、それをするのにもせいぜい二十歳にならないと無理だと思う。詳しくは知らんけど。


 また、その逆で男子として通うのは……自分でいうのも嫌だけどキツイと思う。まず一応胸もあるようなので体育とか無理になる。プールは論外だ。

 それに顔も面影はあるとは言え、ある程度雰囲気が変わっているので弄られることは必至である。これについて考えると昨日のことが頭をよぎってしまうのでこれ以上は考えないものとする。


 それにそもそもこれがばれたらそもそも俺の戸籍に疑問が出てくる。それは、困る。とても、困る。親に迷惑をかけることは必至である。


 そんな複雑かつ、よくわからない状況に陥ってしまったがために出来たこれまた不思議な事態に関する会議……というよりは、俺による一方的な相談に対する妹の意見は実に簡単なものだった。


 彼女が言うところには、まず両親には素直に話し、協力をあおぐ。 


 確かにこれは正しい判断かもしれない。


 彼女曰く、いや俺も多少は考えていたのだが、もし両親にこの件を()()()()()()()()()()()学校とかその辺りの諸々は解決されるのではないか、とのこと。


 問題は()()()()()()()()()である。


 涼香もそうだったが、こんなSFチックな事件を信じてもらう方が無理があるってもんだ。現に俺は未だに信じられていない。


 因みに学校と部活に関しては恐らく休むはめになるのではないかということにとりあえずこの二人の話し合いでは結論付けられた。


 まぁ確かに今現在熱は少しだがあるし、少なくとも今日明日の部活に関しては最悪自分で連絡してもなんとかなる、、。


 あれ?


「どうしたの?兄ちゃん?」


 遂にお姉ちゃんよびを断念したようだ。


 ここまで会議、、一方的な相談はこのように進んでいたのだが、どのタイミングで親にこのことを伝えるべきか相談したとき。俺の動きは止まった。それに反応したのだろう。


「いや、、ちょっとそこに置いてある体温計取ってくれない?」


「え!?…別にいいけど。」


 そう怪訝そうながらも渡してくれる。確かに20分程前に一度熱を測ったのにも関わらずこんなことをするのだから無理もない。ただ、、、


 ーー違和感、


 先程から熱があるはずなのに朝起きたときの頭のクラクラを今は感じなくなっていた。


 俺は渡された体温計を即座に脇に挟み、熱を測り始める。30秒ほど立つとピピピッと音が鳴り、確認すると36.7。やはり平熱に戻っていたようだ。

 確かに時計のはりはもうすぐ八時になる。少し下がった分にはおかしくないのかもしれない。でも、あまりに速く下がりすぎな気もする。


 涼香も同じことを思ったのか首をかしげた。が、すぐにそれを考えるのをやめたらしく、「熱下がってよかったね」とだけ言ってくれた。そして彼女は大きく息を吸い直して脱線した話を戻す。


「すずが今から話しに行くよ。今はお父さん仕事だから、お母さんだけのはずだし。学校とかに関して詳しく決まるかはわからないけどとりあえず早い方がいいんじゃないかな?今日なら時間もあるしすずから話す方がお兄ちゃんも楽でしょ。」


「あ、うん。」


 反射的にそう答える。


 そうして、今から下に行ってこの事伝えるねと言うかのように背を向ける。俺はそれを無言で送ろうとするがつい言葉を発する。一つ疑問が出来たからだ。


「そういえば上に来て一時間近く経つけどお母さん様子見に来ないけどどうしたんだろう?」


 と。ここまでの話の感じだと少なくともこの会議?が始まってからは二人とも不思議なくらい冷静にてきぱきと話していたかのように感じる人がいるかもしれない。が、それはとんだ思い違いだ。


 俺がここまでの会話をまとめて記したからそう見えるかもしれないが、二人とも、、特に俺が混乱しており、話は結構長引いた。

 それに俺のいきなりの質問、、これは涼香も予想していたらしいが、それでも答えが出るのはそんなにすぐ、と言うわけでもなかった。まぁ、早かったけど。


 そんなこんなで涼香がここに来てから一時間経っているのに母さんは見に来るどころか声すらかけないから不思議に思ったのである。


 しかしそれとほぼ同時に涼香が口を開いた。


「あ、それと熱なかったら洋服に着替えて下に来てって言ってたから。なんならそこにあるすずのワンピース着てもいいからね。」


「それはない。」


 最後の一言をイタズラっぽく言ってきたが一言否定しておいた。


 彼女は少しつまらなそうにしながら


「じゃあ下に行って説明しているから、お兄ちゃんも早く来てね。本人いた方が説明しやすいから。洋服はどっちでもいいけど

、、ワンピースの方がいいと思うんだけどな……」


 と、後半はもはや呟きながら、下に降りていった。


 完全に聞き損ねたがまぁいいや。どうせこれから下に行くはめになるらしいし。


 てか、想定外なんですけど。なにがって俺も下に行って説明するとか。俺からしたら涼香が勝手に話してくれてそのあといくのかとばかり。


 少し面倒くさいっていうのが本音である。


 でもしょうがない。諦めてタンスから自らの男物の洋服を出して着替えた。確かになんか違和感がなくはないが気にしない、気にしない。


 そういやこのすずのワンピースどうしよ。とりあえず下まで持っていってあげるかな。



 …………



 で、下に来たわけなのだが。既に涼香は例の話をし終わって、しかも納得までさせたらしい。「涼香がこういうんだからそうなんじゃないの?」だって。やっぱり魔性の妹……なのか……?


 いやこの際そこはいい。下に降りてきたらすぐに「本当なんだ……」と結局かなり驚いていた。そこもいいのだが、、、


「やっぱりワンピースじゃなくてもいいからすずの服借りた方がいいと思うよ。なんか変だし、、せっかくかわいいんだからもったいないよ…」


「母さんもそう思うよ。嫌なのはわかるけど…」


 そうすずと母さんは俺が下に来て、服装と容姿を見るのと同時に俺に対して女物の服を着るように勧告するのだった。

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