3.取り巻きは親衛隊へと進化した
親衛隊…(´・ω・`)
おはようございます。エレナと申します
私はフェリシア様の友人であり、親衛隊会員No.1
本日は親衛隊の活動をご紹介致しますわ
朝は親衛隊と共に門の前で整列して10人のお出迎えを致します
この時に不埒な真似をする者がいないように目を光らせ、朝の混乱を避けると同時に10人へご迷惑がかからないようにするのです
親衛隊に入ると徹底した規則を守ってもらうよう指導しますが親衛隊に入っていない方が騒ぐことがあります
そういった者への対処も親衛隊の仕事です
「おはようございます。本日もマナーを守って一日過ごしましょう」
「「「「はい!」」」」
「列は乱さない。触れるなどの接触は禁止。淑女としての節度は守るように」
親衛隊が並び到着を待っていますとそれぞれの馬車でいらした10人がご登校されました
馬車は門までなのでそこで降りてこられます
「あぁ……今日も麗しいですわ」
「シーズー様ご兄弟の可愛らしさは天使のよう」
「まぁ!ターナー様も可愛らしですわよ。可愛らしいのに武術に秀でて男らしい一面もおありなのですから」
「私はトゥルーリー様のお姿を拝見するだけで癒されますわ」
「レヴァール様のあの冷たい目で蔑まれたい…」
おほん!なんだか最後危ない発言もありましたが…まぁいいでしょう
想うだけならば自由です
「きゃっ……!」
小さな悲鳴が聞こえたほうを見ると一人の女生徒が10人の前へ飛び出していました
「あ…あの……」
「大丈夫?怪我はないかな?」
「は、はいっ…あのっ!私、アリスと…もがっ…」
私は急いでカイル様の前に出た女生徒のほうへ行き、女生徒の口を手で塞ぎ名乗ろうとするのを阻止した
「カイル殿下、おはようございます。申し訳ありません、誤って飛び出てしまったようです。怪我もされていないみたいですが念の為、私達で保健室へ連れて行きます」
女生徒を他の親衛隊に連れて行かせ、カイル様へ淑女の礼をし非礼を詫びた
「そうか。いつもありがとう」
「…っ、いえ。私達が自主的にしていることございます」
「うん。それでも助かっているのは事実だからね、ありがとう」
「光栄でございます」
頭を上げることなく殿下方、全員が通り過ぎるまでそうしていた
その後、保健室…ではなく親衛隊が拠点にしている教室へ行くと問題の女生徒と親衛隊2人が待っていた
私が椅子に座るとタイミングよく紅茶を入れてくれた侍女に礼を言い、一口飲んで女生徒のほうを見た
「さて。貴女はどなただったかしら?親衛隊に入っている方ではないわよね」
「は?親衛隊?なにそれ…そんな設定あったかな?いや、そもそもゲームから逸脱してるし…」
何かブツブツと言ってる間に渡された資料に目を通す
そこに書いてあったのは目の前の女生徒、アリス・ミルファット伯爵令嬢についてだった
家族構成から生い立ち、性格や周囲からの評判など
どうやってそんなことを知り得たのかは企業秘密です
淑女には色々と秘密があるものですわ
「アリス・ミルファット伯爵令嬢」
「え?」
「貴女は今年から入学なさったのね。それなら知らないのも仕方がありませんわね。まず入学式のときにご覧になったと思いますが、この学園には10人のアイドルが在籍してます」
「…あ…アイドル?」
「ええ、そうです。そしてその方達の学生生活を守るため私達、親衛隊というものがあります。親衛隊に入隊するかしないかは自由ですわ。ですが、決められた規則がございますので親衛隊であってもなくても守って頂きます」
「親衛隊に入ってなければ関係ないじゃない」
「いいえ。親衛隊は彼らの学園生活を守るために結成されました。ですのでその生活を脅かすようなことはあってはなりません。それは親衛隊でなくても同じことです」
そう、この親衛隊はただキャーキャー言いたいためにあるのではないのです
時に暴走してしまう生徒を取り締まり、混乱や怪我のないようにし彼らの生活を守ることが目的
その役目をしているからこそ、特典として定期的に彼らとのお茶会が許されているのです
このシステムを考えられたのがフェリシア様
おかげで大きな問題もなく彼らや他の生徒が学園生活を送れています
今回のように多少の問題は多々ありますが、全て対処できる程度なので問題はないでしょう
「ええ〜……これ確実に悪役令嬢は転生者じゃない?てか絶対そう……だとしてもこれ転生してからやり始めてここまでできるものなの…?というか、私どうしたらいいのよ…」
「ミルファット伯爵令嬢?何か言いまして?」
「え?あ、いえ…」
「では、こちらの規則と入隊について書かれた本を渡しますので読んでおいて下さい」
困惑しているミルファット伯爵令嬢をそのままに私は教室を後にしました
入学の時期はこのような混乱もあることは想定済でしたのでさして問題ではありませんね
ですが、ミルファット伯爵令嬢が言っていた転生者…とはどういう意味なのでしょうか…
少し注意いて見ておいたほうがいいかもしれませんね
後で手配しておきましょうか
午前の授業が終わり、昼食の時間です
生徒全員が食堂で食事をします
10人の方達は混乱させないようにフェリシア様が食堂に2階を作りそこを専用テラスとして用意しました
なんでも、花よりタンゴ?の再現だとかなんとか…
それ以前は食堂が大混乱になってしまったため昼食は生徒会室で食事しておりました
私達が至らなかったせいでと申し訳なく思っておりました
ですが、専用テラスが出来て食堂で暖かいお食事をして頂けるようになり、私達もお昼にお姿を拝見できとても嬉しく思います
フェリシア様の両方へ配慮した措置に私は尊敬致しました
お美しいだけでなく他者への優しさも兼ね備え、成績も優秀
婚約者が未だいないのは申し込みが殺到しすぎて当主様が嫁に出したくないとおっしゃられていると噂がごさまいますが、私はあの10人の中に婚約候補者がいて決めかねているのでは…と推測しております
テラスを見上げると10人とフェリシア様が優雅に昼食を取っているのが見えました
お声を聞くことはできませんが見目の麗しさと優雅で美しい所作に食堂のあちこちからため息が聞こえてきました
◇◇◇◇
「そういえばこの間、露出がどうのって言ってたのはどうなったの?」
「もちろん準備はできてるわよ。カイルは一応、王子だから過度な露出は控えめにするつもりよ」
「一応じゃなくてちゃんと王子なんだけどね」
「露出とはどの程度なのでしょうか?あまり過度なものは承諾しかねますよ」
「大丈夫よ。そこまで露出するわけじゃないわ、想像力を掻き立てるようなチラっとしたものよ」
「そもそも露出などするものではないのですがね…」
「シリウスは相変わらず堅いわねぇ」
「露出とか本当、フェリシアは淑女としてどうなの?淑女の見本とまで言われてるくせに中身がこれじゃあねぇ」
「あら、そのわりにはシュテルは嫌がりもしないで楽しそうにしてるじゃない」
「なんっ…!そんなことないよ!嫌だけど仕方なくやってるんだから!」
「あらそうなの?それなら、アイドルなんてやめてもいいのよ?」
「そ…そんなこと言ってないだろ!……別に、アイドルやるのが嫌だとか思ってないし…」
「「素直じゃないねー。楽しくやってるって言えばいいのにー」」
「うるさいぞ双子!」
「「こわーい」」
「……やかましい…」
「賑やかで楽しいですねぇ〜」
騒がしいのが聞こえないのはミランの防音結界のおかげ
優雅な昼食風景に見えるのはこれでも王族と貴族で、表面を取り繕うことができるため
知らぬは他の生徒ばかりなり…
◇◇◇◇
午後の授業も終わり放課後
放課後はそれぞれ鍛錬や研究、生徒会活動などそれぞれ予定がございます
研究や生徒会活動は見ることはできませんので、自然と鍛錬をしている方の見学が多くなります
騎士団所属のセイヴァルト様は放課後はほとんど鍛錬場で鍛えております
最近ではミハイル様と手合わせしているお姿をよく拝見するようになりました
ミハイル様が来るようになってから以前にも増して見学者が増え、トラブルも多くなりました
多くの方が見学しているので、押し合ってしまい怪我をなされたり先日などは、セイヴァルト様派かミハイル様派かで口論していました
このようなトラブルも親衛隊の古参のメンバーが仲裁に入ります
古参のメンバーは20人
いずれもフェリシア様と昔から交流のある方々です
古参のメンバーのうち数人は10人の中の婚約者候補です
アイドルとして活動していますがそこは貴族として婚約者がいるのは当たり前です
しかし、アイドル活動をするため正式に婚約者として公表されている方はいません
ですが夜会などのときはエスコートされていますので暗黙の了解といったところでしょうか
フェリシア様はカイル殿下の婚約者候補と噂がありますが公表されていないからか、夜会のエスコートはミハイル様がされています
私はカイル殿下とミハイル様の三角関係を疑っていますが、これは口には出せませんね
学園から全員がお帰りになったのを確認した後はフェリシア様へ本日の報告を致します
「……以上が本日の報告です。ミルファット伯爵令嬢の件はどう致しますか?」
「ありがとう。…転生者……転生者ねぇ…。まぁいいわ、今は監視だけしておいてちょうだい。何かあれば私が対処するわ」
「わかりました。ではそのようにしておきます」
フェリシア様はとても綺麗な所作で紅茶を飲み、報告書に目を通しています
今日のフェリシア様もお美しい…
色々な案を出されそれを実行し、驚くものも多いですがその様子はとても魅力的です
私などでは計り知れないお考えをするフェリシア様
少しでもこの方の思い描くものをお手伝いするのが私の役目だと思っております
これで親衛隊の一日の活動は終わりです
親衛隊の最大の活動は『笑顔を守る』ことです
そのために規則があり私達がいるのです
これに賛同し、また見守っていきたいとお思いになりましたいつでも親衛隊へ入隊してきて下さいませ
私達は歓迎致しますわ
それでは私もこれで失礼致します
ダンゴって聞き慣れなくてタンゴと勘違いしちゃってるんだよね(´・ω・`)