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地下状態異常植物園を作るのはいいけど、(長いから地下園と呼ぶ)問題になるのが1つ。
本来なら植物に必要なもの、日光だ。
名状し難いキノコやクロエンサーはちょっとした例外で、他の植物は光を当てても問題ない。(要らないかもしれないけど)
でも地下なら光が無いので、枯れるか、良くてモヤシみたいになるだろう。
本来の薬効が無くなるかもしれない。
でも流石に天井をガラス張りにする訳にはいかない。
じゃあどうするのか?実はもう答えは思いついた。
鑑定
ヒカリゴケ(ランクB)
光るコケ。暗い地下にしか生えない。太陽と同じ光を放つ。(効果:発光)
そう、ダンジョンで採取したコケだ。
このコケは地下であれば少しの水に植える場所があれば、特に細かい条件はない。これを天井に生やせば地下にいるのに太陽と同じ光を浴びれるのだ。
それにこのコケ何気に成長が早い。
だから多めに採ったコケを全て使えば、ここの天井は3日で埋められるだろう。
とりあえず今日はコケを植えてと。
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よし、完成!それじゃあ次は、
《御使い、そろそろ止めないとオハナシしましょうか?》
「ひっ!?」
あ、予定の時間が近い。
とりあえずログアウトしよう。
入口の出入りは飛び降りと《立体機動》だ。どうせ僕しか入らないだろうし。
後で一応鍵でも作ろう。
「よいしょっと」
「うわぁああ!?」
「ひゃ!?」
なになに!?
なんか悲鳴が聞こえたけど!?
「み、ミーかよ。びっくりした」
「レッドか。こっちもびっくりしたからお相子ね」
なんでも帰ってログアウトしようとしたら、僕の頭だけ出ていて生首が転がっているように見えたらしい。それは怖いね。
「じゃあまた明日」
「もうそろそろそれも終わるけどな」
そう、あと3日で夏休みなのだ。中途半端な時だけど、学校の都合らしい。
僕は自室のベッドに横になる。
やがて眠るように意識がログアウトしていく。
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「御使、今日のご飯は何かしら?」
「きんぴらごぼうと肉じゃがだよ」
「全体的に茶色ね」
「何となく食べたくなって」
帰ってきた母さんと話しながら、リビングに行くと父さんしかいなかった。
「あれ?結衣は?」
「降りてこないんだよ、御使呼んできてくれ」
「父さんが行きなよ、僕は盛らないといけないから」
「年頃の娘の部屋にお父さんが入ったら、「お父さんの臭いにおいが移るから出ていって」って言われるんだぞ!?お父さんそんなの耐えられない!」
「それはないと思うよ」
「やだやだ!お父さんはみんな大好きだから嫌われたら寝込むよ!」
「めんどくさいから御使行きなさい。私が入れとくわ」
母さんに言われたら仕方ないね。
でも僕も今は微妙な空気だから、出来れば行きたくないなぁ。
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「結衣?ご飯だよー」
へんじがない、ただのしか(ry
ノックしても返答が無いので、仕方なくドアを開ける。
「結衣?」
「…」
結衣はベッドに横になってた。
ヘッドギアを着けて。
「興味ありそうだったもんね、ニューパラ。でもどうしようか」
ニューパラにいるとはいえ、結衣がどこにいるか分からない以上ログインして呼びに行くことはできない。
どうしたものかと部屋を見回すと、結衣のケータイがあった。
ヘッドギアの充電器のUSB端子に繋いで。
ヘッドギアの充電器は、それ自体が送受信できるインターネット端末になっている。
ヘッドギアとも繋がっており、更にUSB端子等でケータイやその他の電子機器とも繋がりがある。
具体的な例は、電話やメールの知らせがニューパラに来るし、なんだったらログアウトせずに電話を取ることもできる。
だったらメールで呼べばいいよね。
早速送信と。
3秒後、ガバッと結衣が目覚める。
そしてギアを取り外し、
「何勝手に入ってるの!バカ!」ドスッ!
「いだ!?」
飛び膝蹴りを喰らった。そのまま倒れ込む。
モロに入ってなくて助かったけど、めちゃくちゃ痛い!
あとお腹に乗られてるせいで息が苦しい!
「言っとくけど、これはちょっとした気まぐれだから。だから勘違いするな」
「げほっ、わか、分かったから、どいて」
妹と身長差がそこまでないせいで、乗られていると立ち上がれない。
「あと1つ、絶対にアッチで話しかけないで」
「?なんで?」
「なんででも!!」
そう言うと結衣はさっさと下に降りて行ってしまった。
なんであんなに怒ったんだろう?
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「もうそろそろ1ヶ月になる訳だが、どんなイベントがあると思う?」
「とりあえずパンを咥えながら言うのは止めようよ」
お昼休み、相も変わらず4人で食べることになる。
僕と緋色は別クラスなんだけどなぁ。
「とりあえずイベントがあるのは確かだと思うけど……」
「私は流石にまだ弱いので参戦しないと思いましゅ」
ヒナミさんはやっぱり噛みながら返事をする。
緋色がいないときは割と普通に喋ってたけど?
「いや、運営も流石に初心者や低レベルも参加して楽しめるようなイベントを出すと思う。だから俺が考えるのは3つだな」
緋色が指を3つ立てて説明する。
「まず1つ、お祭りを開催する。簡単に出来て、イベントって感じがするのが利点だしな。
2つ、何らかの条件付き戦闘。初心者や低レベルでも問題ない条件が付くか、レベルによる階級分けとかだな。
3つ、プレゼント。少し物足りないが、これなら誰でも公平に楽しめるだろうな。どれだと思う?」
緋色の説明を聞いて、ヒナミさんは嬉しそうにしてる。
自分も参加できそうだからかな?
「私、お祭りがいいです!緋色さんと、みんなと一緒に遊びたいです!」
「私はやっぱり戦闘かしら?経験値が高い、誰にでも倒せそうなやつが沢山出てくるとか」
「あー、はぐれメ○ルな」
緋色がなるほどといったように頷く。
「御使は?」
「僕は、どれでもないと思うよ」
「は?なんでだよ?」
「だって、あの運営さんだし」
スピーカーちゃんとか見てると、緋色が挙げたゲームによくあるだろう選択肢は全部外してきそうな気がする。
「それにどうせもう少ししたら分かるんだから、大人しく待っていようよ」
「そんな身も蓋もないことを言うなよ……今までの話が無駄になるだろ。それに考えるのが楽しいんだよ!」
「とりあえず楽しみでしゅ」
「そうね。とりあえず前に言おうと思ってたけど、みんなで1回ニューパラで会ってみない?」
「「「???」」」
ナナの言葉にみんなよく分からないと言った様子になる。
「私達よくニューパラの話するのに、ニューパラでは接点が無い人がじゃない?だから1度あってフレンド登録くらいはした方がいいんじゃないかなって」
「確かに俺もキナミとナナがどんななのか知らないな」
「僕もキナミさんは知らないな」
「私もキナミ知らないわね」
「なんですか?みんな私のこと知らないって言いたいだけなんですか?」
少し鼻声になったキナミさんをフゥローしつつ、確かにみんなで遊んでみたいな、となった僕達は今日の5時に集合することになった。
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「さて、とりあえず時間までにやるべき事を考えよう」
とりあえず地下園の完成を急ごう。
ヒカリゴケはそれなりの光量を既に出しているので、後は植物達を植えるだけだね。
「暗室は端に作るから、他の所はあっちに薬草、こっちに……」
大まかな範囲を決めて、そこに線を引く。
そして今まで貯めておいた植物達を植えれるだけ植えた。
「よし、これでオッケー!」
ズラリと植えられた植物を見て、見て、見て………
「これ、足の踏み場がないや」
植物達はある程度種類別に分けて植えたけど、似た色の植物がごっちゃになって分かりずらい。
植物が沢山ありすぎて踏まないと進めない。
「うん、やり直しかぁ」
ある程度抜いて、その抜いたところを道にしていく。
1種ずつ囲むように道を伸ばしていく。
これで種類別もある程度分かりやすくなった。
「あとは、これって育って言ったら境界無くなっちゃうよね」
それでは困るので、買ってたレンガを埋めて区切る事にした。
見栄えも良くなって結構いいね!
「うん、時間もちょうどいい感じになってきたね」
あと15分で5時だ。
結構遠いところに[アンダンテ]はあるが、僕はそれなりに足が早いので5分以内に着くからね。
「ヒナミさんどんな感じかな?」
リアル友達とニューパラで遊ぶ、その事を考えて僕は少し楽しくなってきた。
中央広場にレッツゴー!




