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「はいナナ、お弁当」
「本当に作ってきてくれたんだ、あ、ありがとう」
お昼休みにお弁当を渡す。
家族以外に食べられるのって少し照れるな。
その様子を見ていた黄泉さんが話しかけてくる。
「え、ナナちゃんと御使さんって、その、付き合ってるんですか!?」
「「ちょ!?」」
教室の人の目が怖いよ!!
そんな目で見ないでぇ!
「違うよ!僕とナナはただの友達だよ!」
「う、うんそうよ」
「そうなんですか?」
何とか誤解を解けた。
そもそも僕は誰かに好かれるような人じゃないのに。
「なんだ、御使に春が来たかと思ったのになぁ」
「何で緋色はがっかりしてんの?」
「そろそろ腐女子達が本格的に行動を始めそうでな。ちょっと期待してた」
うーん。
緋色とはただの親友なんだけどなぁ。
「で、何で手作り弁当?」
「ほら、ナナって菓子パンやらコンビニの物が多いから手作りが恋しいって言うから。毎日作ってもいいけど、どうする?」
「流石に毎日は悪いわよ!火曜と木曜でお願い」
「うん、分かった」
「なんか2人とも凄い仲良くなってませんか?いつの間にか呼び捨てになってますし」
黄泉さんは何故僕達を仲良しにしたがっているのかな?いや、仲良いけども。
「友達なら普通でしょ?」
「………頑張ってね、ナナちゃん」
「頑張れ」
「い、いいから……弁当美味しいよ御使」
「?どういたしまして」
何でナナは応援されてるんだろう?
とりあえず弁当は喜んで食べてもらえたからいいか。
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「さて、アングリーオーガのお肉から始めよう」
状態異常を取り除いて、料理出来るか試してみる。
とりあえずお肉の方は、
鑑定
アングリーオーガの肉(ランクC)
アングリーオーガの肉。引き締まった肉は熱を加えると柔らかくなる。食べたら怒り[2]になる。(効果怒り[2]、STR+10共に三分間)
まずは分離を試してみる。
鑑定
オーガの肉 (粗悪)(ランクD)
オーガの肉。本来は脂も乗った肉だったが、粗悪品。ボロボロで血の味が強く、匂いがヤバい。(効果無し)
「うーん、駄目だぁ」
成分の分離をイメージしたけど、よく分からない塊にしかならなかった。
どうしようかな。他の方法は、
「あ、回復成分に漬けてみよう」
回復成分ρを濃縮すると怒り[1]の回復が、怒り[2]の回復になる事は前に見つけた。
その中に肉を入れて漬ける。
成分が馴染むまでどうしよう。
もう一回ワニでも倒そうかな。あの時は無我夢中だったからウインドボール打ったのしか覚えてないや。
「あれ、そういえばなんでウインドボールで倒せたんだろ?」
思い出す限り、一撃にまとまってた気がした。
何でだろう?
「[ウインドボール][ウインドボール][ウインドボール]」
ウインドボールが3つ出来た。
凄い!知らなかったけど魔法って複数作れるんだ!
《[マルチマジック]を習得しました!》
[マルチマジック]
魔法の同時展開、複数展開ができる。更に複数の属性の操作性が向上する。軌道を変更しやすくなる。
何か便利なアーツが増えた。
でもあの時のものは一撃にまとまってたと思う。
まだ何か足りないのかな?
「[ウインドボール][ウインドボール][ウインドボール]《合成》」
ボンッ!!
残念ながらウインドボールは爆発してしまった。
「[ウインドボール][ウインドボール][ウインドボール]《付与》」
《[ウインドボール]に[ウインドボール]を付与しますか?Y/N》
お?何か変化が。
yesを選択するとウインドボールの外側を包むようにウインドボールが出てきた。
そこら辺の木に放ってみたところ、バババァン!!と破裂音がして、木が木っ端微塵になった。
怖っ!!
「うーん、今のは連続という感じだし、違うかな〜」
別にさっきのも威力的には申し分ないから、それで終わってもいいけど、どうやったのか分からないのは嫌だ!
「[ウインドボール][ウインドボール][ウインドボール]《魔力操作》《魔改造》」
《魔力操作》と《魔改造》で一つにまとめようとしても、ボールがボコボコくっ付いた塊にしかならなかった。
「もっと中心に集まればいいのに、集まれば、集まれば?………!《魔力視》!」
確認の為に《魔力視》を使った。今は魔核がボールの形を保ちながら中心に集まった状態だ。
「ぎりぎりまで寄せて、《濃縮》!?」
魔核を中心に近づけて《濃縮》を使ったら、魔核が1つになった。
《システム上に無い行動が行われた為、行動を新しくアカシックレコードに登録します。登録中………登録完了。アーツ[単一魔法]が魔法アーカイブのアーツになりました。他プレイヤーが使用する度に経験値が微量得られます》
ふぁ!?
何か新しいものが簡単に出来すぎじゃない!?
折角なので[単一魔法]を使ってみる。
[ウインドボール]を5つ作ると[単一魔法]が使用可能の表示が出る。
「[単一魔法]、あれ?動かな!?」
[単一魔法]を使用してまとまった[ウインドボール]を打ち出そうとしたけど、全く動かせなかった。
不思議に思っていたら、いきなり普段の2倍ぐらいのスピードで木に飛んでいった。
どばあぁぁぁんんん!!!
比喩ではなく木が100本程吹っ飛んだ。
5つ打ってもこの威力は出ないよ!?
「これは……しばらく封印かな、さっきの《付与》魔法でも試しとこう」
どうせなら他の属性も《付与》してみよう。
「[ファイヤーボール][ウォーターボール][ウインドボール][アースボール]《付与》」
《ファイヤーボールにウォーターボールを付与しますか?Y/N》
《ウォーターボールにウインドボールを付与しますか?Y/N》
《ウインドボールにアースボールを付与しますか?Y/N》
《アースボールにファイヤーボールを付与しますか?Y/N》
うるさっ!?
もう全部yesで!
無理矢理テンション上げてこ〜!!
「撃てぇ!」
パンッ!
木が木っ端微塵でも吹っ飛んだわけでもなく、消滅した。
「訳が分からないよ……」
何故僕のしようとする事は大体可笑しい結果になるんだろうか?
正直笑えないレベルだよ?
《魔法 《バニッシュ》を習得しました》
これも封印だね。
もう今日は止めとこう。
きっと明日になったらどうにかなるさ。
ということで、ログアウトした。
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「ね〜スピーカー。アカシックから魔法レベル70相当の魔法が出来たッてきたよ〜」
「「「「はぁ〜!?」」」」
「アッハッハ面白〜い!」




