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「ままままマジカルマジカルん〜みんなのアイドルマジカルん〜♪♪」
「おい御使、皆に聞かれてるぞ。良いのか?」
「え、歌ってた?うそ!?」
昨日の杖について考えていたらいつの間にか歌ってたみたい。は、恥ずかしい!
赤面する僕に、緋色が質問する。
「御使い、マジカルんって何だ?」
「魔女っ子マジカルんとは魔女っ子マジカルんが(中略)なのだ!」
「長いわ!で、何で頭の中がマジカルん一色になったんだ?」
「酷いなー、マジカルんのライバルの敵の杖を作って欲しいって依頼が来たんだよ」
「そんなのおもちゃ買えばいいじゃないか」
「あ、いやいや、ニューパラの話だよ」
「あ〜なるほど」
席に座って緋色はそういえばとこんな話を始めた。
「たしかヒナミの友達にマジカルん好きな子がいたな。ちょっと後で会いに行ってみようぜ!ヒナミの様子も見たいし」
黄泉ヒナミさんは緋色に助けられた女の子だ。車に轢かれたのを応急手当したなんて、漫画みたいだが緋色は人助けの為の勉強は欠かさないからなぁ。
学校の勉強は普通だけど。人助けの後に、遅れた勉強手伝うの大変だったな(遠い目)
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昼休み、ヒナミさんの教室に緋色に引っ張られて来てしまった。
「ひ、緋色さん!?な、なんのようでひゅか!!」
「いや、元気かなーって思って。お前に会いに来るのに理由必要か?」
「いえ、いつでも来てくだひゃい!」
う〜ん、ヒナミさんは相変わらず噛み噛みだなぁ。
事故の時から顎になんの異常は無いはずなんだけどね。
「また来たの緋色!私のヒナミちゃん取らないでよ!」
「悪いなぁ。あ、御使、こいつがマジカルん大好きな名々並ナナだ」
「ん?誰かしら?」
僕は驚きで動けない。勝気な黒い目、長い黒髪。
そして三角帽子とスカート、杖の幻視が見える。
ナナさんもこちらを見てどんどん顔が驚愕に変わっていく。
「アンタもしかして私の服ぼろぼろにしたミー!?」
「そうだけど言い方考えてよ!?ゲームの話でしょ!」
「え?マジで?」
10分後、落ち着いた僕らはニューパラについて話した後、特にやる事も無く普段の生活に戻っていった。
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「さて、杖を作るのはどうしようかな」
たしかじゃっくの杖は身長位の高さで、上がカーブしていて、ランタンがぶら下がった細めの杖だったよね。
材料は魔法をかけた木、銀で出来たランタン、赤い魔石だったはず。
たしか光る森の木が売られてたよね。杖部分はそれにして、火の魔石も売ってた筈だし、ただ銀のランタンどうしよう。
スキルPは、50Pで、《鍛冶》と《彫金》は合わせて60P。足りないか。
スキルかレベルを上げればいいんだけど、レベルは町の近くだと上げにくいからなぁ。
ふと、スキルレベルを上げる方法が思いついた。が、これはやりたくない。でもこれしか思いつかないんだよねぇ。
毒薬のフタを開ける。嫌だなぁ、でも《毒耐性》は便利そうだし、仕方ないか。
「まずっ!おえぇ!!」
ポーションを飲む。体力は減らないけどぎぼじわるい。
1時間後、レベルが10になってスキルレベルが上がった。
「次は麻痺、これで10P貯まる」
でもついでに別の状態異常も耐性とっておこうかな。嫌なことは1回で済ませたい。
4時間後、持っている全部の状態異常耐性を10に上げ終わった僕は、もうフラフラだった。
今日はログアウトしよう。
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次の日、持ってるスキルPで《鍛冶》と《彫金》を取る。
釜戸とハンマー等の必要な物はイーマ商会で売っているそうなので買いに行こう。
最近外套被りっぱなしで視界に慣れてきたなぁ。
「「「「いらっしゃいませ」」」」
「あの、並んで挨拶しないで下さい。目立ちますので」
ズラリと店員さんが並ぶなんてびっくりだよ!
「すいません、ミー様は出来るだけもてなすように言われてまして、何をお求めでしょうか?」
「えっと、《鍛冶》と《彫金》に必要な道具をお願いします」
「かしこまりました」
案内された所には四角い厚い板みたいのがあった。
「この板の真ん中を触ってみてください」
「はい」
ボンッ!
「うわ!釜戸になった!?」
「最近発見された簡易釜戸です。組んだものには劣りますが、持ち運び出来て安いので人気ですね」
運営が作ったアイテムはロストテクノロジー扱いなんだね。
と、何か光る鞄があった。
「あれは何ですか?」
「ああ、アイテムボックス拡張鞄と言う名前らしいです。何処からか見つかったらしいですよ」
うそ!?そんなのあったの?あ、アップデート情報の下の方にあった。
《アイテムボックスが拡張鞄を1つ買う事に10増えていきます!(容量は最大100となっています)》
「よし、9個買います」
「はい、お会計110万のところ、ゴールドカードをお持ちの為、80万ゴールドになります」
「はい」
「ありがとうございました!」
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アイテムボックスは拡張し終わったし、インゴット買って帰ろうかな。
と、目に入ったのは[鍛冶屋へファイストス]。
今気がついたけど、鍛冶屋にランタン作ってもらえばよかった〜!!
早いし、苦しくないし、綺麗だったのに!
折角見つけたから何か作ってもらおうかな。
武器は弓があるから、料理道具一式作ってもらおう!
早速店に入る。
「すいません、作って欲しい物があるんですけど」
「おう、なんだ?剣か、槍か、盾とかか?」
中に居たのは濃い顔立ちの男。背が大きく、頭にタオル、よく分からないが和服を着ていた。
「えっと、予算は100万で調理道具一式作って欲しいんですけど」
すると唖然とした顔で、
「調理道具?俺にか?俺こう見えても有名な武器職人なんだぞ?」
「僕は弓が武器ですし、へファイストスの名を出す位だから丈夫で正確な物が作れるかなって思ったんですけど…もしかして駄目ですか?」
しばらく見つめ合うが、
「ふはははははは!面白い!分かったやってやるよ!」
「いいんですか?武器じゃないですよ?」
「やった事無い事はやってみるもんさ。意外な発見があるからな。丈夫で正確な物なんざ武器とは少し違うもんだしな。勉強になるわ」
「ありがとうございます!」
100万払って依頼する。
「まさか一括で払うとはな」
「ここにある武器は綺麗に磨かれてます。貴方の凄腕を振るって貰いたいです」
「おう!任せとけ、スゴイの作ってやんよ」
連絡用にフレンド登録しておく。名前はハンマと言うらしい。
「楽しみにしとけよ〜」
「お願いしますね〜」
あ、ランタン忘れてた。もうスキルも習得したし自分で作るかな。
インゴットやらなんやらを買って帰る。
「まずは杖の部分から作るかな」
たしか公式の杖は直径4cm、カーブまで120cm、カーブの高さ45cm、黒く光る、魔法がかかってるだったよね。
先ずは光る木の処理から。買ってきたのは生木なので、《分離》で水分を抜く。
この杖は繋ぎ目が無い筈なので少しずつ削っていく。
《御使い、そろそろ止めないとオハナシしましょうか?》
「ひっ!?あ、そんな時間か」
聞き逃しが無いように頼んでお母さんの声を入れたけど、ちょっと怖いんだよね。
「ふーおおまかには削れてるね。後は紙ヤスリで滑らかにして、着色、ニス塗りでいいね」
ちょっと早いけど今日はここら辺で止めとこう。




