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まずはスキル封印石に《スキップ》を詰めていく。
「手伝い出来ないのは辛いですね」
「大丈夫です。時間が掛かりますが、疲れる程のものじゃないので」
どうにかこうにか、スキルを詰めたら、そのままポーション生産係の人達に渡していく。
「本当に手に入った!?」
「《スキップ》!凄〜い!本当にスキップ出来た!」
「本当ならこれ70万以上するんですって!」
「これ程ポーション作りに来て、良かったって思ったこと無いわ」
評判はなかなかだ。とにかく待ち時間が長いのは、皆嫌みたい。
「皆さん、今日はニューパラの歴史に残る日です。異様なポーションの値上がり、その終止符が打たれるのです。最高貢献者のミーちゃんさんに一言頂戴したいと思います」
え!?そんなの聞いてないよ!?
「えっと、皆さん、ポーションを高く売れるのにわざわざ値段を下げる為に、手伝ってくれてありがとうございます。一緒に頑張りましょう!」
「「「「「「「「おー!!」」」」」」」」
早速ポーションを、と思ったんだけど、
「すいません質問良いですか?」
「はい、どうぞ」
「本当にミーさんですか?」
「え、ミーですよ。一緒にポーション作ったじゃないですか」
「いつもと違う格好だったから、分からなくて」
ゑ!?
そういえばログインして直後に中央広場に向かったから、装備は新緑のローブだけ。そのまま直接ここに来たから、素顔のままだ!!
「無し!これ無しで!無かった事にして下さい!」
「カワイイのに!」
「小さいわね。本当に15歳以上?」
「目もぱっちりして、綺麗な緑ね!」
「髪の毛ツヤツヤ!綺麗な金髪だけど、課金アイテム使ったの?」
「ロリっ子、うふ、うふふふふふ!」
「涙目かわいい!」
あーもう!外套被る!
あ〜あ、て何ですか!?内緒にして下さいよ?
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「速い!今までが嘘のよう!」
「アタシ今日で30個作る!」
「負けるもんですか!」
皆ワイワイと、今までよりも圧倒的に楽にポーションを作っていく。もう既に生産物は1200は超えている。
ただし、これは40人で作った物だ。
「お手伝いさんもっと急いで!」
「こっちは2人で詰めてるのに、なんでギリギリなの!?」
「いや、あれなら納得でしょ」
ヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒュン!
もはや速すぎて、見えない何かが動いてる事しか分からない。
鍋が目の前に並べられ、それをビンに詰めてる間に鍋が並ぶ。
1分に20個、そんな馬鹿げた生産量がミー1人(+手伝い)のものだった。
「カワイイ顔が見えない!」
「1個3秒って、どんなスピードよ!?」
「いつか出来るのかな?」
「出来たらレベル100になってるんじゃない?」
ひどい言い様だなぁ。これでも頑張ってるんだよ。並列化するよりも、1つのコンロと複数の鍋で作って鍋ごと渡した方が速い事に気付いた。
10分後、空腹度が0になったので、また倒れてしまった。皆驚かせてしまって悪かったなあ。
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時間は6時。
一斉に広場でポーションが売りに出される。
価格が元の10ゴールド、それが1時間分、15,600個ある。1人10個までだが、他の生産職も商業ギルドの呼びかけや、《スキップ》のお礼として、物価の値上がりやまがい物を嘆いて等、沢山のプレイヤーが生産中な為に、ポーションが減る様子はない。
また、何処からか流れて来たポーションもあり、商業ギルドの稼ぎは無いものの、金が一部の転売屋に全て流れるのは阻止出来た。
「この町を救ったのは間違いなくミーさんですね」
「ああ、まさか市場経済を傾けるなんてな」
「それは最初から予測してましたよ。でなければゴールドカードなんて渡しません」
商業ギルドマスターのカーイは、ギッシュと外を眺めている。
「あの流れて来たポーション、何処から何だ?」
「ポーションを売る前に値上げしてる店に並んでおいて、ポーションバブルが弾けた瞬間に元の値段以下で買い占めたんですよ。値上げしてたのが下がってしまったので反発が怖くなったんでしょう。快く売ってくれましたよ」
「相変わらずだな《慧眼》」
「昔の話ですよ《世界の英雄》」
「それこそ昔の話だ」
2人は笑いながら、次の世代の一ページを見ていた。
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「まだまだぁ!皆頑張って!」
「ミーちゃん!?4回も倒れたんだから頑張らないで!」
「大丈夫。空腹度満たんだから」
「10分で使い切るでしょ!?」
結局、ログアウトギリギリまで倒れながら生産し続けるミーなのでした。




